『7つの習慣』スティーブン・R. コヴィー(実業家)
発行:1996年12月 キングベアー出版
難易度:★★★☆☆
資料収集度:★★☆☆☆
理解度:★★★☆☆
個人的評価:★★★★☆
ページ数:492ページ
【概要】
「パラダイムと原則について」の要約
ここ50年間のアメリカで「成功」について書かれている本には、表層的なテクニックを書いた「個性主義」な本が多い。しかし、問題を解決するには、根源的なところから解決する必要がある。始めの150年間に書かれていた本には、原理原則を深くまで内面化させる「人格主義」が多かった。蒔いたものしか収穫できない、という「農場の法則」のように、人生においてはまずは土台をしっかり作ることが大切である。
土台を作るにあたり、「パラダイム」の存在を理解することが必要である。
パラダイムとは、世界を見る見方であり、私たちの認識、理解、解釈を決めるものである。先ほど述べた人格主義や個性主義も、ある現実についての理論、説明、モデルの一つである。それは、普遍的な「場所」へと導く「地図」のようなものであり、立場によって見え方が変わってくる「レンズ」のようなものである。またそれは、経験によって受ける条件づけによる影響を受け、行動や態度に直接的に結び付く。
以上に述べた「パラダイム」が、大きく転換することを「パラダイム転換」と呼び、これまでの歴史的なパラダイム転換として、天動説から地動説への転換、ニュートンの物理学、王権から民主主義への転換などがある。一般的には病気や災害などに遭遇し、優先順位が突然変わるときや、新しい役割を引き受けたときに発生しやすい。
「パラダイム」と「人格」は切り離せない関係であり、「人格主義」には人生を支配する「原則」が存在するという基本的な概念に基づいている。その「原則」とは、灯台のように動かない「場所」そのものであり、手法とはなり得ない、破ることのできない自然の法則である。いかに優れたパラダイムでも、原則より優れることはない。
「個性主義」は、プロセスを踏まず、表層的なテクニックによる解決が多いため、最終的には落胆とフラストレーションにつながることが多い。
「パラダイム転換」を行うためには、「インサイド・アウト」という概念が大切である。つまり、自分自身の内面(根本的なパラダイム、人格、動機など)を変えることから始める態度が必要である。「インサイド・アウト」では、私的成功が公的成功につながるという考えに基づいている。それに対して「アウトサイド・イン」とは問題の原因を周囲のせいにすることであり、その考えから抜け出せないでいると根本的な問題解決には至らない。
「7つの習慣」を理解するにあたり、「習慣」というものについて理解する必要がある。思いが行動を作り、行動が習慣を作り、習慣が人格を、人格が人生を作る。習慣には引力があり抜け出しにくいものであり、効果的に使うことが求められる。習慣とは、知識・スキル・やる気の3つの要素から構成されており、それぞれが螺旋状の循環により成長・変化していく。「7つの習慣」とは、依存から自立、そして相互依存へと成長していくプロセスである。自立は私的成功につながるにとどまるが、相互依存は公的成功にまでつながる。相互依存にたどり着くには自立を経ることが必要である。第1・2・3の習慣は自立・私的成功に関わるもので、第4・5・6は相互依存・公的成功に関わるものである。第7の習慣は最新再生の習慣であり、第1から6までの習慣を循環的に高めるものである。
「7つの習慣」は「効果性」の習慣である。つまり、「効果性」の定義とパラダイムに基づいている。効果性とは、目標達成・結果と、目標達成のための資源・能力の二つの側面を持つ。その二つのバランスを「P/PCバランス」という(Performance/Performance Capability)その関係を理解するための黄金の卵を産むガチョウの例えがある。黄金をたくさん産ませようとした結果、ガチョウが死んでしまい、黄金を二度と得ることができなくなる。そのようなバランスの失敗が物的資源・金銭的資源・人的資源それぞれにおいて発生する。
第一の習慣 主体性を発揮する
自分の行動や価値観を客観的に認識できるのは、人間特有の能力である。一般的に決定論として「遺伝子的決定論」「心理学的決定論」「環境的決定論」の三種類のパラダイムがあると考えられているが、刺激と反応の間に人間特有の「自覚・想像力・良心・自由意思」を働かせることで、物事の捉え方において「選択の自由」が生まれる。
「主体性」とは、自分の人生に責任を持つことである。つまり、刺激に対する反応を選択することであり、そのことによって自分の人生をコントロールし、さらには周りの状況にも作用することができる可能性を持っている。「主体性」と同様に、「率先力」も重要である。「率先力」とは、自ら進んで状況を改善しようとする力である。
「率先力」を考えるにあたって、「関心の輪と影響の輪」という概念があり、自分の身近におこる問題には、影響の輪を二重円の内側の円として①直接的にコントロールできる②間接的にコントロールできる部分、そして③まったくコントロールできない、関心の輪が外側にある。自分がどの分野に集中しているのかを意識することで、積極的にエネルギーを活用できる。関心の輪においては「持つ」ことを意識することが多く、影響の輪においては「なる」ことを意識することが多い。理想としては、影響の輪に集中し、少しずつその輪を同心円状に広げていくことである。関心の輪に集中し率先力も発揮せずに、不満の原因を自己の外側に求め続けることは、選択の自由を放棄している、つまり自分の人生の責任を放棄していると言える。
第二の習慣「目的をもって始める」
「全てのものは二度つくられる」という言葉が示すように、何かを作るときには設計図のような知的な第一の創造と、物的な第二の創造の二種類がある。人生においても同じで、人生の最後を思い描き自分にとって何が本当に大切なのか、目的を作ることが必要である。会社においても、第一の創造が会社の方向性などを決めるリーダーシップ、第二の創造が実際に問題を解決していくマネジメントとう二種類に分けられる。それを表した言葉が「マネジメントは物事を正しく行うことであり、リーダーシップは正しいことをすること」と言う言葉である。
目的を定める際には、自覚・良心・想像力を使って、ミッション・ステートメント(自分の憲法)を明文化すると良い。配偶者・家族・お金・仕事・所有物・遊び・友達・敵・宗教組織・自己などの項目において、自分がどの項目をより重視しているのか、自分の中の中心を再発見することができる。これらの項目のどれか一つを自己の中心に置くことは、バランスが悪く問題が生じるため、「原則」を中心に置き、それぞれの項目をバランスよくとらえることが大切である。
自己宣言・イメージ化によって「個人的、積極的に」「現在形のもの、イメージできるもの、感情を表したもの」を明文化、イメージ化することでより具体化される。作成するプロセスそのものが、できる文章よりも大切である。
あるホテルでは、ミッション・ステートメントを会社ごと・部門ごと・係ごとに共同で作らせている。「参加無ければ決意なし」の精神を実践しているため、従業員を監視する必要もないほどに、ミッション・ステートメントが浸透している。
第三の習慣「重要項目を優先する」
第三の習慣は、自己管理し重要項目を優先する実行力である。「感情を目的意識に服従させる」ことをその本質とする。時間管理の方法の発展段階として、第一世代はメモ、チェックリスト、第二世代はカレンダー、第三世代は優先順位などの「能率的」を重視したもの、第四世代はP/PCバランスを維持するという長期視点に立った「目的達成」という順番に発展していく。時間管理のマトリックスとは、重要度の高低、そして緊急度の高低によって4つの事柄を領域に分ける。第一領域(重要度高、緊急度高)はストレスを与え、第三領域(重要度低、緊急度高)は人を反応的にさせ、第四領域(重要度低、緊急度低)は息抜き、堕落の範囲である。第二領域(重要度高、緊急度低)は、問題の根本解決において力を発揮するため、この領域に時間を割くことが必要である。第二領域に時間を割くために、他の領域に割く時間を削る、「ノー」という判断をする必要がある。第二領域の時間管理方法として①一貫性、②バランス、③第二領域への集中、④人間重視、⑤柔軟性、⑥携帯性、の6つを意識するのが良い。第四世代時間管理法として、①自分の役割を定義する、②目標設定(第二領域の内容を主にする)、③スケジュール化、④日々の対応、という順番で時間管理を行うのが良い。時間管理を実行する際に、「デレゲーション」という、仕事を他の人に任せる能力も必要である。デレゲーションには「使い走り型」と「完全型」の二種類あり、完全型を目指すのであれば、①望む結果、②ガイドライン、③使える資源、④責任に対する報告、⑤履行(不履行)の結果を相手に明確に伝えることが大切である。
相互依存パラダイム
相互依存は自立が発展したものであり、自立において欠陥があればそこから慢性的な痛みが生まれ、それが原因で人間関係においても急性的な痛みを生じさせる。そこで必要なのは、上辺だけの応急処置ではなく、根源的な自立の徹底である。何をするかよりも、どういう人間であるかである。
相互依存においてもP/PCバランスが重要である。「信頼残高」とは、ある関係において築かれた信頼関係のレベルを表す比喩表現であり、信頼残高のパラダイムを持つことが、公的成功の領域に入るための準備となる。「信頼残高」における注意点として、①相手を理解する。相手の価値観を尊重し、自己のパラダイムを押し付けてはならない。②小さなことを大切にする。どのようなことに傷つくかは人それぞれの感受性によるということに気を付ける。③約束を守る。守れない約束はせず、万一都合が悪くなっても、状況度外視で守る、もしくはきちんと相手に説明をすることが必要である。④期待を明確にする。目標と役割の誤解によって人間関係が悪化してしまう。⑤誠実さを示す。人のいないところで悪口を言うなど、二面性を持ってはならず、相手を騙したり、下心を持ったり、人の品位に合わない一切の話を避け、現実を言葉に合わせる努力を惜しまない。⑥(信頼残高を)引き出してしまったら誠意を持って謝る。しかし、同じ過ちを何度も繰り返してしまうと逆に誠意は伝わらなくなるということもある。
相互依存関係においてP/PCバランスのうちPに問題が発生した時は、PCを見直し、高める機会であるととらえることで、積極的に問題解決に取り組むことができる。
第四の習慣「Win-Winを考える」
Win-Winを考えるにあたり、人間の関係における6つのパラダイムを考える。それは①Win-Win②Win-Lose③Lose-Win④Lose-Lose⑤Win⑥Win-WinまたはNo Dealの6つである。①Win-Winとは全員を満足させるに十分な結果があるはずだという考えを基本にしている。②Win-Loseは、外的な要因で価値が決まる考え方であり、家庭、学校、スポーツ、法制度などで脚本づけされることが多い。③Lose-Winは相手に好かれることに自分の価値を求めたり、降伏すること、お人好しになることであり、失望・恨み・幻滅などの抑圧感情を抱きやすく、それが表出すると病気や怒りに繋がってしまう。多くの経営者は②と③の間を振り子のように揺れ動いている。④Lose-Loseは、相手を負かすためなら自分が負けても良い、という考え方であり、⑤Winは自分の勝ちだけを考える考え方である。①~⑤までのパラダイムの優位性は場面・状況によって異なる。つまり、その場における「Win」の価値によって異なる。Win-Winよりさらに高次元の選択として⑥Win-WinまたはNo Dealがある。それは、Win-Win以外になるならば取引はしない、見送る。ということに双方が同意することである。
Win-Winを考えるにあたって、人間の四つの性質(自覚・想像力・良心・自由意思)の全てを発揮することが求められる。Win-Winを支える5つの柱として、①人格②関係③合意④システム⑤プロセスの5つの要素がある。①人格とは、まずは「誠実さ」、つまり自分の「Win」を理解し、有意義な「決意と約束」をし、それを守り、自覚と自由意思をつけることで、自分自身に置く価値を高めることである。次に「成熟」、つまり自分の気持ちや信念を表現する「勇気(=P)」と、相手の気持ちや信念を尊重する「思いやり(=PC)」のバランスをうまくとることである。そして3つ目に「豊かさマインド」、つまり、一つのパイを奪い合うという「欠乏マインド」とは違う、無限の可能性、新しい代替案、第三案を探し求める精神である。②関係とは、信頼残高であり、信頼残高が高ければ相乗効果を生み出すことができる。③合意とは、実行協定であり、「望む結果・ガイドライン・使える資源・責任に対する報告・履行不履行の結果」のそれぞれを相手と共に明確に決め、合意することである。④システムとは、Win-Winを支えるシステムであり、つまり、不必要な競争を必要な協力へと変え、PとPCの双方を築くことで実行協定を支え、それを補完する環境を作り出すことである。⑤プロセスとは、Win-Winの結果に至らせるためのプロセスであり、1.問題を相手の立場から見る、2.対処しなければならない課題と関心事を明確にする、3.完全に納得できる解決にはどういう結果を確保しなければならないか、4.その結果を達成するための新しい案や選択肢を打ち出す。の4つがあげられる。
Win-Winの関係とは、「人格」から発生し、「人間関係」により育成され、「実行協定」により形づけられ、「システム」の中で栄え、「プロセス」によって達成される。
第五の習慣「理解してから理解される」
第五の習慣とは、「まず相手を理解するように努め、その後で自分を理解してもらうようにする」ことである。そのためには、話す、書く、読む能力に加え、「聞く能力」が重要である。聞く姿勢の中でも「感情移入して聞く」ことが最も高次元である。「精神的な空気」を相手に与え、信頼残高を高めることができる。その一方で、感情移入の傾聴により、相手に影響され、自分が傷つくリスクもあるが、相手に影響を与えるための前提条件として自分が相手に影響されることは必要不可欠である。ビジネスにおいては、商品を売るのではなく相手の立場にたって「解決」を売る意識が必要である。それと反対に位置する「自叙伝的」な自分の経験・評価の押しつけをする態度では、相手は心を開いてくれなくなってしまう。「感情移入の傾聴」を実践する方法として、1.話の中身を繰り返す、2.自分の言葉に置き換える、3.感情を反映する、4.2と3の両方をする。という段階で発展していく。古代ギリシャの哲学にも、①エトス(=個人の信頼性)、②パトス(=感情移入)、③ロゴス(=理論)という三つの概念が存在しており、それは現代でいう①人格、②関係、③プレゼン論理に相当する。
第六の習慣「相乗効果を発揮する」
相乗効果とは、原則中心リーダーシップの中心であり、全体の合計が各部分の和よりも大きくなるということであり、それは各部分の間にある関係そのものも、一つの構成要素として存在している。また、相違点に価値を置き、それを尊重し、強みを伸ばし弱さを補完することである。それは、奉仕、貢献、より開かれた、信頼性のある、豊かで防御的でない、政治的操作などない、愛と思いやりにあふれた所有欲や裁きの心のない脚本により発揮される。相乗効果の発揮を日常的にするには、個人的な安定性、オープンな態度、冒険的精神が必要であり、曖昧さに耐え得る力が必要である。相乗効果を一度経験すると、それを再現したくなるが、うまくはいかない。それを昔の東洋の偉人は、「師を真似ることを求めず、師の求めたるものを求める」という言葉にした。
相乗効果を発揮する鍵とは、自分の中で相乗効果を発揮することであり、つまり、第1~第3の習慣の結果である。自分が客観的であるとか、人生は二分法であると捉えず、他者の視点を大切にすることで、他者に精神的空気を与え、その結果相乗効果が生まれる。
社会学者カート・レビン氏は、「場の分析」の中で、現在得られている結果は、抑止力と駆動力の均衡であると述べた。しかし、第4、5、6の習慣を実践することで、抑止力の力を弱めることができると述べていた。たとえ自分を否定する人に会っても、彼らを肯定し、理解するように努め、妥協ではない「中道」や、新しい「第三案」を探すことができる。
第七の習慣「刃を研ぐ」
「刃を研ぐ」とは、①肉体的側面②精神的側面③知的側面④社会・情緒的側面の4つの能力を定期的に、一貫して、懸命に、バランスよく磨き、向上させることであり、P/PCバランスのPCにあたり、第二領域(重要度高、緊急度低)の部分へ意識を向けること、つまり、自分の人生への投資である。
①肉体的側面とは、持久力と柔軟性と強さを鍛えることであり、②精神的側面とは、自己と向き合い、個人のミッションステートメントや目標を明確にし、それを復習し、決意し直すことなど、③知的側面とは、テレビを賢く活用し、本を読み、自分の考えを書くなどである。この3つを「毎日の私的成功」と呼び、第1・2・3の習慣と関連が強いので、毎日一時間の時間を費やすようにすることが良い。④社会・情緒的側面は第4・5・6の習慣と関連が強い。実行するには、内的安定性と自尊心が不可欠であり、それらは1.
インサイド・アウトの誠実・廉潔、自分の習慣と自分の最も深い価値観を一致させた生活2.効果的に相互依存関係的生活3.有意義で人の役に立つ奉仕、の3つによってもたらされる。企業において「刃を研ぐ」とは①経済的側面、②人の才能の開発・活用・評価、③組織の目的・貢献の意味の発見、④人間関係、利害関係者との関係・従業員の扱い方など、がそれぞれあてはまる。これら4つの側面をそれぞれバランスよく磨き上げること(=Total Quality Control=TQC運動)が大切である。
7つの習慣はそれぞれに相乗効果があるため、「良心」に基づき、「学び」「決意」「実行」の螺旋状の循環によって向上していくことができる。
【感想】
会社の入社前課題として読みました!
自己啓発本としては、基本的な考え方から、目指すべき理想形まで、
段階を追って説明してくれていました。
感想と、今後どう生きていきたいかというのは課題で提出したので割愛させていただきます。
0 件のコメント:
コメントを投稿