2014年3月3日月曜日

73/100『若者はなぜ3年で辞めるのか?年功序列が奪う日本の未来』 城繁幸


読破っ!!
若者はなぜ3年で辞めるのか?年功序列が奪う日本の未来』 城繁幸(元・富士通)
発行:2006年9月 光文社新書
難易度:★
資料収集度:★
理解度:★
個人的評価:★★
ページ数:231ペー


【本のテーマ】(表紙裏より抜粋)
年功序列は終わったと言われて久しい。いまや、上場企業の約九割で成果主義が取り入れられている。とすれば、やる気と才能、そしてはっきりとしたキャリアビジョンさえ持ち合わせていれば、若くても活躍できる時代になったのだろうか。いや、そんなことはない。状況はむしろ逆だ。いまの時代、汗水たらして働いても、若いときの苦労は決して報われない。下手をしたら、一生下働きで終わる可能性もあるのだ―――「3年で3割辞める」新卒離職率、「心の病」を抱える30代社員の急増、ニート、フリーター問題…。ベストセラー『内側から見た富士通「成果主義の崩壊」』の著者が
若者の視点で、いまの若者をとりまく問題の核心に迫る。


【目次】
はじめに
第一章 若者はなぜ3年で辞めるのか?
第二章 やる気を失った30代社員たち
第三章 若者にツケを回す国
第四章 年功序列の光と影
第五章 日本人はなぜ年功序列を好むのか?
第六章 「働く理由」を取り戻す
あとがき

【概要】
第一章 若者はなぜ3年で辞めるのか?
 「年功序列のレールに乗っておけば安定だ」という昭和的価値観に対して3年以内に離職する若者が1992年の約24%から2000年には36.5%まで増加している。そこにはどのような理由・原因があるのだろうか。人事側からの視点としては、離職する若者に共通する特徴は「忍耐不足、わがまま」であると述べている。就職先の希望としては「安定した」職を希望する若者は多い。しかし、経済成長の停滞による人件費カットにより、採用の基準があげられ、以前の「なんでもやります」で就職できた時代とは変わり、「どのような仕事をしたいのか」、そのビジョンをより明確に考えることが求められるようになった。しかし、実際に入社してみると思い描いたビジョンからはほど遠い。まずそのような「仕事に対する意識の変化」が大きな理由としてあげられていた。

第二章 やる気を失った30代社員たち
 1991年バブル崩壊直前前まで、年功序列制度が一般的であり、新入社員たちも、レールに乗った人生を思い描いていた。しかし、バブルが崩壊してからは、レールが外されるようになった。具体的には、昇格・昇給に条件が付いたり、「名前だけ」課長に昇格しそこで昇給が横ばいになったり。
若いうちに我慢して働いていたのは、将来見返りがあると信じていたからであるのに、年功序列が成り立たなくなってきてからは「空手形(見返りが期待できない)」をつかまされる、という現象が起こり始めた。その結果、30代がキャリアの大きな分かれ目(リストラの対象になる)となり、30代における心の病の割合が増加した。と述べられていた。

第三章 若者にツケを回す国
 1999年労働者派遣法改正以降、派遣社員を利用することで人件費を削減する企業が増えた。1992年から2003年でフリーター約2倍、派遣社員は三倍以上に増加しており、しかも、その非正規雇用の8割が30歳以下の世代に集中している。そのような雇用形態のため若い世代の教育伝承が不十分であり、今後企業の弱体化が懸念される。福祉制度においても、年功序列的発想の年金制度は、若い世代にとっては帰ってくる保証がないものになりつつある。しかし、人口比的に多数を占める団塊世代、団塊ジュニア世代が権力を持ち、少数派である若い世代の声は聞き入れてもらえないことが多い。

第四章 年功序列の光と影
 そもそも、年功序列とはどのような性質を持った制度なのか。年齢が能力に比例する。という考えに基づき、年功序列の「レール」に乗っている人に対しては「安定」を保証する「優しい」制度であるが、一度レールから外れると(既卒、リストラ等)なかなかレールに戻ることができない制度である。
さらに、経済が発展し続け、若い世代が支えることを前提に作られており、そのバランスが崩れた今となっては、「空手形」を掴まされた若者が上の世代のために働く、という先の見えない状況が生まれる。「天下り」は年功序列の矛盾から発生したものであり、若い者のポストを天下りが奪っている現状がある。そんな年功序列の制度を「ねずみ講」的であると批判し、人口比率などが大きく変化した時代に合わせて、制度改革が必要であると主張していた。

第五章 日本人はなぜ年功序列を好むのか?
 日本人が年功序列を好む大きな理由として、日本式教育をあげていた。つまり、「正解は一つ」という考えが中心の「詰め込み式教育」である。その結果、決められたことに対しては「何でもそつなくこなす」タイプの学生を大量生産し、予定調和的な仕事には対応できるが、創造的な仕事には対応できない人が多くなった。そのため、「安定」を求め、それが年功序列制度をより存続させるという、相互関係を築いている。
 また、豊臣秀吉が行った「奉公構い(会合を開き家臣の転職を受け入れない約束をする)」に見られるような封建制度が残っており、社員に自社でローンを組ませようとする銀行など、「忠誠心」を会社に求める精神があることが考えられる。そんな中、「体育会」は日本の昭和的価値観を根強く残した集団であり、「主体性」を持たない従順な性格であるとして企業が積極的に採用する。と述べていた。
 また、そのような昭和的価値観・年功序列をホッブスの「リヴァイアサン」(=個人が安定を得るためにみんなで作り上げたシステム、国家権力)に重ね、自らの延命のために若者を縛り上げている、と指摘していた。

第六章 「働く理由」を取り戻す
 著者が知り合った年功序列の「レール」を降りた数人の若者のエピソードが描かれていた。彼らは、リスクもあり、不安定ではあっても、「働く理由」を得ることができたとして、満足感を感じている。年功序列を否定するわけではないが、バランスが崩れて、昔のような「安定の保障」がなくなった今、「自分で選択する自由」をつかみ取ろうとする気持ちが必要なのではないか。

【感想】
 絶望的だった!ちょっと偏ってる感もあるけど、、、けど、年功序列が崩壊してきている。っていうのはよく聞く話で、データとしても確かなことが乗っていた。
本が書かれた7、8年前から雇用形態の変化が求められている、というのがわかった。
特に、人口構成が変わってきている、という話は、他の本でも読んだので、その話と関連させながら読むことができました。
団塊世代、団塊ジュニア世代が自分たちが育ってきた「昭和的価値観」を貫き通すありさまを「リヴァイアサン」に例えているのが新しいけど、イメージとして理解しやすかったです。
 体育会の学生を「主体性がない従順さ」と言っているのは、少し語弊があるな。と思いました。昭和的価値観が根強く残っており、年功序列を尊重し、基本的に年配者の決定に逆らわない、そのような特徴を持つから採用されやすい。という指摘は的確であると思いました。

 城氏の著書は、前回の「内側から見た富士通」においても、基本的に年功序列に反対、昭和的価値観の色眼鏡はあまり良くない、もっと時代や人口バランスに合った制度、雇用方法を。ということを主張されていますが、一番自分が注目すべきだと思う点は、これからの日本を担う、若者の立場に立って発言をしているところだと思います。
若者は政治的にもマイノリティで、発言権も弱い中、声高々に「おかしい!」と主張する城氏の著書は読んでいると、自分たちの世代の将来について自分たち世代の視点から考えるし、団塊世代の昭和的価値観を持って生きる人たちと、生きてきた時代が違い、期待するキャリアも違い、幸福感も違う。ということを改めて気づかされます。

 とりあえず、「安定」という保証がどんどん失われていく中、キャリアとか、継続雇用とか、いろいろな事を会社任せにするのはやめようと思い、「やりたいこと」を隠し持っておき、ちらつかせながら磨いておこうと決意させてくれる本でした。

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