『星の王子様』サン=テグジュペリ(作家)
発行:2000年3月 岩波書店
難易度:★☆☆☆☆
感動度:★★★★☆
共感度:★★★★☆
個人的評価:★★★★☆
ページ数:133ページ
【本の紹介】
飛行機のトラブルにより砂漠に不時着した「ぼく」は、「王子さま」と不思議な出会いを果たす。
「王子さま」が見てきた星の話を通して、「ぼく」は「大切なもの」について考えを巡らせる。
【目次】
Ⅰ~ⅩⅩⅦ
【感想】
昔読んだ時より、深く読めた気がする!
「ウワバミが象を飲み込む絵」は、社会学でもよく取り上げられる、「同じ絵でも人によって捉え方が
違う」という教訓なのだ。と思っていました。
バラの話は、「ぼく」が最初バラのトゲの話を適当に聞き流して、そのことに「王子さま」が悲しくなるというシーンは、その後につづく「わがままなバラ」の話を読む前と後では、「王子さま」への感情移入の度合いが違うな。と感じました。
友達になる「キツネ」の話においてもそうですが、この物語の核をなすものとして、「一期一会」とか、「儚さ」、そして、「目には見えない物語の有無」というものを感じました。
見た目は他と似ていたり、同じであったりしても、時間を共有し、話題を共有し、感情を共有することで、そこに「愛おしさ」が生まれて、それだけで自分にとっては特別に意味があるものになる。
それは、周りからすると価値が無かったり、愛すべきものではないかもしれないけれど、
「大切なものは目には見えない」という、この物語のテーマでもある言葉のように、
自分にとって「愛おしい」と感じるものを大事にすること、つまり、
誰かや何かの「ルーツ」や「共有した物語」を大切にする。ということで、
繋がりや絆を感じることができる。というメッセージを感じました。
そこには、最近注目されているといわれる「つながり消費」や「シェア欲求」につながる、人間の幸福観が書かれていると思いました。
あと、「一期一会」にもつながる「一回性」というものについても考えさせられました。
わがままなバラの花のような、誰かにとって特別な「一回性」と、
地球で出会うたくさんのバラの花の花壇の対比。
「一回性」を再現しようとして画一化、大量生産したことによって、
その「一回性」の価値や物語や本質が失われてしまう。
ファーストフードとスローフードの関係のような問題提起があると思いました。
そしてそれは、今、同じことが問題視され「モノガタリ消費」の存在が叫ばれている現状とも
通じるものがあると思いました。
王子さまが旅した6つの星の話も個性的で面白くて、7つ目の星としての地球、そして、地球にはそれまでの6つの星にでてきたちょっと変わった人のような人が何万人もいる。という表現は、
想像するだけで面白くて、それでいて、核心を突いており、世界にいる人々の6つの「おとな」の特徴をうまく描き出しているのかな。と思いました。
王子さまが星に帰る時も、「遠く見えない星に自分の好きな花がある」と想像することで、
生活が少し楽しくなる。と「ぼく」に語り聞かせていたのは、すごく詩的だなぁ。と思うと同時に、
それは地球上でも同じことが言えて、
遠く離れた誰かのことを思ったり、どうしているだろうか、と想像したり、
そういうことと少し似ているな。と思いました。
「思い出」の大切さ、思い出を共有している「つながり」という一期一会、
そんなことを考えさせてくれる本でした。
また数年後に読むと、王子さまが旅した6つの星のことがもっとより深くわかるのかな。と思います。
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