2014年3月17日月曜日

84/100『「空気」と「世間」』 鴻上尚史


前に読んだ本!!
「空気」と「世間」』 鴻上尚史(作家・演出家)
発行:2009年7月 講談社現代新書
難易度:★
資料収集度:★
理解度:★
個人的評価:★★
ページ数:227ペー


【本のテーマ】(裏表紙裏より抜粋)
「空気」について考え続けているうちに、僕は「世間」との関係に出会いました。「空気」の正体と密接に関係があると考えるようになったのです。この本は、「空気」と「世間」の正体を何とか突き止め、「空気」と「世間」に振り回されない方法を探るための本です。相手の正体が分かれば、過剰におびえることもなくなるし、簡単に負けることもなくなります。ここ数年、「空気」はやたら乱発されるようになり、「世間」は逆襲を始めていると僕は感じています。それは、世界的不況とも無関係ではないのです。簡潔にいれば、僕は「空気」とは「世間」が流動化したものであると考えています。それはどういうことで、それが分かったらどうすればいいのか。それをこの本にしました。――「はじめに」より

【目次】
はじめに
第一章 「空気を読め!」はなぜ無敵か
第二章 世間とは何か
第三章 「世間」と「空気」
第四章 「空気」に対抗する方法
第五章 「世間」が壊れ「空気」が流行る時代
第六章 あなたを支えるもの
第七章 「社会」と出会う方法
おわりに

【概要】
第一章 「空気を読め!」はなぜ無敵か
 若者はテレビから「空気」という概念を学ぶことが多い。テレビの中では大物司会者が番組の流れや方向性を把握し、それを阻害する若手芸人などに対して「空気を読め!」と非難する。
しかし、現実世界では「大物司会者」のような有能な人物がいない状態でそのような関係を再現しようとするから不安定で流動的な空気をおたがいに読み合うことになる。

第二章 世間とは何か
 外国人のいう「日本のマナーの良さ」を「世間と社会」という観点で分析し、日本人は「世間」に対しては親切だが、「社会」に対しては無関心である、という指摘をしていた。そこで「世間」という概念を説明するのに阿部謹也氏の「世間とは何か」という本を引用し、明治時代に「個人」と「社会」という語訳が海外から入ってきたが、それがうまく浸透せず、概念として広まっていた「世間」が使われている。よって、「世間」の方がよりホンネ的であり、人々の生活に結び付いており、「社会」は建て前的で文字と数字によるものである。と述べられていた。
 そこに存在するルールとして、①贈与・互酬の関係②長幼の序③共通の時間意識④差別的で排他的⑤神秘性(4・5は著者が考えて追加した。)があり、それらを踏まえたうえで、「世間」と「社会」を比較していた。

第三章 「世間」と「空気」
 「世間」の5つのルールの内いくつかが欠けている状態のものを「空気」とし、流動的で不安定であるが、その効力は「世間」と変わらない。と述べていた。「空気」の概念は山本七平氏の「空気の研究」という著書をもとに、「空気」とは「対象の臨在感的把握」(絶対的な何かが存在しているかのように感じること)であり、日本人は、論理的判断基準と空気的判断基準のダブルスタンダードで生きている。と述べていた。そのことにより、差別意識のない差別道徳(身内優先主義)が生まれてしまう。

第四章 「空気」に対抗する方法
 阿部謹也氏の「世間を相対化することで、正体を見極めていく」、山本七平氏の「空気を対立概念で把握する」とあるように、まずはその対象を捉えることが大切である。「空気」や「世間」という概念を絶対的に捉えるのではなく、「相対的に」捉えることでより深い議論や思考が可能になる。

第五章 「世間」が壊れ「空気」が流行る時代
 小学生が「みんな」というのが「僕のグループが」と言うようになり、紅白歌合戦の視聴率が低下してきているなどの現象を、同質性が維持できなくなっていると捉え、その原因として、①都市化②経済のグローバル化③精神的グローバル化の3つをあげていた。
 そうして同質性という「世間」が崩壊すると「自己責任」の考えが広まり、しかしセイフティーネットの不在により、再び疑似世間のような感じで「空気」の考え方が広まってきている。不安定で流動的ではあるが、「共同体の匂い」を感じることができる効力を持っている。

第六章 あなたを支えるもの
 そうして蘇った「共同体の匂い」を持つ「空気」の背景として、マスコミとインターネットの普及、そして、職業が世襲化されることでより「世間」のルールが強くなり、「閉じられた社会」になりつつある。
現代社会でどんな「共同体」に支えを求めるか、の選択として①少人数で強力な関係性をもつ「差別的で排他的な世間」に支えを求める②「古き良き昔」という理想を追い続ける「実感を持たない世間」に支えを求める③「共同体の匂い」をもつ不安定な「空気」に支えを求める④「家族」に支えを求める⑤「強い個人」に支えを求める。の5つがあると述べ、それぞれどれを選ぼうとメリット・デメリットがある。と述べていた。

第七章 「社会」と出会う方法
 インターネットを利用し、所属する共同体を自分で選択できると述べ「所与的な世間」から脱出し、「社会」へと向かう考え方として、「社会」に何かを発信し続けること。その際に「敬語」という対等な立場での言語を使うこと、そして、複数の共同体に所属すること、などを提示していた。

【感想】
卒論の為に読んだ本です。
「空気」というものを考えるにあたって、とても参考になりました。
「空気」と「世間」と「社会」という3つの概念の意味と特徴と性質とルールと歴史について考えることができ、それぞれ共通したところがあるということも理解できました。
「空気」を克服するには、まず空気を相対的に捉えよ。という「敵を倒すにはまず敵を知れ」的な考え方は今でも自分に言い聞かせていこうと思っています。
そのために、5つのルールを理解すること、そして、自分が主に所属している集団がどのような性質があるのかということを理解することが大切なのだと思いました。

そして、世間から社会へ向かう。という章では、不特定多数の社会に向けて発信することを意識すること、そして、一つの共同体に帰属するのではなく、複数の共同体に所属すること。それも大事な教訓として今後も意識していきたいと思いました。

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