2014年3月5日水曜日

78/100『すみませんの国』 榎本博明


読破っ!!
すみませんの国』 榎本博明(心理学博士)
発行:2012年4月 日経プレミアシリーズ
難易度:★
資料収集度:★
理解度:★
個人的評価:★★
ページ数:220ペー



【本のテーマ】(表紙裏より抜粋)
実は迷惑なのに「遊びに来てください」と誘う、「それはいいですね」と言いつつ暗に拒否、ホンネトークと銘打って本当の本音は話さない……なぜ日本人はこれほどわかりにくいのか?国際社会でも読み取りにくいとされる日本ならではのコミュニケーションの深層構造を心理学者が解剖する。


【目次】
プロローグ 日本人はいやらしいか
第一章 蔓延する「すみません」
第二章 日本語は油断ならない
第三章 言いたいことは言わない日本人
第四章 いやらしさの裏側
第五章 空気が国を支配する
第六章 ホンネに敏感な日本、タテマエ主義の欧米
エピローグ わかりにくさの深層に

【概要】
プロローグ 日本人はいやらしいか
 本音と建て前の二重構造、曖昧な表現が多い、理屈が通じない、「察する」ことを求められる。そのように、日本のコミュニケーションは、欧米と違っている。それは、根本にあるコミュニケーションの目的が違うからである。その違いを意識し、良いところは活かし、悪いところは改める必要がある。

第一章 蔓延する「すみません」
 日本人の「すみません」には、単に謝罪の意味だけではなく、2種類の違った意味がある。①他者への思いやりからくるもの(場の雰囲気を和らげる。異民族からの侵入が少ない歴史から共感性が高いことが理由の一つ。)②欺瞞的で保身的な「すみません」(謝ることで相手からの非難や報復を避けようとする行為。)そこには、「非を認める」という意味の違いがあり、欧米人やアラブ人は謝罪とは「正しさを競う」争いに負けることを意味するが、日本人にとっては、謝罪とは場の雰囲気を良くし、事態を無難に収め、真実の追求や責任の糾弾とは別問題である。また、個人の責任ではなく「場の責任」に帰することが多い。

第二章 日本語は油断ならない
 日本語は言葉通りの意味を持たないと言われるのは、共感性が高いため、相手の考えを受け入れやすく、単純化した一方的な意見を持ちにくいからである。そのことにより、政治の場面でも誤解や齟齬が生じてしまっている。
根本的に、コミュニケーションが担う役割が、欧米では、自分の意見や思いをできるだけ正確に伝えるための手段であるのに対して、日本では、良好な関係を保つための手段である。そのため、お互いの対立点をぼやかす曖昧な表現を好む。欧米のように、状況から独立して存在する一貫した原理原則が行動を規定するのではなく、具体的な状況に応じてそれにふさわしい行動が決まってくる日本社会は、「状況依存社会」である。

第三章 言いたいことは言わない日本人
 日本人は昔から言語化することに価値を置かず、村落共同体の中で毎日顔を合わせるので、小さな表情の動きなどから「察する」文化が根付いていた。それに対して、アメリカは様々な文化背景を持つ人間が集まって成立した社会であるため、お互いを知り、絆を作るために言葉によるコミュニケーションを積極的に行う習慣ができた。
 しかし、近代化、都市化にともなって、コミュニケーションスタイルを、「話さなくても分かる」状況から「話さないとわからない」状況下にふさわしいものに変える必要がでてきた。

第四章 いやらしさの裏側
 日本人の性格の特徴の裏側として、「武士道」「甘えの構造」という日本の古典的書から解説していた。

第五章 空気が国を支配する
 政治の分野においても、「状況依存的」に動いている。と指摘し、実権を握るピラミッドの頂点が日本では見えにくい。と述べていた。さらに、日常における「状況依存的」具体例を示し、それらには良いところもあるが、悪いところもあるので、個人的意識において短所に抵抗する力を漬ける必要がある。と述べていた。
 
第六章 ホンネに敏感な日本、タテマエ主義の欧米
 日本人は「善・悪」も状況依存的に判断するが、欧米では「善・悪」という言葉を頻繁に使う(例:ブッシュ大統領の演説)そこには自我の認識に対する違いがあり、河合隼雄氏によると、西洋人は自我を中心として一つのまとまりをもった意識構造を持つのに対して、東洋人は、意識の外部にある中心としての自己を志向した構造であり、意識と無意識の境界が明らかではない。と述べていた。

【感想】
 コミュニケーションをとる目的や期待する役割が西洋と東洋で違う。という指摘は新しかったです。コミュニケーションの違いに触れる主張は多かったけれども、もっと根本的なところから違いを理解するべきなのだな。と思いました。
 そして、日本人は「状況依存的」であるという主張も説得力がありました。それぞれの文化に良い点悪い点がある、ということも再認識させられ、特に日本のコミュニケーション方法は、対立を避け、「和」を強調する。というのは古くから言われていますが、それをより具体的なレベルで再認識させてくれる本でした。

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