『あなたイズム』 博報堂ブランドデザイン
発行:2011年6月 アスキー新書
難易度:★★★☆☆
資料収集度:★★☆☆☆
理解度:★★★★☆
個人的評価:★★★☆☆
ページ数:223ページ
【本のテーマ】(表紙裏より抜粋)
社会人の3人にひとりが「仕事がつまらない」と思っているという。やむをえない、だって仕事だから・・・・・・。そういう声も聞こえてくる。だが、本当にやむを得ないのだろうか?自分ならではの働き方で、自分も成長しながら、組織に貢献していくことはできないのか?そのカギは、個人の持ち味と組織のらしさの共通点を探ることにある。
社会人の3人にひとりが「仕事がつまらない」と思っているという。やむをえない、だって仕事だから・・・・・・。そういう声も聞こえてくる。だが、本当にやむを得ないのだろうか?自分ならではの働き方で、自分も成長しながら、組織に貢献していくことはできないのか?そのカギは、個人の持ち味と組織のらしさの共通点を探ることにある。
【目次】
はじめに いあの職場では”あなた”は活かされない?
第一章 なぜ仕事は「つまらない」のか
第二章 自分の「持ち味」、組織の「らしさ」
第三章 イズムを見つけよう
第四章 イズムをさらに活かすために
第五章 「仕事のなかの自分」を変えるヒント――野田稔氏との対話
第六章 「自分のスタイル」とは何か――中竹竜二氏との対話
第七章 いま企業が求める「共感できる個人」とは――星野佳路氏との対話
おわりに これからの時代に伸びる個人、伸びる組織
【概要】
第一章 なぜ仕事は「つまらない」のか
博報堂が2010年に男女1000人対して行ったアンケートによると、36.5%の人が「会社がつまらない」と思っている、という結果が出た。その「つまらない」の背景にあることとして二つあり、一つは「適性」や「志向性」が合っていない、もう一つが「スキル」や「才能」が合っていない、という二つの理由があげられていた。その二つをまとめて「個人の持ち味」と名付けていた。自己啓発本やスキル本では、上手くいかない現状を良くしようというものが多いが、「仕事がつまらない」という根本的な部分からは目をそらしたものが多い。
第二章 自分の「持ち味」、組織の「らしさ」
個人に「持ち味」があるように、会社にも「持ち味」がある。そして、その二つの「持ち味」の円が重なる共通項の存在が仕事のやりがいにつながる。組織の「持ち味」に全てを合わせる必要はないが、組織の「持ち味」と重なっていない自分の「持ち味」を前面に出し過ぎるのも良くない。つまり、「滅私」でも「オレ流」でもない、「活私奉公」を実現することに意識を向けるのである。そのような、個人と会社のそれぞれの「持ち味」の重なっている部分を「イズム」と名付け、「あなたイズム」を見つけ出すことの重要性を述べていた。
また、会社の形態の歴史的変遷として、高度経済成長期の「管理統制型」から1990年代の「個人主義型」そして、新たに注目されているのが、この「イズム」の考えを重視した「共創型」である。
博報堂のアンケートによると、自分の会社の形態が「共創型」であると答えた人が一番「会社がつまらない」と感じる割合が低かった。(一番高かったのは「個人主義型」)
第三章 イズムを見つけよう
「イズム」を見つける具体的な方法として、①対象とする「組織」を規定する②組織のらしさを把握する③個人の持ち味を把握する④組織と個人の価値観(持ち味)の接点を導き出す⑤総括
とし、それぞれの手順について具体的な方法が書かれていた。
例えば、①では組織の中の「ベストガイ&ベストガール」を思い浮かべ、彼らのどのような点が評価されているのかを分析し、そこから会社としての「持ち味」(どこを評価するか、何を目指しているか)を導き出す。③の自分の持ち味に関しては、「ライフ・グラフ」という、会社での好調・不調を波線グラフに表し、なぜ不調だったか、なぜ好調であったかを分析し、「どんなときに好調だと感じる」のかを分析する。
そして、実際にこの「ワーク」を行った社員の例を示し、さらに、集団で「ワーク」を行う際の注意点について述べられていた。
第四章 イズムをさらに活かすために
イズムを追求することは、最終的に会社のブランドイメージにつながる。つまり、個人・会社それぞれの「持ち味」を分析、共有することによって、会社の理念をスタッフ個人レベルにまで落とし込み、そして具体的な行動にまで結びつけやすくなる。と述べられていた。
また、イズムの活用法として、月一回1時間「ビアトーク」と題し、社員数名で集まり、「ビールを片手に」仕事以外のことを話し、メンバーの価値観、バックグランドを知る機会を設けることで、それぞれの「持ち味」をより理解することに繋がっている。として例としてあげられていた。
他にも、「360度目標設定」では、模造紙に匿名である個人の評価やアドバイスを書き、そのことで客観的に自分の「持ち味」を再認識できる。という例や、「イニシアチブキャンプ」では、新入社員に対して会社の「持ち味」を提示し、自己の「持ち味」を考えてもらい、「イズム」を発見してもらう、という一日合宿の例があげあれていた。
また、「イズム」を殺してしまう態度として「余裕がない」、「主張にこだわる」という二点をあげ、その点には注意をしなければ「イズム」を追求できないと述べていた。
第五章 「仕事のなかの自分」を変えるヒント――野田稔氏との対話
明治大学大学院教授の野田氏との対談。仕事や組織における多様な考え方について述べていた。
京大アメフト部で行われている「サーバント・リーダーシップ」(上回生が雑務をする)について、自身が採用された頃を振り返り「オッド・マン(変わり者)採用枠」があると後で知ったこと、共感に傾きすぎると、組織が画一化してしまうために、「オッド・マン」を入れることで、組織が多様化し、イノベーティブになる。と述べていた。そのことを、「Planned Happenstance(計画された偶然性)」と呼び、何かが起こりそうな状況を選択することの意味を述べていた。あえて「強制された自主性」の状況にすることで、組織を活性化することができる。と述べていた。
また、「can will must」において、三つは円として重なり、3つが重なった状態が一番理想的ではあるが、現実的には「can」を少しずつ広げていくのが良い。と述べていた。
第六章 「自分のスタイル」とは何か――中竹竜二氏との対話
日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクターの中竹氏との対談。ラグビーフットボールのコーチとして、どのようなことを意識していたか述べていた。個人力活用を重視した組織マネジメント方法を「フォロワーシップ」と名付けて、選手と面談を繰り返し、個人の「持ち味」を最大限に引き出して組織の勝利を掴むということについて述べていた。勝利の過程の中で、「成功」と「成長」は全く別のものであり、どちらが求められている状況なのかを判断し、選択することが大切であると述べていた。
第七章 いま企業が求める「共感できる個人」とは――星野佳路氏との対話
株式会社星野リゾート代表取締役社長の星野氏との対談。赤字経営の旅館を再建した。その際には方針だけを掲げ、「何をするか」を現場の総支配人に任せる。という経営方法をとった。スタッフの「共感」を重視し、決定事項に対してもプロセスをきちんと説明して納得してもらうことが「共感」を得るために必要なことであると述べていた。
地方観光の今後の重要性、そして「おもてなし」が西洋の画一的サービスとは別次元の個別対応であるということ。が述べられていた。
【感想】
具体的でサクサク読めた!
自分と会社の「持ち味」を分析して、共通点を探す、という考え方は、働くにあたってとても大切だと思いました。そういう意味では、就活終わっても、「自己分析」は必要なんだなぁ。と再認識させられました。
ただ考えを示すだけでなく、実際に分析方法まで書いてあったのが、とても実践的だと感じました。特に、組織における「ベストガイ・ベストガール」の分析から会社の「持ち味」を導き出す、というのはとても合理的だと感じました。
後半の対談も、大学教授、アメフトコーチ、旅館グループ経営者という、様々な業界の方との対談をされていて、でも、3者ともに共通して、「個人」の持ち味を最大限に活かすことが、結果として「組織」の成功につながる。という教訓を得られる対談でした。
これから働くにあたって、自分の「持ち味」がなんであるのかを意識しながら、それを全面的にアピールしながら働こうと思いました。
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