『中国でいちばん成功している日本の外食チェーンは熊本の小さなラーメン屋だって知ってますか?』 重光克昭(重光産業(株)代表取締役)
発行:2010年8月 ダイアモンド社
難易度:★★★☆☆
資料収集度:★★☆☆☆
理解度:★★☆☆☆
個人的評価:★★★☆☆
ページ数:221ページ
【本のテーマ】(表紙裏より抜粋)
中国で450店舗、世界で600店舗を展開する「味千ラーメン」。熊本で開業した小さな1軒のラーメン屋が、どのように発展し、中国で成功を遂げ、世界的なチェーン展開を実現するに至ったのか。
決して順風満帆ではなかった海外進出の失敗と挫折、そして今日の成功の裏側とは。
中国で450店舗、世界で600店舗を展開する「味千ラーメン」。熊本で開業した小さな1軒のラーメン屋が、どのように発展し、中国で成功を遂げ、世界的なチェーン展開を実現するに至ったのか。
決して順風満帆ではなかった海外進出の失敗と挫折、そして今日の成功の裏側とは。
【目次】
はじめに
第一章 いつかシャンゼリゼにラーメン店を
第二章 香港で大成功!世界戦略の礎を築く
第三章 中国で450店舗!もっとも成功した外食チェーンに
第四章 世界ブランド「味千ラーメン」の強さとは?
第五章 世界の範となる「日本の味千」を目指す
【概要】
第一章 いつかシャンゼリゼにラーメン店を
台湾で生まれ育った父親は、大学では化学が専門だった。始めは棒ラーメン(インスタント麺のようなもの)を製造販売していたが、2度事業に失敗。落ち込んでいたところへ妻(著者の母)が「ラーメン屋でもしてみたら」という提案を受け、「味千ラーメン」を開く。研究者として、ラーメンのスープにこだわりぬいた。母が店を切り盛りし、父が研究・改良をする。という形態でスタートした。そのうちに味が評判となり、フランチャイズ展開するに至った。その頃著者は大学生で、父には内緒で就活をし、大手食品メーカーの内定をもらっていた。しかし、会社の幹部から、「よその会社で学ぶには父の年齢的に時間がない」とアドバイスを受け、「直営店」を任せてもらうという結論を出した。
第二章 香港で大成功!世界戦略の礎を築く
1994年まず台湾に進出したが、現地の人が勝手に味を現地化をしてしまい、マニュアルを守らなかったため、味にばらつきが出て、上手くいかなくなった。しかし、その結果香港の「リッキー」という若者が連絡を取ってきて、香港で味千ラーメンを開店することにつながる。「リッキー」は「日式拉麺」にこだわった。偶然にも同時期に、熊本の本社の方に香港の「デイジー」という女性が香港からの経済視察団の一員として訪れ、彼女は製麺方法に強く関心を示した。香港ビジネスにあたって、デイジーは製麺ライン、リッキーは店舗運営という役割がうまくできた。そして1996年にはついに香港に進出を果たす。その際には、座席間の距離を日本の間隔より狭くする、メニューに「トマト鶏ラーメン」など、現地の人に受け入れられやすいものを加えるなどの工夫を凝らした結果ヒットし、二号店にもつながる。成功の要因として、①パートナーに恵まれた②「味千ラーメン」の味が現地の人の味にマッチしていた③豊富なメニューをリーズナブルな値段で提供した④出店戦略(一号店をあえて賃料の高いところにした)が成功し多店舗化で評判を高めた⑤味とサービスの管理以外は、全てパートナーに任せた。という5つをあげていた。
また、ビジネスを中国展開する際には、香港を足場とするのが良い。ということについて書かれていた。(本土より規制が緩い、トレンドが成功した者は本土でも受け入れられやすい)
第三章 中国で450店舗!もっとも成功した外食チェーンに
香港の次は環境が似ていて受け入れられやすいと考え深圳に出店し、デイジーはさらに上海進出を目指す。しかし、「人治の国」と言われるだけあって、外部からの参入の壁が厚く、デイジーは参入の説明に奔走した。200~300席の大きなスペースを借りて立派に見せ、従業員を香港から派遣するなどの工夫をし、成功することができた。その要因をデイジーは「4つのP」として、「Place(場所)」「Price(値段)」「Production(メニュー)」「Promotion(販促)」をあげていた。
また品質保持のために、食品工場を立ち上げ、サービス維持のために「ラーメン大学」を立ち上げ、接客・調理を学ばせた。
しかし、香港で株式上場を目指した際に、リッキーが並行で行っていた寿司チェーン「板前寿司」が「競合」にあたるとされ、仕方なくリッキーは「板前寿司」を選択し、味千ラーメンから手を引いた。
そして2007年株式上場。2009年末には中国国内に398店舗まで増えた。
第四章 世界ブランド「味千ラーメン」の強さとは?
世界に展開する際に強く意識していたことが、「基本的には現地の人たちに任せること」と、「譲れない部分(基本的な味・サービスの質など)は譲らない」という二つの両立であった。ロイヤリティを取りすぎず、ビジネスライクな関係というより、家族のような関係を目指している。
第五章 世界の範となる「日本の味千」を目指す
日本における戦略について述べていた。昔のままのやり方では通用しないという思いから、ロゴに手を加え、店内の雰囲気、接客態度などを徹底した。スタート地点であった熊本の一号店を老朽化により再築し、新たなスタートを切った。また、地元貢献のために不祥事により経営が傾いていた地元の日本酒「美少年酒造」の社長となり、会社再建に尽くした。また、「ラーメン出前隊」を結成し、介護施設などを回っている。
味千グループの根本的な精神は「感謝」と「奉仕」であり、創業当初から毎月22日に行われている値引きをする日「感謝デー」には社長自ら厨房に立ち、初心に帰っている。
【感想】
自叙伝やった!自社伝と言った方が正確かな。
熊本で始まったラーメン屋さんが世界に進出していく過程が描かれていました。
もともと親が台湾の人である、というのも、成功につながった要因の一つかもしれませんが、それでも、異文化における食文化や習慣、感覚の違い、そして、「現地化(ローカライズ)」と「オリジナリティの保持」という相反する存在のバランスを保つことの難しさを感じました。
また、最初に出会うビジネスパートナーの重要性も感じました。
そして、台湾での失敗がビジネスパートナーとの出会いに繋がっている、など、失敗が失敗だけで終わらないということも感じ取れました。
デイジーの中国進出欲がハングリーだなぁ。と思いました。
留学中にも何度もお世話になった「味千ラーメン」の原点、と歴史を知れてよかったです。
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