2015年6月22日月曜日

138/200 『風に舞い上がるビニールシート』森絵都(作家)


読破っ!!
『風に舞い上がるビニールシート』森絵都(作家)
発行:2006年5月 文春文庫
難易度:★★★★
感動度:★★★★
共感度:★★★★
個人的評価:★★★★★

ページ数:342ページ



【本の紹介】(裏表紙より抜粋)
才能豊かなパティシエの気まぐれに奔走させられたり、
犬のボランティアのために水商売のバイトをしたり、
難民を保護し支援する国連機関で夫婦の愛のあり方に苦しんだり・・・・・・。
自分だけの価値観を守り、お金よりも大切な何かのために懸命に生きる人々を描いた
6編。あたたかくて力強い、第135回直木賞受賞作。

【目次】
器を探して
犬の散歩
守護神
鐘の音
ジェネレーションギャップX
風に舞い上がるビニールシート
解説: 藤田香織

【感想】

すごいよかった。
高校生の時に一度読んだことがあったけれど、
その時に何を感じたのかはもうすっかり忘れてて、
話の内容もかなり曖昧だったけど、
今読んでみると、また違う味わいがあってよかった。

良かったと思う点と、考えたことをそれぞれ書きます。

まず、良かったと思った点は、
それぞれの短編の世界観が違っているのが良い。
そして、それぞれの短編の「日常」がやけに細かく、詳しくて、
(たくさん参考文献を読まれたんでしょうね。)とてもリアルに感じられた。
そして、そんな中にそれぞれの人が悩みを抱えながらも奮闘する姿に感動を覚えた。

それぞれ別個の短編の中には、時間軸を移動した展開があったり、
過去の話も盛り込んでいたり、と、内容がとても濃く、それでいて引き込まれやすく、
読み始めると一気に読み終わってしまうような小説だった。

また、世界観だけではなく、文章の表現方法も変わっているのがよかった。
「守護神」では夜間大学に通う生徒たちのやりとり、ということで、
知的で論理的で、淡々と息継ぎをするまもなく畳み掛けるような会話のやりとりが、
リズミカルで快感だった。

「鐘の音」では、仏師が主人公で、関西弁(若干違和感を感じる関西弁でしたが)
メインのやり取りであり、古風な職人気質の雰囲気がよく出ていたと思う。

「風に舞い上がるビニールシート」では、難民のために働く国際公務員たちが主人公ということで、
会話がまるで洋画を字幕で見ているかのような、
そんな欧米チックなアメリカンなノリをうまく表現していた。

こんなにもコロコロ作風を変えられる作家はすごいと思う。
読んでいて飽きないからこういうジャンルがすごく好き。


そして、考えたこと。

この小説の表題ともなっている「風に舞いあがるビニールシート」、
これは、表題作の中の登場人物、国連機関職員のエドが、
紛争地域でいとも簡単に命が失われていく難民を例えた言葉でした。
強い風で簡単に飛んでいってしまうビニールシートのように失われていく命を、
エドは必死で捕まえて、飛んでいかないようにこの世界にとどめようとしている。

そういう感動的なエピソードでしたが、
もしこの小説が短編小説ではなく、この作品だけであったならば、
この例えも、お話もどこか綺麗事で現実味のない無味乾燥なものとなっていた気がする。
というのも、この話だけにスポットを当ててしまうと、
紛争地域ではなくても、物質的には豊かとされる日本においても、
人々は悩み、苦しみ、もがき、どうにかしようと努力している。
という事実が隠れてしまいがちだからである。

紛争地には不幸がたくさんあるというのは何となく想像できるけど、
紛争地じゃないからといって、必ずしも幸福なわけでもない。

風に舞い上がるビニールシートの表現を用いるのなら、
決して簡単に風で飛んではいかないけど、
いろんな人に踏まれて、汚されて、雨風にさらされて、
ボロボロになりながらも、それでも地面にとどまっているビニールシート、だってある。

どっちが幸せで不幸か、なんて簡単に、一概には言えない。

もちろん、簡単に命が失われていってしまうことは悲しくて、辛いことである。
けど、命が失われない世界でも、悲しいことや辛いことはたくさんある。

6編のちょっと変わった人たちの、「平和ボケした」(作中の言葉)日本で、
それでも苦しんだり悩んだりしている人たちの話の最後に、
この「風に舞い上がるビニールシート」という話があった。

その流れがすごく秀逸で、その流れがあったからこそ、
難民という少し身近ではない話も、すんなりと入ってきた。

もしも森絵都さんがそこまで意識してそういう構成にしていたのなら、
もうまさに、脱帽!なんて勝手に想像して興奮していました。

森絵都さんの「カラフル」を読んだ時は、「児童文学」というイメージだったのに、
この短編小説でイメージが変わりました。
ほかの作品も読んでみたいと思います。

2015年6月14日日曜日

137/200 『「続ける」技術』石田淳(行動科学マネジメント研究所所長)


読破っ!!
「続ける」技術』
石田淳(行動科学マネジメント研究所所長)
発行:2014年12月 宝島社
難易度:★☆☆☆
資料収集度:★☆☆☆
理解度:★
個人的評価:★★☆☆☆

ページ数:164ページ

【本のテーマ】
性格も、精神力も、時間も、年齢も、お金も関係なし!あなたの「行動」に着目すれば、
もうムダな挫折感を味わうことはありません!
アメリカ発の「行動科学マネジメント」を使って
「継続は力なり。」をあなたのものにする!
3日坊主にならない「とっておきのコツ」を紹介します。


【目次】
第一章 あ~あ、やっぱり続かない・・・
第二章 「続かない理由」はここにある
第三章 行動に着目すれば、物事は簡単に継続できる!
第四章 ステップで解説!続ける技術を身に付けよう!
第五章 続けるためのちょっとしたコツ
第六章 行動科学で続けられた!~第一章の登場人物たちは・・・~

【感想】
兄がこの人の別の本を読んでいると聞いて、
どんな人なのかなー、と思い読んでみた自己啓発書。
ページに余白を多く使っているので、文章量としては多くない。

内容と文章構成について思ったことを書きます。

内容について。
続けることが出来ない理由は、自分の意志の弱さなどではなく、
自分の周りの環境をコントロールできていないからである。
行動科学に基づいて、環境をコントロールすることで、
「続けやすい」環境を作っていくことができる。という内容でした。

分かりやすいなと思ったのは、
「行動」という概念が大きく二種類に分かれていて、
「何かを増やそうとする行動」と、「何かを減らそうとする行動」という分類で、
「何かを増やそうとする行動」とは、
例えば、英語の勉強時間を増やす、であったり、運動量を増やす、であったり。
「何かを減らそうとする行動」とは、
例えば、煙草を吸う量を減らすとか、体重を減らす。とか。

それで、増やそうとする行動には、
その行動に繋がりやすい環境を作り、
減らそうとする行動については、その行動に繋がりやすい環境を作らないようにする。
ということで、当たり前だと言われたら、そうなのですが、
それを意識して行動に移すことが重要だと再認識しました。

また、物事の原因を「個人の性格や性質」に起因させるのではなく、
「周りの環境」に起因させ、その環境について分析する。という行動科学の考え方が
行動社会学に似ていたので、すんなり理解できました。

文章構成に関して。
一章で具体的な例やエピソードを述べ、最終章でその人たちが行動科学を取り入れ、
「続けること」に成功していく。という流れは、
イメージしやすく、やる気を引き出してくれる効果がありました。
いわゆる、ベネッセの広告漫画的なダメダメからのサクセスストーリー論法です。

個人的には分量も少なく、さらっと読める自己啓発でした。
衝撃的な気付きというよりも、「ふむふむ、そうだよな。」
という感じで読み終わってしまいました。
分かっていても実際にはなかなかうまく出来ないんだよなー。
というのが率直な感想ですが、
でも、続かないのが「意志」の問題ではない、環境を工夫して変えろ!
というメッセージは、続かなくて諦めかけている時に参考にしたいと思いました。

136/200 『間接自慢する若者たち』原田曜平(博報堂ブランドデザイン)


読破っ!!
間接自慢する若者たち』
原田曜平(博報堂ブランドデザイン)
発行:2015年4月 角川書店

難易度:★☆☆☆
資料収集度:★
理解度:★
個人的評価:★★
ページ数:175ページ


【本のテーマ】(表紙帯より抜粋)
若者の消費のツボがわかる34のキーワード!
マイルドヤンキー、さとり世代の次に流行るのは何?

【目次】
第一章 SNSでリア充アピールする若者たち
第二章 SNSで流行るネタ消費
第三章 SNSで絆をなめ合う若者たち
第四章 SNSでイタイと思われたくない若者たち
第五章 SNSから逃げ出したい若者たち
第六章 SNS世代の潜在需要を引き出せ

枡アナvs若者座談会

【感想】
博報堂ブランドデザインの原田さんの、
新書ではなく、ZIP番組スタッフとの共著。

内容に関してと、本の構成に関して、思うことを少しずつ。

まず、内容に関して。
最近の若者がどのようにSNSと関わっているか、
そのアプリ等の概要と使われ方について写真と共に説明されていた。
SNS上では、いかに自分が「リア充」的に過ごしているか
アピールする場となっている側面があり、
そこでは、いかに「写真映えするか」また、「直接的な自慢になっていないか」が
投稿する際に大きな関心となっている。ということが述べられていた。
(「写真映えするか」は藤本耕平氏著の『つくし世代』では「フォトジェニック」
という言葉で表現されていた。)

SNSを通したコミュニケーションというものは良い面、悪い面の両方あるし、
一概に全て悪いとは思わないけれども、
写真映えする、とっつきやすい投稿の方が「いいね!」もコメントもしやすいし、
複雑な長文を投稿するのは気が引ける。
けど、実際のリアルな生活って、そんなに単純なものではないと思う。
ブルーハーツが歌ってたけど、
「写真には写らない 美しさ」っていうのがあると思う。
そんなリアルな日常はどうしたってFacebookにもtwitterにもあげることはできない。
けれども、やっぱりネット上では、「分かりやすくて覚えやすい」エピソードが
みんなにシェアされ、「いいね!」される。のだと再認識した。

そういう点で、「複雑だけど辛抱強く見ていくと、少しずつ理解できていくもの」が、
SNS上ではどんどん切り捨てられていくような印象を受けた。
FacebookやTwitterなどのアピールを目的としたSNSにはまりすぎると、
思考や感受性がより「インスタント」なもの、
よく言えば直感的、悪く言えば短絡的なものになり、
一度インスタントな感性からはじき出された、
複雑で理解しにくいエピソードは、ブロックし、シャットアウトしてしまい、
自分の感性に心地よい刺激を与えてくれるものだけを残すようになってしまう。
そんな危険性があると感じた。

そんな中、この本でいちばん斬新で衝撃的だったのは、
次のトレンドとして「匿名SNS」という概念を紹介していたことだった。
これまでは、友達の枠の中でのSNSがメインであったが、
そこではアピールがメインになり、なかなか本音を出しにくいというデメリットがあり、
それを補うように今後は「匿名SNS」が流行るのではないか。と予想していた。

この予想に関しては、実際は匿名SNSとしての役割は「2ちゃんねる」が
果たしていたとも考えられるが、
「2ちゃんねる」の世界観は「ネタ」的であり、匿名であることをいいことに、
誹謗中傷が飛び交う事が多々あり、コミュニケーションという側面に障害をきたしていた。
だから、「他人と本音のコミュニケーションをする」ということをメインテーマとした
匿名SNSというニーズがあり、実際にそのコミュニケーションを目的としたアプリがある、
ということは衝撃的で、自分も早速アプリをダウンロードして使ってみた。
(RUMORというアプリで、すでにZIPでも紹介されたとのことでした。)
今のところ、2ちゃんねるとtwitterの間的な感じですが、
今後ユーザーが増えるのか、どのように使われるのか。気になるところです。

ただ、懸念点としては、
今twitterでも問題視されている、個人情報の「晒し」行為が、
匿名でされる可能性があるな。と感じました。
一番簡単に起こりうるのは、「芸能人見た!」とかのつぶやきを
その匿名SNSでするとか。(twitterだとユーザー特定・凍結されてしまうので。)

とか、若者の文化の現在と未来を考察するのはやっぱり楽しくて、
書き出したら止まらないから、これくらいにしておきます。


本に関して。
原田さんはこれまで「新書」という形態で、もう少し堅い感じで書いていた。
それが今回の著書では、ZIPとの共著ということで、
より受け入れられやすいような、キャッチ―でポップな構成になっていた。
前ページに枠の背景が印刷がしてあり、写真も比較的多かったし、
文字の大きさも新書にしては大きく、ページ数は新書にしては少なかった。

それを沢山の人に読まれやすい、として評価できるけど、
その分ちょっと内容が浅くなってしまった。という評価もできる。

自分としては、社会人になってあんまり難しい本が読めなくなってきたので、
シンプルで分かりやすいのは嬉しいけど、より深く考察したいと考える人にとっては、
少し物足りない内容だったかもしれない。と感じました。