2014年8月30日土曜日

111/200 『平面いぬ。』乙一(作家)


読破!!
『平面いぬ。』乙一(作家)
発行:2003年6月 集英社文庫
難易度:★
感動度:★★
共感度:★★
個人的評価:★★
ページ数:345ペー


【本の紹介】(裏表紙より抜粋)
「わたしは腕に犬を飼っている――」ちょっとした気まぐれから、謎の中国人彫師に彫ってもらった
犬の刺青。「ポッキー」と名付けたその刺青がある日突然、動き出し・・・。
肌に潜む犬と少女の不思議な共同生活を描く表題作ほか、その目を見た者を、
石に変えてしまうという魔物の伝承を巡る怪異譚「石ノ目」など、
天才・乙一のファンタジー・ホラー四編を収録する傑作短編集。


【目次】
石ノ目
はじめ
BLUE
平面いぬ。

【感想】
乙一さんの本は、毎度ながら、それぞれの世界観が濃くて、おもしろかったです。
「石ノ目」は、日本の伝承とか、妖怪とか、そういう日本の古い雰囲気のあるホラーでした。
最後の結末が予想外で、切なるお話でした。

「はじめ」は、小さい頃の不思議な体験がさらに少し飛躍した感じの、
冒険、という言葉が似合う、ホラーというよりも、少し暖かい感じのする話でした。

「BLUE」は、この4つの中で一つだけ際立って異色の世界観でした。
魂を持つ不思議な布で作られたぬいぐるみ達のお話で、
その中でも、余った布の切れ端で無理やり作られたBLUEと、
ぬいぐるみ好きな姉にいじわるをする不器用な弟との交流が、
少し怖くもあり、見た目に囚われない愛情を感じることができる作品でした。。
トイストーリーをダークファンタジー風にした感じのユニークな世界観でした。

「平面いぬ。」は、設定からして不思議で面白かったけど、
体中を動き回る「青い犬の刺青」をめぐる奇想天外なストーリーが面白く、
サクサク読めました。

乙一さんの小説は、設定やアイディアが印象に残るものが多いので、
作品の題名と、数ページをちらっと見返すだけで、内容を割と思い出せるので、
よくこんなに印象に残るお話を思いつくなぁ。とつくづく尊敬します。

110/200 『蹴りたい背中』綿矢りさ(作家)


読破!!
『蹴りたい背中』綿矢りさ(作家)
発行:2003年8月 河出書房新書
難易度:★
感動度:★★
共感度:★★
個人的評価:★★
ページ数:140ペー


【本の紹介】(Amazon.comより抜粋)
高校に入ったばかりの蜷川とハツはクラスの余り者同士。
やがてハツは、あるアイドルに夢中の蜷川の存在が気になってゆく…いびつな友情?
それとも臆病な恋!?不器用さゆえに孤独な二人の関係を描く、待望の文藝賞受賞第一作。
第130回芥川賞受賞。


【感想】
若い作者が書いただけあって、とても読みやすかったです。
蜷川というキャラクターの「キモさ」がうまく描かれていて、
でも、ただキモイだけではなく、自分なりの考えを持って、自分の言葉で話す、
そんな意志の強さみたいなものも感じられる、憎めない感じのキモさが描かれていました。
蜷川とハツの、気を遣わない、遠慮のない関係。
これを恋と呼んでしまうのはなんだか違う気がしたけど、
とあるきっかけで無防備な人間性を見せた蜷川の懐に飛び込んだハツが、
その居心地の良さに居座ってしまっている。という印象を受け取りました。

多分、彼らは学校を卒業したら、連絡も取り合わなくなるんじゃないかな。
二人の関係は、「学校」という閉じられた特殊な環境だからこそ生まれた緩い関係性だから。
けど、そういう友情もあったよなぁ。てか、あってもいいんじゃないかな。と思う一冊でした。

109/200『横道世之介』吉田修一(作家)


読破!!
『横道世之介』吉田修一(作家)
発行:2012年11月 文春文庫
難易度:★
感動度:★★
共感度:★★
個人的評価:★★
ページ数:467ペー


【本の紹介】(裏表紙より抜粋)
大学進学のために長崎から上京した横道世之介18歳。愛すべき押しの弱さと隠された芯の強さで、様々な出会いと笑いを引き寄せる。
友の結婚に出産、学園祭のサンバ行進、お嬢様との恋愛、カメラとの出会い・・・・・・。
誰の人生にも温かな光を灯す、青春小説の金字塔。
第7回本屋大賞第三位に選ばれた、柴田錬三郎賞受賞作。


【目次】

四月 桜
五月 ゴールデンウィーク
六月 梅雨
七月 海水浴
八月 帰省
九月 新学期
十月 十九歳
十一月 学祭
十二月 クリスマス
一月 正月
二月 バレンタインデー
三月 東京

【感想】
このリア充め!!って言いたくなる青春小説でした。
でも、ただのリア充ってわけではなく、どこか憎めない感じがある物語でした。
そして、小説の中で、大学時代に世之介と関わった人が、
何年か後に世之介の事をふと思い出すシーンをちょいちょい挟んでいるのが、
すっごくよかったです。
大学時代の人との出会いが、のちの人生にほんの少しだけ影響している。
というのが、時間の流れを感じさせる、リアルな感じがしました。

登場人物が、割と親しみを持てるキャラクターの人が多く、
読んでいるうちに、自分の知り合いを登場人物と重ねて読んでいることに気付きました。
そして、その人物の事を思い出して、ちょっと懐かしい気持ちになりました。

自分の中で唯一共感できないのが、
自動車教習所でお嬢様とその友達から逆ナンパをされる。というシチュエーション。
ありえへん!と心の中で突っ込んでしまったけれども、
その他のところは、ぼんやりとしているようで、割といろんなところに飛び込んでいく
世之介の人柄がすごく素敵だな。と思いました。

映画化もされているようで、原作の緩くて、自由な感じをどれだけ表現できているのか、
気になります。けど、お嬢様の祥子役に吉高さんを当てているのは、なんか違うと思う。涙

108/200『パーク・ライフ』吉田修一(作家)


読破!!
『パーク・ライフ』吉田修一(作家)
発行:2004年10月 文春文庫
難易度:★
感動度:★★
共感度:★★
個人的評価:★★
ページ数:177ペー


【本の紹介】(裏表紙より抜粋)
公園にひとりで座っていると、あなたには何が見えますか?
スターバックスのコーヒーを片手に、春風に乱れる髪を押さえていたのは、
地下鉄でぼくが話しかけてしまった女だった。なんとなく見えていた景色が
せつないほどリアルに動き始める。
日比谷公園を舞台に、男と女の微妙な距離感を描き、芥川賞を受賞した傑作小説。


【目次】

パークライフ
flowers

【感想】
わりと鮮明に映像が頭に浮かぶ小説でした。
特に表題の「パークライフ」は、日比谷公園が舞台って書いてるんですが、
自分の中ではパリあたりの、やたらおしゃれな街をイメージしていました。
そして、話の中にあった印象的なシーンで、
地下鉄から下を向いて地上にでて、なるべく周りの景色を見ず、
公園の噴水の近くのベンチまで来て、見晴らしが良いところで一気に顔をあげると、
遠近感で錯覚を起こし、言いようのない快感が得られる。
っていうような描写があって、体験してみたいなー!!と思いました。
このシーンも、映画のワンシーン見たく、「絵になる」なぁ。と思いました。
裏表紙の「男女の微妙な関係性」というのも、微妙過ぎだと思いましたが、
決して居心地が悪い感じではなく、
初対面同士、探り探り少しずつ近づいていく感じがよかったです。

それとうって変わって、「flowers」は、どろどろした感情の描写が多く、
舞台も汗っぽい、自動販売機にジュースを補充する職場に転職した男性が主人公で、
「パークライフ」とはまた違った世界観で、その対照的な感じが印象的でした。

107/200 『カミングアウト』高殿円(作家)


読破!!
『カミングアウト』高殿円(作家)
発行:2011年2月 講談社文庫
難易度:★
感動度:★★
共感度:★★
個人的評価:★★
ページ数:379ペー


【本の紹介】(裏表紙より抜粋)
心の中に抱えた秘密。言ってしまったら取り返しのつかなくなるような言葉。
いまなら、言えるんじゃないのか―――。
コインロッカーに衣装を預けて複数人格を楽しむ17歳の女子高生さちみ。
ロリィタ服趣味をひた隠しにしつつそろそろ結婚もしたい、プチお局の29歳OLリョウコ。
”それ”をカミングアウトしたとき、自分は、周囲は、どう変わる?
ストレス解消、すっきりエンタメ!


【目次】

コインロッカークローゼット
オフィス街の中心で不条理を叫ぶ
恋人と奥さんとお母さんの三段活用
骨が水になるとき
老婆は身ひとつで逃亡する
カミングアウト!
エピローグ

【感想】
以前ドラマ化され話題になった「トッカン!」の著者の本ということで、
これも題名と表紙のインパクトで買った一冊。
登場する人々がそれぞれ胸にもやもやした思いを抱えていて、
最後の章でそれを大声でカミングアウトする!というシーンは、
胸がスカッとするものがありました。

その中でも、「骨が水になるとき」という章が特に印象に残りました。
46歳の独身男性が結婚を諦め自分の入る墓を探しに来ていた時に、
家出して放浪していたコインロッカーに複数人格の服を入れている「リンゴ」に出会う。
二人が話す中で「人は死んだらどうなるの?」という話になり、
「骨になって、、、、その先は、水になるんだよ。」という会話があった。
理論上は骨はカルシウムだから、最終的には水になるらしいのだけれども、
誰もそれを見たことが無いのにそう信じている。それって不思議だよね。
それと一緒で、世界には「神話」が溢れていて、
「家族」は仲良くなきゃいけない、「男」は女をリードしないといけない、
「こうあるべきだ、こうじゃなきゃいけない」
という「神話」が人々を苦しめている。

というような会話があって、深ぇ~!!と思いました。
上手く説明できませんが、、、
そういう会話を不自然な感じではなくしていて、
また、放浪女子高生が「神話」と戦って必死に「生きよう」としている姿と、
「死を思う」独身貴族の対照性が、印象的でした。
二人がお互いに見えていない世界観があるということを、
お互いが分かってそれを知りたいと思っている。
そういう思いが伝わってくるようでした。

「普通」という「神話」の下に、本当の、リアルな「生」があるんだ。
って思える一冊でした。

106/200『ボックス!』百田尚樹


読破!!
『ボックス!』百田尚樹(作家)
発行:2013年4月 講談社文庫
難易度:★
感動度:★★
共感度:★★
個人的評価:★★
ページ数:401ペー


【本の紹介】(裏表紙より抜粋)
天才的なボクシングセンス、だけどお調子者の鏑矢義平と、勉強はお得意だけど運動が苦手な木樽優紀。真逆な性格の幼馴染二人が恵比寿高校ボクシング部に入部した。一年生ながら圧倒的な強さで勝ち続ける鏑矢の目標は「高校三年間で八冠を獲ること」。だが彼の前に高校ボクシング界最強の男、稲村が現れる。

【目次】
第一章 耀子、風を見る
第二章 いじめられっ子
第三章 モンスター
第四章 事件
第五章 ジャブ
第六章 サイエンス
第七章 右ストレート
第八章 マスボクシング
第九章 国体予選
第十章 文武両道
第十一章 恐怖心
第十二章 ケンカ
第十三章 インターハイ
第十四章 合宿
第十五章 左フック

【感想】
ザ・スポ根!小説でした。
特徴としては、一章ごとのページ数がそんなに多く読みやすいこと、
ボクシングに関する知識が豊富に描かれている、
初心者の優紀が徐々に上達していく姿に胸が熱くなること。って感じです。
本の世界に入り込みやすい、分かりやすい文章の書き方だから、
読んでいると、シャドーボクシングの練習のシーンとかでは、
つい一緒に真似したくなって、途中で本をおいて鏡を見ながらパンチをしていました。笑

ボクシングというのが力任せの、荒くれ者のスポーツというイメージが強かったのですが、
文武両道を目指す優紀の姿勢であったり、恵比寿高校ボクシング部の他の先輩の方々の人柄を
みると、「スポーツとしてのボクシング」はもっとシビアで精神的・肉体的に鍛えられるスポーツなのだな。と思いました。

上巻では、優紀の幼馴染でボクシングの天才・鏑矢が活躍するシーンが多かったのですが、
下巻では上達した優紀が鏑矢を追い抜くというような伏線が張られていたので、
読むのが楽しみです。

105/200 『きみはポラリス』三浦しをん(作家)


読破!!
『きみはポラリス』三浦しをん(作家)
発行:2011年3月 新潮文庫
難易度:★
感動度:★★
共感度:★★
個人的評価:★★
ページ数:384ペー

【本の紹介】(裏表紙より抜粋)
どうして恋に落ちたとき、人はそれを恋だとわかるのだろう。三角関係、同性愛、片思い、
禁断の愛・・・言葉でいくら定義しても、この地球上にどれひとつとして同じ関係性はない。
けれど、人は生まれながらにして、恋を恋だとしっている――。
誰かを大切に思う時放たれる、ただ一つの特別な光。カタチに囚われずその光を見出し、
感情の宇宙を限りなく広げる。最強の恋愛小説集。


【目次】
永遠に完成しない二通の手紙
裏切らないこと
私たちがしたこと
夜にあふれるもの
骨片
ペーパークラフト
森を歩く
優雅な生活
春太の毎日
冬の一等星
永遠に続く手紙の最初の一文

【感想】
 題名と表紙のインパクトでジャケ買いした一冊。
恋愛小説と書かれているけど、べたな「純愛」のお話はありませんでした。
本の中にはたくさんの関係性が出てきて、様々な視点からの日常が描かれていました。
短編集なのですが、それぞれの主人公や世界観がバラバラで、
同じ著書の小説を読んでいるのかよく分からなくなるくらい、
文章のタッチも登場人物の価値観も違うお話でした。

自分的には「冬の一等星」が一番好きな短編でした。
スーパーの駐車場で女の子が母親の車に隠れていたら、
急用で大阪まで帰らないといけなかった見知らぬ男がその車を盗み、
高速道路の上で女の子が乗っていたことに気が付く。というお話。
状況だけみるとかなりヤバい状況なのに、そんな中で交わさせる二人の会話が、
なんだか温かくて、その女の子が大人になってからも忘れられないでいる。というお話。

状況とか、はたから見た感じとかで人と人との関係性を説明できるほど簡単ではなくて、
人と人との関係性っていうのは、星の数ほどある。奥深いものなんだ。
という、本のテーマが良く現れている話だと思いました。