発行:2013年7月 アーク出版
難易度:★★★☆☆
資料収集度:★★★★☆
理解度:★★★★☆
個人的評価:★★★★☆
ページ数:173ページ
【本のテーマ】(表紙裏より抜粋)
最近、人々の関心を呼ぶPM2.5。目に見えず、臭いもせず、存在に気付かないが、いったん体内に入ると、じわじわと細胞や器官を蝕んでいく。乳幼児や高齢者、あるいは呼吸器や循環器に疾患のある人はもちろん、健常者でさえ注意を要する。
長年、PM2.5の人体への影響を研究してきた著者が謎の物体の正体と危険性を警告する!
最近、人々の関心を呼ぶPM2.5。目に見えず、臭いもせず、存在に気付かないが、いったん体内に入ると、じわじわと細胞や器官を蝕んでいく。乳幼児や高齢者、あるいは呼吸器や循環器に疾患のある人はもちろん、健常者でさえ注意を要する。
長年、PM2.5の人体への影響を研究してきた著者が謎の物体の正体と危険性を警告する!
【目次】
前書きに代えて
第一章 なぜいま「PM2.5」が騒がれているのか
第二章 「PM2.5」にはどんな特徴があるのか
第三章 「PM2.5」の何が問題なのか
第四章 「PM2.5」の脅威からどうやって身を守るか
エピローグ
【概要】
前書きに代えて
PM2.5を10年近く研究する著者から、近年メディアで騒がれているPM2.5について、メディアの報道では問題の本質をつかめない。と考えている。PM2.5の要点を一言でいうと「とても小さい」、そして、「どこにでもある」ということである。科学技術の進歩に反して、肺疾病は昔より増えており、三大有害物質(ニコチン、タール、一酸化炭素)に加えPM2.5は有害物質となりつつある。
第一章 なぜいま「PM2.5」が騒がれているのか
PM2.5とは、「Particulate Matter(微粒子状 物質)」の頭文字である。2.5は2.5μmのことである。つまり、「2.5μm以下の粒状物質」の総称である。2.5μmとは、髪の毛の太さの約30分の1。特定の物質を指すのではなく、黄砂、火山灰、排気ガス、などの液体・固体、様々なものがあてはまる。さらに、分類として、火山などの自然由来のものと、車の排気ガスなどの人為由来のものに分けられる。北京ではPM2.5の20~30%が車の排気ガスと言われているが、それは車の問題ではなく、石油に原因がある。石油に含まれている硫黄の基準が、日本のものより緩く、日本の15倍まで含まれていても基準を通るのである。2017年末に新基準を全国的に導入すると述べている。
日本の大気汚染とPM2.5には2つの違いがあり、①複合型(黄砂+工場や車の排ガス+日本で出るPM2.5)②地球規模の問題である(上の定義のPM2.5は世界中に存在している)
PM2.5に注目が集まったのは、中国のアメリカ大使館が空気の検査を行っており、PM2.5の急増に気付いたことがきっかけである。アメリカではPM2.5の基準として、2006年に日平均35μm/m3、年間15μm/m3という基準を出しており、日本もそれに習って基準を導入した。(2009年からはアメリカはさらに基準を厳しくした)中国も重点地域ではその基準を取り入れているが、効果は出ていない。このように、これまでは黄砂という目に見える大きさの粒に注目していたが、「小さな粒」にも着目するようになった。
第二章 「PM2.5」にはどんな特徴があるのか
「小さい」ことが問題の核心であり、PM10以上(10μm以上の粒状物質)なら体外に排出することができるが、PM2.5は細かすぎるために対外に出ることができず、体内に堆積してゆく。という性質を持っている。また、細かいがゆえに表面積が多く、細かな傷をつける。
有害なPM2.5の種類として、①粉じん②金属ヒューム(金属が気体から凝縮した時に発生)③煙(物を燃やす時に発生)の三種類がある。これらの発生をなくすことはできないので、異常値の際に適切な対処をすることが求められる。また、液体のPM2.5も存在しており、NOx(窒素酸化物)やSOx(硫黄酸化物)として固体のPM2.5に付着することで、さらに危険性を増す。
黄砂由来のPM2.5などは、その特徴として、雨が降ると地面におちるが、土ではなくアスファルトの地面であると、乾くとまた舞い上がる。という特徴がある。
盆地や都市にたまりやすく、風が強いところでは注意が必要である。低気圧によって吹き上げられ、秋~春先に偏西風に乗って黄砂と共に日本にやってくる。産業活動が多い日中に多く、夜になると少し減る。
その測定方法として、①フィルター法(電子天秤)(フィルターを通してPM2.5だけ集める)②ベータ線呼吸法(ベータ線の透過率や反射率から計算する。高価な設備がいる)③フィルター振動法(フィルターを振動させ、PM2.5が絡まることで振動が変化する。そこから重さを導き出す。)の三種類がある。
第三章 「PM2.5」の何が問題なのか
PM2.5は人体のさまざまな部位に対して危険性を危惧されている。各部位に問題がある人は注意する必要がある。
「呼吸器系疾患」として、肺胞に傷をつけ、肺胞からその表面張力を奪い粘力を下げる危険性がある。「眼疾患」では、PM2.5が目に着くことで、粘膜の表面張力を奪い、ドライアイの人はよりドライアイになり、さらには眼球を傷つける危険性がある。「消化器官系疾患」として、ラット実験によると、PM2.5が体内にたまりすぎたことで下血した結果がある。「循環器系疾患」は、血液中に入り込むことで、様々な疾患の原因となる危険性がある。「アレルギー疾患」では、他のアレルギーのアジュバント「補助剤」として、状態を悪化させうる。「癌」では、体内にたまりすぎることでがんの原因になる。他にも神経・遺伝子・免疫にも影響があるのではないか、と言われている。
危険性の高い順に並べると「肺・目・腸」である。
しかし、野鳥は消化のために砂を食べるが、そこにもPM2.5は含まれているはずであり、野生動物とPM2.5の関連に関しての研究報告がまだ少ない。
第四章 「PM2.5」の脅威からどうやって身を守るか
ハイセンシティブグループ(子供、高齢者)は注意が必要である。
まずは、手洗い、うがいをすることで、皮膚や口内に付着したPM2.5を除去できる。
マスクについては、ガーゼは50μm~100μm、不織布は10μm以上のウィルス・花粉を除去できるが、2.5μmであるPM2.5は完全には除去できない。もし2.5μmのマスクを作れば、呼吸が困難になってしまう。PM2.5を防ぐには、多層で湿度のあるマスクが効果的である。
また、目を洗浄する際には、先に顔を洗い、涙と同じ成分の点眼液を使うのが好ましい。
空気清浄機を使う際には、フィルターの性能(網の目の細かさ)に着目する。
HEPAフィルターというPM2.5を除去するフィルターも開発され病院などで使われている。
会社でできることとしては、外出から戻ってきた際には、服を払い、靴を靴ふきマットでふき、(粘着性のものが好ましい)手洗い、うがい、洗眼をすることである。
他にも、「電気集塵」という帯電させてPM2.5を除去する方法もあるが、装置が大きく、高価である。
自然を利用する方法として、落葉樹は土壌を湿らせ、PM.2.5を飛ばないようにする効果がある。
また、葉に毛状突起(毛が生えているような葉)がある植物は、PM2.5の捕捉能力があがる。
エピローグ
PM2.5は風によって越境するため、一国の問題ではない!
【感想】
基本的なことが分かりやすく書いてあった!
PM2.5は物質の名前かと思っていましたが、粒の大きさでそう呼ばれているのであって、実は色々な身近なところに存在している、ということを知りました。
タバコの副流煙が危険であるのも、このPM2.5が含まれているからであり、魚の焼け焦げた部分を食べると癌になると言われる所以も焼け焦げ部分にPM2.5が含まれているからである。と書かれていて、そんなに身近にあったのか!と驚きました。
問題として、粒が小さすぎて一度体内に入ると排出できない。体の外部・内部に細かな傷をつける、表面積の存在により、粘膜の表面張力を奪ってしまう。黄砂や酸性の液体などと混じって複合的な物体として飛来して来ているという問題点を理解することができました。各疾患に関しては具体的すぎて、少ししか理解できませんでした。
対策として、手洗い・うがい・洗眼の重要性、そして「HEPAフィルター」という高性能フィルターの存在、そして、「電気集塵」という高コストな除去法、自然を利用して除去する方法があると理解しました。やっぱり植物は万能、というか、人間の生存を助けてくれるなぁ。と再認識させられました。
この本だけで全て分かったなんて思わず、続けて勉強していきたいと思います。
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