2014年3月20日木曜日

89/100『うそつきは得をするのか』生天目 章

以前読んだ本!!
『うそつきは得をするのか』生天目 章(中央大学商学部客員教授)
発行:2008年5月 ソフトバンク クリエイティブ株式会社
難易度:★
資料収集度:★
理解度:★
個人的評価:★★
ページ数:186ペー

【本のテーマ】(Amazonの商品紹介より抜粋)
ケーキを切り分け、ATMの列に並び、オークションで競るなどと、私たちは日々「社会ゲーム」に参戦しています。この人生ゲームに勝つための秘訣は、あるのでしょうか?悪意のあるうそを撃退する術は、あるのでしょうか?誰もがほしがるうまい方法を見つけるために、本書は「ゲーム理論」を使って、利害のからむ人間関係のかけひきを、具体例からやさしく導きます。

【目次】
記録がないため割愛。

【概要】(自主レポート2010/3/28のまま)

最終通告ゲーム
共同作業による成果を100%で表し、Aは自分の分け前を100-x、Bの分け前をxという提案をします。
Bはその提案を受け入れる、あるいは拒否する、のどちらかを選択します。Bが拒否した場合には、お互いの分け前はゼロになります。
すると、多くの場合Aが分け前を独占する形となる。(Bは少しでもお金がもらえた方がうれしいから)
しかし、自分の分け前が0になってでもBが拒否することも少なくない。

利得行列で見る、いろいろなゲームの種類
    支配戦略ゲーム
相手の出方に関係なく有利な結果をもたらす戦略(支配戦略)
例:インディージョーンズの選択(瀕死の父、多くの聖杯、本物→治癒、偽物→毒)
→父で先に試す、が一番有利な結果をもたらす
選択\杯
本物
偽物
自分が先に試す
-10
父が先に試す
-5

    集中ゲーム
双方の利得の和を最大にする戦略と(力の結集)と、相手におかまいなく一定の利得が保証される(単独行動)
戦略との間での葛藤。
例:鹿狩りゲーム(鹿を狙うには協力が必須)
狩人A\狩人B
鹿を狙う
野うさぎ
を狙う
鹿を狙う
10\10
0\6
野うさぎを狙う
6\0
6\6

    分業ゲーム
お互いに異なる戦略をとることが双方のメリットとなるが、
お互いが同じ戦略をとると、双方のデメリットとなる。
例:チキンゲーム(狭い交差点で出会った2人のライダー)
AB
前進
停止
前進
0\0
2\1
停止
1\2
0\0

    堂々めぐりゲーム
双方にとって、最適な戦略が一致しない。
例:信用ゲーム
買い手\売り手
良い商品を売る
悪い商品を売る
調べて買う
3\2
2\1
調べないで買う
4\3
1\4

社会的ジレンマ
自分の利益を最大にする個人の行為(個人の最適化)が、全体の利益を最大化することにつながらない
    個人は「協力」(利他的な戦略)あるいは「非協力」(利己的な戦略)の二者択一の問題に直面している。
    個人にとって合理的な選択は、非協力である。
    すべての人が非協力であれば、全員が協力する場合と比較して、劣悪な結果を招く

少数派ゲーム
「エルファロル・バー」 ブライアン・アーサー
60人が定員のバーに毎週100人の被験者が、個人の判断で来る。
すると、自然と60人前後の人数が集まるようになる。
(状況1)バーに行く→空いていた
(状況2)バーに行く→混んでいた
(状況3)家にいる→空いていた
(状況4)家にいる→混んでいた
このゲームの解答は、、、「譲り合いの精神」
状況1、状況4の時には、次回の戦略として、反対の行動をする。(前回バー空いていたから、今回は譲ろう!)
状況2、3、の時には、ランダムで選ぶ。
そのように、皆が譲り合いの精神を持つことにより、利益を得た人は、次回は譲り、利益を得られなかった人が利益を得るチャンスが生まれる。
譲り合いの精神が、「効率性」と「平等性」を同時に解決できる!!

「美人投票ゲーム」
もっとも投票の多い人に投票した人の中から賞金を与えます。
→個人の意志と反した投票をする。皆が最も選びそうな人を選ぶ
ジョン・メイナード・ケインズ
「相場とは、美人投票ゲームである」

数字実験からみる投票ゲーム
①大勢の被験者がそれぞれ、0~100までの整数を1つ選ぶ
②皆が選んだ整数の平均値をMとすると、2/3Mに一番近い整数を選んだ人に賞金を与える。
みんなが合理的に考えれば、、、
ステップ0 全員がランダムに数字を選ぶとすると、平均M=50
      よって、50×2/3=33
ステップ1 もし全員が合理的なら、33を選ぶだろう。
      すると、33×2/3=22
ステップ2 もし全員がさらに合理的なら、22を選ぶだろう。
      すると、22×2/3=15
ステップ3・・・・・・
最終的には0にたどり着く。
しかし、実験の結果としては、22付近の数字を選ぶ人が多かった。
その人たちの推論は、「自分は合理的であるが、他の多くの人はそうではない。そして、ステップ1までしか読まない。」

・カスケード現象
良い評判や関心に基づく行動が積み重なることで、多くの人の行動が同じ方向へ収斂していくこと。
ほかの人たちがある行動をとるのには、何らかの根拠があり、その人たちと同じ行動をとることは有用である、と考える情報的影響がはたらく。

・フォーカル・ポイント
お互いの心の中で共通に認識しやすい顕著な特徴、それにより、暗黙の強調が図られる。

・ゲシュタルト心理学
人間同士の相互認識は、伝統や慣例に表れる

・合成の誤謬
ひとつひとつは正しいが、集まると、間違ったものになる。

・節約の逆説(ケインズ)
節約自体は美徳であるが、多くの人がすると、不況になり、個人の所得は減る。
ミクロの総和はマクロにはならない。⇔分割の誤り(マクロの性質=ミクロの性質と考えてしまうこと)

・創発
一人ひとりの行動に着目するだけでは、そのような結果をもたらす因果関係をうまく説明できない現象をもたらすこと。例:交通渋滞、流行

・バタフライ効果
多くの事象の複雑な因果関係によって、まったく予想の出来なかった事が生じること。
例:風が吹けば桶屋がもうかる

・逆説
理に反することが熟考すると理にかなっている、または理にかなっていることが、理に反している。
(エピメニデスの逆説)「すべてのクレタ人が必ずうそをつく」とクレタ人が言った。

・ブルジョア戦略
相手が所有しているときはハト派、相手が非所有のときはタカ派。非所有者は所有者に資源を譲る。
したがって、資源をめぐる闘争は回避される。

・ロバート・チャルディーニ
情報過多の現代に、限られた時間で全ての情報を検討するのは不可能。
したがって、「影響力の武器」という、より簡素化された自動的で原始的な方法で意思決定を行う。
影響力の武器とは、、、
返報性:恩を受けたら、それにお返しをしなくてはいけない。
一貫性:ある立場を表明してしまうと、それを貫き通す
社会的証明:多くの人がとっている行動は適切な行動である、と判断してしまう
好意:自分が好意を持っている人の頼みは、承諾しやすい
権威:権威ある人の命令には従う傾向が強い。
希少性:量が少ないものは価値が高いと判断してしまう。

結論
うそつきが得をするかどうかは、私達がどのような社会をつくるかによる。
うそをつくことは、自分の利得の最大化を目指すという合理的な考えから生まれる。
よって、その前提を崩し、うそをつくことで損をするという社会にすれば、うそをつく人は少なくなる。
うそをつかれたとき、どのように受け入れ、許すかで、どのような社会がつくられるかが決まる。



【感想】
社会学っぽい本でした。
読んだのだいぶ前なので、内容はほとんど覚えてないですが、
このころ自主レポート書く癖をつけようとしていて、何冊かの本で書いていました。
いま見返すと、要約のレポートというよりも、単なる語句解説集だな。と思います。
しかし、「クレタ人」の話とか、美人投票ゲームとか、
普段の日常生活にある現象を「ゲーム」として普遍化してとらえる。という考え方が面白かったです。

「社会的ジレンマ」という言葉をこの本で知って、山岸俊男さんの本を読んだりもしました。
個人の得ばっかり考えて行動していたら、全体の総和として損をしてしまい、
最終的には自分も損してしまう。という理論を学びました。
それは、環境問題とか、著作権の問題とか、いろいろなところに共通してある問題だと思います。
そこで大事なのが「譲り合いの精神」だというのも、納得できましたが、
やはり、「うそつき」や「ただ乗り」をする人がいたら、
損する人、得する人が出てくるのは不可避だと思います。
この本に書いてあった通り、そういう人たちに対して、周囲の人や社会がどのように対応するか、
それによって社会が「嘘つきが得をする社会」になるかそうならないかが決まる。
と結論付けられていたのは、納得できました。

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