活到老学到老!毎日が勉強だ!
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2015年7月28日火曜日
140/200 『エスパー・小林の「運」がつく人「霊」が憑く人』エスパー小林(霊能力者)
『エスパー・小林の「運」がつく人「霊」が憑く人』エスパー小林(霊能力者)
発行:2015年4月 王様文庫
難易度:★★☆☆☆
資料収集度:★★☆☆☆
理解度:★★☆☆☆
個人的評価:★★☆☆☆
ページ数:221ページ
【本のテーマ】(表紙帯より抜粋)
人生の「要所」でつまずかないために・・・
私は「見えない世界」の真実を視る力を使って、人生相談を受けたり、
将来展望のアドバイスをしている。
そこで感じるのは、ちょっとした行動、考え方、習慣で
「運」を大きくつかむ人もいれば、運を落とす人、さらには「霊」に憑かれてしまう人がいる、
ということだ。では、どうしたらいいか、
本書で余すところなく明かしていこう。
【目次】
第一章 あなたの「運気」の守り方
第二章 「低級霊」に憑かれる人 「高級霊」が味方する人
第三章 「運気の波」に乗れる人 乗れない人
第四章 最高の「縁」を手に入れる技術
第五章 運を呼び寄せる「パワー」アクション
【感想】
こんなにタイトルからして胡散臭い本を、初めて読んだ笑
こないだ実家に帰省した時に、母親が「これ面白かったで」といって渡してくれた。
母がなんでこんな本を読む気になったのかは謎だけど、
想像したよりも胡散臭くない内容やった。という感想が気になり読破。
その結果の感想は、、、やっぱり胡散臭い!!笑
けど、霊の話について書いているかと思いきや、
「どんな環境に自分を置くかが大事」だとか、人との「縁」を見極め、
悪い縁からはなるべく身を置くようにしろ。だとか、
そういう自己啓発書的な部分は、胡散臭くもなく、理解もできた。
ここからは個人的感想。。
「霊的なパワー」が存在しないことを証明できないから、
一概に「胡散臭い」と切り捨ててしまうのも良くないと思うし、
実際に「運が良い人」というのはいると思うけど、
それを自分から切り離した外部的要因に結び付けて、
「高級霊」や「守護神」がいる、という風に結論付けるのは、
どうも納得がいかない。(もしほんとにいたらごめんなさい笑)
外部的要因ではなく、内部的要因であるとすると、
どんな人が「運」が良くなるのか。それを端的に表した言葉が、
「Serendipity (セレンディピティ)」(日本語に訳すると「掘り出し上手」)だと思う。
「運」が良い人は、「チャンス」を掴むのがうまいんだと思うし、
「チャンス」を与えてもらうのもうまいんだと思う。
そして、「君子危うきに近寄らず」じゃないけど、悪運や悪縁から遠ざかるのもうまいと思う。
けど、そんな人を周りの人が見たら、「あの人は運がいい」という言葉で片付けてしまう。
つまり、外部へのアンテナをどれくらい張っているか、
チャレンジ精神がどれくらいあるか、(無謀であるか、とも言える)
結局はそういうハングリー精神とか、バイタリティとか、
内面的性格が「Serendipity」に繋がるんだと思う。
・・・とはいっても、やっぱりそういう本人の努力だけではどうにもならないこともあるから、
そこは「運」なのだとも思う。
(て、彼はおそらくその部分の「運」の話をしているのだろうけれども。)
そして、「運気」が上がる、下がるというのを、霊的なものと外的要因っぽく言うのも
やっぱり胡散臭い。
やはり、それも本人の捉え方次第で、プラシーボ効果じゃないけど、
「効果がある」と思うから効果が出るということがあり、
また、いわくつきの物件や過去に悲惨なことがあった場所で運気が下がるとか、
パワースポットで運気が上がる、というのも、
結局は本人がそこに何かが存在しているかのように感じ取る
そこで起こったこと昔のことを意識的・無意識に想像し、
「臨在感的に把握」することで、その場所に対する印象を抱き、
またそのイメージを膨らませ、その結果心身に少なからず影響が出てくる現象だ。
というのが科学的で、現実的だと思う。
話がそれるけど、この「臨在感的に把握する」という言葉は、
「空気の研究」をしていた山本七平氏が用いた言葉で、
僕はすごく気に入っている。
というのは、「空気が読めない」という言葉の「空気」というものは、
誰かがその「空気」を定義したわけでもないのに、
その場にいる人たちが多少の違いこそあれ、
似たような「場の流れ」や「集団の思惑」を「臨在感的に把握」し、共有しているから成り立つ。
それは、自分とは切り離して存在している概念ではなく、
あくまで、自己の中から曖昧な存在として生み出されたものであり、
しかし、それでいて確固とした存在感や影響力を持つものである。
ここで、「臨在感的」というのがポイントで、
この言葉があることで、実際の存在以上に存在感を感じている。という事実が際立つ。
(あえて何も存在していないのに、とは書かない。笑)
霊能力者といわれる人は、この「臨在感的把握」能力が高いのだと思う。
その場所の歴史的な意味や意義を感じ取りそれを「霊」だと言ったり、
また、過去の経験から、他人の細かい特徴やの類似性を読み取り、
新たに出会った人の性格や過去を、
さも「臨在感的」に存在しているかのように「把握」するのである。
それは外れてしまうとただの「思い込み」であるが、
当たると「過去の経験の積み重ねの中の、類似的データから導き出された統計学」となる。
結局、占いとは、そういう曖昧だけどどこか説得力のある統計学だと思う。
普段の生活の中で、
全く関係性のない二人が(例えば、地元の大学の先輩と、職場の先輩とか)
どこか似ていると思ってしまうことがある、
どちらか片方と接していると、もう片方の存在を思い出してしまう。
ということがある。それはきっと、その二人にどこかしらの類似点があり、
生活面や思考面においても何らかの共通点があるかのかもしれない。
そういった人のパターン分けや分類を深めていけば、
占い的なことができるのかもしれない。と考える。
何千、何万もの人の人生のサンプルデータを取り、集計し、分類し、
類似性を研究すれば、そのパターンごとに、それなりに役立つ人生訓ができるのかもしれない。
新しく出会った人をそのデータに基づいて分類し、
その人の人生に類似したデータを取り出してくることで、
その人の人生の決断に役立つアドバイスができるかもしれない。
近年流行りのビックデータを駆使した、統計学に基づいた最強の占い、
というものを作ってみて欲しいです。
そうすれば、少しは悩める人が減るんではないでしょうか。
2015年7月25日土曜日
139/200 『愛着障害~子ども時代を引きずる人々~』岡田尊司(精神科医・作家)
『愛着障害』岡田尊司(精神科医・作家)
発行:2011年9月 光文社新書
難易度:★★★★☆
資料収集度:★★★★☆
理解度:★★★★★
個人的評価:★★★★★
ページ数:313ページ
【本のテーマ】(表紙帯より抜粋)
従来、愛着の問題は、子どもの問題、それも特殊で悲惨な家庭環境で育った子どもの問題として
扱われることが多かった。しかし、近年は、一般の子どもにも当てはまるだけでなく、
大人にも広く見られる問題だと考えられるようになっている。
しかも、今日、社会問題となっているさまざまな困難や障害に関わっていることが明らかとなってきたのである。
また昨今、発達障害ということが盛んに言われ、それが子どもだけでなく、
大人にも少なくないことが知られるようになっているが、この発達の問題の背景には、
実は、かなりの割合で愛着の問題が関係しているのである。
実際、愛着障害が、発達障害として診断されているケースも多い。
【目次】
第一章 愛着障害と愛着スタイル
第二章 愛着障害が生まれる要因と背景
第三章 愛着障害の特性と病理
第四章 愛着スタイルを見分ける
第五章 愛着スタイルと対人関係、仕事、愛情
1.安定型愛着スタイル
2.回避型愛着スタイル
3.不安型愛着スタイル
4.恐れ・回避型愛着スタイル
第六章 愛着障害の克服
1.なぜ従来型の治療は効果がないのか
2.いかに克服していくか
(1)安全基地となる存在
(2)愛着の傷を修復する
(3)役割と責任を持つ
【感想】
近年話題になりつつある発達障害の根本的な原因を親との人間関係による
愛着障害にあると述べたチャレンジングかつ、斬新な本でした。
テーマが重い本で、読み進めていくのが辛かったですが、
自分の生まれ育ってきた環境や過去について振り返られり、向き合える本でした。
本書の前半では著名人が抱えていた愛着障害について述べており、
夏目漱石、太宰治をはじめとした作家から、ビルゲイツ、オバマまで、
さまざまな著名人の家庭環境とそれがその人物に与えた影響、
彼らの心の闇について書かれていました。
そういう面ばかりの話を読むと、こんなに心に闇を抱えている人が、
どうしてこんなに表舞台に立ったり、作家の場合作品が教科書にのるようにまでに
なったのかな、と疑問に思うくらいでした。
それを、これだけの著名人「だからこそ」の過去と愛着障害と捉えるのか、
これだけの著名人「でも」辛い過去と愛着障害がある、と捉えるのかで後半の内容の
入ってきやすさが変わってくると思うのですが、
自分は後者、著名人「でも」愛着障害がある、と捉え、
一般人でも程度の差はあれ、似たような事例が存在している。と考えました。
克服方法に関して、
自分が親に対して不満を抱いたり、怒りの感情を抱いていることをまずは受け入れ、
しっかりとそのことに向き合うことが大事だと述べていた。
その上で、親が自分にしてくれなかったこと、与えてくれなかったものを、
外の世界に求め、「安全地帯」となるような心の拠り所や他者を自分で見つけ出し、
その「安全地帯」によって、心に空いた穴を埋め、
親がくれなかったもの、発達しきれなかった部分の埋め合わせをし、
最終的には親のことを許す。
親以外の人間関係の中で、ギブアンドテイクでお互いに埋め合わせをしていく。
そのような過程が愛着障害、発達障害を克服する方法だと理解しました。
自分の過去を振り返り、親がしてくれなかったこと、自分の発達不足なところ、
そして、自分にとっての「安全地帯」となってくれた存在のこと、
色々考えました。
そして、「安全地帯」となってくれた存在に、心から感謝したいと思いました。
そして、親に対するわだかまりや不満についても見つめ直すことができ、
その感情を否定するでも、見て見ないふりするでもなく、
きちんと向き合った上で、許すことができるようになりたい。と思いました。
小さい頃に親と過ごした時間に対する「愛着」が、
その後のすべての「愛情」に関する感情に関わっていく過程を知ることができ、
愛情のメカニズムや由来について考えることができました。
そう考えると、家庭環境が違えば「愛着」の概念も変わり、
そうすると、「愛情」に対する概念や価値観も人それぞれ、様々になるのだということを、
再度認識させられました。
心身の健康に関わる問題の根本は生活習慣や思考習慣であり、
その生活習慣や思考習慣は親から学び、身に付いたものであるとすると、
この本は健康の根本に関わるテーマを扱っていると思いました。
教育の大切さと同時に教育の不完全さを感じることができる本でした。
ただ一つ気になるのは、本の表紙。
重版に伴って表紙を作ったようですが、「子供をだっこしてください。」
なんて、そんな簡単な話ではありません。
子供を愛することが必ずしも良い方向に繋がるとは限りません。
子供を愛することが必ずしも良い方向に繋がるとは限りません。
子供との関係が出来上がった後、図らずしも親との離別があった場合には
子供に残す心の傷が深くなってしまう恐れがあります。
子供に残す心の傷が深くなってしまう恐れがあります。
この本の一番のテーマは「子供を愛すること」ではなく、
「親の不完全さと向き合い克服し、許すこと」だと思うので、
「親の不完全さと向き合い克服し、許すこと」だと思うので、
もうちょっとそのテーマにあった表紙の絵とか、キャッチコピーにして欲しかったです。
2015年6月22日月曜日
138/200 『風に舞い上がるビニールシート』森絵都(作家)
『風に舞い上がるビニールシート』森絵都(作家)
発行:2006年5月 文春文庫
難易度:★★★★☆
感動度:★★★★☆
共感度:★★★★☆
個人的評価:★★★★★
ページ数:342ページ
【本の紹介】(裏表紙より抜粋)
才能豊かなパティシエの気まぐれに奔走させられたり、
犬のボランティアのために水商売のバイトをしたり、
難民を保護し支援する国連機関で夫婦の愛のあり方に苦しんだり・・・・・・。
自分だけの価値観を守り、お金よりも大切な何かのために懸命に生きる人々を描いた
6編。あたたかくて力強い、第135回直木賞受賞作。
【目次】
器を探して
犬の散歩
守護神
鐘の音
ジェネレーションギャップX
風に舞い上がるビニールシート
解説: 藤田香織
【感想】
すごいよかった。
高校生の時に一度読んだことがあったけれど、
その時に何を感じたのかはもうすっかり忘れてて、
話の内容もかなり曖昧だったけど、
今読んでみると、また違う味わいがあってよかった。
良かったと思う点と、考えたことをそれぞれ書きます。
まず、良かったと思った点は、
それぞれの短編の世界観が違っているのが良い。
そして、それぞれの短編の「日常」がやけに細かく、詳しくて、
(たくさん参考文献を読まれたんでしょうね。)とてもリアルに感じられた。
そして、そんな中にそれぞれの人が悩みを抱えながらも奮闘する姿に感動を覚えた。
それぞれ別個の短編の中には、時間軸を移動した展開があったり、
過去の話も盛り込んでいたり、と、内容がとても濃く、それでいて引き込まれやすく、
読み始めると一気に読み終わってしまうような小説だった。
また、世界観だけではなく、文章の表現方法も変わっているのがよかった。
「守護神」では夜間大学に通う生徒たちのやりとり、ということで、
知的で論理的で、淡々と息継ぎをするまもなく畳み掛けるような会話のやりとりが、
リズミカルで快感だった。
「鐘の音」では、仏師が主人公で、関西弁(若干違和感を感じる関西弁でしたが)
メインのやり取りであり、古風な職人気質の雰囲気がよく出ていたと思う。
「風に舞い上がるビニールシート」では、難民のために働く国際公務員たちが主人公ということで、
会話がまるで洋画を字幕で見ているかのような、
そんな欧米チックなアメリカンなノリをうまく表現していた。
こんなにもコロコロ作風を変えられる作家はすごいと思う。
読んでいて飽きないからこういうジャンルがすごく好き。
そして、考えたこと。
この小説の表題ともなっている「風に舞いあがるビニールシート」、
これは、表題作の中の登場人物、国連機関職員のエドが、
紛争地域でいとも簡単に命が失われていく難民を例えた言葉でした。
強い風で簡単に飛んでいってしまうビニールシートのように失われていく命を、
エドは必死で捕まえて、飛んでいかないようにこの世界にとどめようとしている。
そういう感動的なエピソードでしたが、
もしこの小説が短編小説ではなく、この作品だけであったならば、
この例えも、お話もどこか綺麗事で現実味のない無味乾燥なものとなっていた気がする。
というのも、この話だけにスポットを当ててしまうと、
紛争地域ではなくても、物質的には豊かとされる日本においても、
人々は悩み、苦しみ、もがき、どうにかしようと努力している。
という事実が隠れてしまいがちだからである。
紛争地には不幸がたくさんあるというのは何となく想像できるけど、
紛争地じゃないからといって、必ずしも幸福なわけでもない。
風に舞い上がるビニールシートの表現を用いるのなら、
決して簡単に風で飛んではいかないけど、
いろんな人に踏まれて、汚されて、雨風にさらされて、
ボロボロになりながらも、それでも地面にとどまっているビニールシート、だってある。
どっちが幸せで不幸か、なんて簡単に、一概には言えない。
もちろん、簡単に命が失われていってしまうことは悲しくて、辛いことである。
けど、命が失われない世界でも、悲しいことや辛いことはたくさんある。
6編のちょっと変わった人たちの、「平和ボケした」(作中の言葉)日本で、
それでも苦しんだり悩んだりしている人たちの話の最後に、
この「風に舞い上がるビニールシート」という話があった。
その流れがすごく秀逸で、その流れがあったからこそ、
難民という少し身近ではない話も、すんなりと入ってきた。
もしも森絵都さんがそこまで意識してそういう構成にしていたのなら、
もうまさに、脱帽!なんて勝手に想像して興奮していました。
森絵都さんの「カラフル」を読んだ時は、「児童文学」というイメージだったのに、
この短編小説でイメージが変わりました。
ほかの作品も読んでみたいと思います。
2015年6月14日日曜日
137/200 『「続ける」技術』石田淳(行動科学マネジメント研究所所長)
『「続ける」技術』
石田淳(行動科学マネジメント研究所所長)
発行:2014年12月 宝島社
難易度:★★☆☆☆
資料収集度:★★☆☆☆
理解度:★★★★★
個人的評価:★★☆☆☆
ページ数:164ページ
【本のテーマ】
性格も、精神力も、時間も、年齢も、お金も関係なし!あなたの「行動」に着目すれば、
もうムダな挫折感を味わうことはありません!
アメリカ発の「行動科学マネジメント」を使って
「継続は力なり。」をあなたのものにする!
3日坊主にならない「とっておきのコツ」を紹介します。
【目次】
第一章 あ~あ、やっぱり続かない・・・
第二章 「続かない理由」はここにある
第三章 行動に着目すれば、物事は簡単に継続できる!
第四章 ステップで解説!続ける技術を身に付けよう!
第五章 続けるためのちょっとしたコツ
第六章 行動科学で続けられた!~第一章の登場人物たちは・・・~
【感想】
兄がこの人の別の本を読んでいると聞いて、
どんな人なのかなー、と思い読んでみた自己啓発書。
ページに余白を多く使っているので、文章量としては多くない。
内容と文章構成について思ったことを書きます。
内容について。
続けることが出来ない理由は、自分の意志の弱さなどではなく、
自分の周りの環境をコントロールできていないからである。
行動科学に基づいて、環境をコントロールすることで、
「続けやすい」環境を作っていくことができる。という内容でした。
分かりやすいなと思ったのは、
「行動」という概念が大きく二種類に分かれていて、
「何かを増やそうとする行動」と、「何かを減らそうとする行動」という分類で、
「何かを増やそうとする行動」とは、
例えば、英語の勉強時間を増やす、であったり、運動量を増やす、であったり。
「何かを減らそうとする行動」とは、
例えば、煙草を吸う量を減らすとか、体重を減らす。とか。
それで、増やそうとする行動には、
その行動に繋がりやすい環境を作り、
減らそうとする行動については、その行動に繋がりやすい環境を作らないようにする。
ということで、当たり前だと言われたら、そうなのですが、
それを意識して行動に移すことが重要だと再認識しました。
また、物事の原因を「個人の性格や性質」に起因させるのではなく、
「周りの環境」に起因させ、その環境について分析する。という行動科学の考え方が
行動社会学に似ていたので、すんなり理解できました。
文章構成に関して。
一章で具体的な例やエピソードを述べ、最終章でその人たちが行動科学を取り入れ、
「続けること」に成功していく。という流れは、
イメージしやすく、やる気を引き出してくれる効果がありました。
いわゆる、ベネッセの広告漫画的なダメダメからのサクセスストーリー論法です。
個人的には分量も少なく、さらっと読める自己啓発でした。
衝撃的な気付きというよりも、「ふむふむ、そうだよな。」
という感じで読み終わってしまいました。
分かっていても実際にはなかなかうまく出来ないんだよなー。
というのが率直な感想ですが、
でも、続かないのが「意志」の問題ではない、環境を工夫して変えろ!
というメッセージは、続かなくて諦めかけている時に参考にしたいと思いました。
136/200 『間接自慢する若者たち』原田曜平(博報堂ブランドデザイン)
『間接自慢する若者たち』
原田曜平(博報堂ブランドデザイン)
発行:2015年4月 角川書店
難易度:★★☆☆☆
資料収集度:★★★★☆
理解度:★★★★★
個人的評価:★★★★☆
ページ数:175ページ
【本のテーマ】(表紙帯より抜粋)
若者の消費のツボがわかる34のキーワード!
マイルドヤンキー、さとり世代の次に流行るのは何?
第一章 SNSでリア充アピールする若者たち
第二章 SNSで流行るネタ消費
第三章 SNSで絆をなめ合う若者たち
第四章 SNSでイタイと思われたくない若者たち
第五章 SNSから逃げ出したい若者たち
第六章 SNS世代の潜在需要を引き出せ
枡アナvs若者座談会
【感想】
博報堂ブランドデザインの原田さんの、
新書ではなく、ZIP番組スタッフとの共著。
内容に関してと、本の構成に関して、思うことを少しずつ。
まず、内容に関して。
最近の若者がどのようにSNSと関わっているか、
そのアプリ等の概要と使われ方について写真と共に説明されていた。
SNS上では、いかに自分が「リア充」的に過ごしているかを
アピールする場となっている側面があり、
そこでは、いかに「写真映えするか」また、「直接的な自慢になっていないか」が
投稿する際に大きな関心となっている。ということが述べられていた。
(「写真映えするか」は藤本耕平氏著の『つくし世代』では「フォトジェニック」
という言葉で表現されていた。)
SNSを通したコミュニケーションというものは良い面、悪い面の両方あるし、
一概に全て悪いとは思わないけれども、
写真映えする、とっつきやすい投稿の方が「いいね!」もコメントもしやすいし、
複雑な長文を投稿するのは気が引ける。
けど、実際のリアルな生活って、そんなに単純なものではないと思う。
ブルーハーツが歌ってたけど、
「写真には写らない 美しさ」っていうのがあると思う。
そんなリアルな日常はどうしたってFacebookにもtwitterにもあげることはできない。
けれども、やっぱりネット上では、「分かりやすくて覚えやすい」エピソードが
みんなにシェアされ、「いいね!」される。のだと再認識した。
そういう点で、「複雑だけど辛抱強く見ていくと、少しずつ理解できていくもの」が、
SNS上ではどんどん切り捨てられていくような印象を受けた。
FacebookやTwitterなどのアピールを目的としたSNSにはまりすぎると、
思考や感受性がより「インスタント」なもの、
よく言えば直感的、悪く言えば短絡的なものになり、
一度インスタントな感性からはじき出された、
複雑で理解しにくいエピソードは、ブロックし、シャットアウトしてしまい、
自分の感性に心地よい刺激を与えてくれるものだけを残すようになってしまう。
そんな危険性があると感じた。
そんな中、この本でいちばん斬新で衝撃的だったのは、
次のトレンドとして「匿名SNS」という概念を紹介していたことだった。
これまでは、友達の枠の中でのSNSがメインであったが、
そこではアピールがメインになり、なかなか本音を出しにくいというデメリットがあり、
それを補うように今後は「匿名SNS」が流行るのではないか。と予想していた。
この予想に関しては、実際は匿名SNSとしての役割は「2ちゃんねる」が
果たしていたとも考えられるが、
「2ちゃんねる」の世界観は「ネタ」的であり、匿名であることをいいことに、
誹謗中傷が飛び交う事が多々あり、コミュニケーションという側面に障害をきたしていた。
だから、「他人と本音のコミュニケーションをする」ということをメインテーマとした
匿名SNSというニーズがあり、実際にそのコミュニケーションを目的としたアプリがある、
ということは衝撃的で、自分も早速アプリをダウンロードして使ってみた。
(RUMORというアプリで、すでにZIPでも紹介されたとのことでした。)
今のところ、2ちゃんねるとtwitterの間的な感じですが、
今後ユーザーが増えるのか、どのように使われるのか。気になるところです。
ただ、懸念点としては、
今twitterでも問題視されている、個人情報の「晒し」行為が、
匿名でされる可能性があるな。と感じました。
一番簡単に起こりうるのは、「芸能人見た!」とかのつぶやきを
その匿名SNSでするとか。(twitterだとユーザー特定・凍結されてしまうので。)
とか、若者の文化の現在と未来を考察するのはやっぱり楽しくて、
書き出したら止まらないから、これくらいにしておきます。
本に関して。
原田さんはこれまで「新書」という形態で、もう少し堅い感じで書いていた。
それが今回の著書では、ZIPとの共著ということで、
より受け入れられやすいような、キャッチ―でポップな構成になっていた。
前ページに枠の背景が印刷がしてあり、写真も比較的多かったし、
文字の大きさも新書にしては大きく、ページ数は新書にしては少なかった。
それを沢山の人に読まれやすい、として評価できるけど、
その分ちょっと内容が浅くなってしまった。という評価もできる。
自分としては、社会人になってあんまり難しい本が読めなくなってきたので、
シンプルで分かりやすいのは嬉しいけど、より深く考察したいと考える人にとっては、
少し物足りない内容だったかもしれない。と感じました。
2015年5月31日日曜日
135/200 『ランドマーク』吉田修一(作家)
『ランドマーク』吉田修一(作家)
発行:2007年7月 講談社文庫
難易度:★★☆☆☆
感動度:★★☆☆☆
共感度:★★★☆☆
個人的評価:★★★☆☆
ページ数:221ページ
【本の紹介】(裏表紙より抜粋)
大宮の地にそびえたつ地上35階建ての超高層ビル。
それはフロアがねじれながら、巨大な螺旋を描くという、特異な構造をもっていた。
設計士・犬飼と鉄筋工・隼人、ふたりの毎日もビルが投影したかのように不安定になり、
ついにゆがんだ日常は臨界点を超える。圧巻の構想力と、並外れた筆力で描く傑作長編。
【感想】
良かった点
主人公が設計士と鉄筋工という、管理者と現場で働く人という対照的な登場人物を、
一つの建物の建設という共通点を持ちながら、
ザッピングストーリー的に入れ替わり・交互に出てきた点。
泥臭い、労働環境的にそんなによくない隼人の生活と、
設計士としてグローバルな感じで働いている犬飼の生活が、
対照的で比較することでより一層際立った。
二人それぞれの女性との恋愛関係の描写がよかった。
隼人は中華料理店で働く女性と、犬飼は年が一回りも違う大学生女性。
隼人の方はお互い飾らない関係だけど、なかなか結婚とまではいかない感じの恋愛、
犬飼の方は妻がいながらも愛人としての関係。
犬飼と不倫してる大学生女子の後ろめたさを感じている発言や行動が良いと思った。
あと、舞台が大宮っていうのが初めてで、
何回か行ったことあるので、小説の舞台になるっていうのが不思議な感じだった。
悪かった点、
最後があっさりしすぎていた。そして、釈然としなかった。
終わりかけで、展開がいい方向に進むと見せかけて、
最後の最後に事件が起こって、それまで順調に進んでいた状況が
いろいろ変わるなぁ。って思ったところで話が終わってしまった。
そのもやもや感が、多分物語を通して出てくる犬飼と隼人達が建設中の
「らせん状にねじれを持った不安定な高層ビル」に重ねているのだということなんだろうけど、
そうとわかっていても、なんだか釈然としない。
ラストは釈然としなかったけど、
吉田修一の本には、実在するものがたくさん登場して、
興味を持ってそこからネットで調べたりして、
そうやって世界が広がるところが好きです。
2015年5月18日月曜日
134/200 『何者』朝井リョウ(作家)
『何者』朝井リョウ(作家)
発行:2012年11月 新潮社
難易度:★★☆☆☆
感動度:★★★★☆
共感度:★★★★★
個人的評価:★★★★★
ページ数:286ページ
【本の紹介】(Amazonより抜粋)
「あんた、本当は私のこと笑ってるんでしょ」就活の情報交換をきっかけに集まった、拓人、光太郎、瑞月、理香、隆良。
学生団体のリーダー、海外ボランティア、手作りの名刺……
自分を生き抜くために必要なことは、何なのか。この世界を組み変える力は、どこから生まれ来るのか。
影を宿しながら光に向いて進む、就活大学生の自意識をリアルにあぶりだす、書下ろし長編小説。
【感想】
この本は、久々に衝撃的だった。
吉田修一の「パレード」を読んだ時みたいに。
最後の怒涛の展開に一気に引き込まれた。
そして、最初から最後まで、小説の中て描かれていた
主人公・拓人の心の中の独白にすごい共感していたのに、
最後の最後で作者に裏切られた。笑
心の中で思うことと、それを実際に言葉にして発信すること。
その二つの間には本当は壁があるはずなのに、
Twitterというツールは、その壁をないものにしてしまうような、
そんな効果があると再認識させられました。
(かといって、思ったことを言葉にしないままもやもやさせ続けるのも、
それが本当に健全か?と言われると、、、そうとも言えない。
ということも考えさせられました。)
まず、物語の構成がすごく良いと思う。
そして、どの登場人物も、どこか「痛く」て、
意識高いように見せるよう背伸びしたり、
不安やうまくいっていないことはなるべく見せないようにしたり。
そういう一つ一つが自分自身の学生時代を
(学生時代だけじゃなく、今もまだある笑)
ありありと、生々しく思い出させられて、
突きつけられている気がして、
恥ずかしい気持ちになりました。
それくらい、リアルな若者が描かれていると感じました。
そして、最後の怒涛の展開で、登場人物に対する印象がすごく変わる。
それは、物語の中で作者によってうまくリードされていたのだろうと思うので、
もう一度、拓人の視点に惑わされすぎずに、
最後の展開を知った上で読んでみたら、
また印象が変わるのではないかな。と思いました。
僕自身はTwitterあまり楽しんでうまく使いこなせないのですが、
この物語のように、自意識と自分の感情に任せて利用したら、
(というか、「つぶやく」って、自然と自己中心的な発言になる気がする。)
やっぱり、こういう感じになるのか・・・!!
と、さらにTwitterを使いたくなくなりました。笑
Twitterに限らず、Facebookや、個人設営の「オフィシャル」ブログ等、
「自意識」を上手く飼い慣らさないと、
傍から見て「痛い」人間になる。とうこと、
けれど、たとえそう見えたとしても、自分で「痛い」と自覚しながらも、
そうしないと頑張れない、そうやって自分のやる気を奮い立たせている。
そんなリアルな感情がありありと描かれていた。
、、、もうほんとに、「痛」すぎて共感できる本だった。
133/200 『舟を編む』三浦しをん(作家)
『舟を編む』三浦しをん(作家)
発行:2003年6月 文春文庫
難易度:★★★☆☆
感動度:★★★☆☆
共感度:★★★☆☆
個人的評価:★★★★☆
ページ数:347ページ
【本の紹介】(amazonより抜粋)
出版社の営業部員・馬締光也は、言葉への鋭いセンスを買われ、辞書編集部に引き抜かれた。
新しい辞書『大渡海』の完成に向け、彼と編集部の面々の長い長い旅が始まる。
定年間近のベテラン編集者。日本語研究に人生を捧げる老学者。
辞書作りに情熱を持ち始める同僚たち。そして馬締がついに出会った運命の女性。
不器用な人々の思いが胸を打つ本屋大賞受賞作!
【目次】
舟を編む
解説 平木靖成
馬締の恋文 全文公開
【感想】
三浦しをんの話題の本を読んでみました。
『大渡海』という一つの辞書を完成させるまでの、
編集者たちの熱い熱いお話。プラス、恋物語。
感想として、好きだった点と微妙だった点を述べます。
前置きしておきますが、いち三浦しをんファンとしての、期待を含めた個人的感想です。
どうかお気を悪くされませんように。
まず、微妙だった点。さらっと書きます。
主人公・馬締と、ヒロイン・家具矢の出会いが、アパートの家主の親戚であり、
出会いからお付き合いするまでが、あまりにもスムーズにうまくいき過ぎている点。
家具矢の後半でのイメージは、女性でありながらも寡黙で一徹な寿司職人、
という感じだったのに、そこからは繋がりにくいくらい、
軽く馬締を遊園地にデートへ誘う。という展開。
もちろん、もしかしたら、彼女なりに緊張して、タイミングを見計らって
デートに誘ったのかもしれないですが、その辺の描写がもうちょっと欲しかった。
(その後の恋文のくだりはおもしろかったですが。)
ですが、この物語は恋物語メインではないので、
辞書完成までのお話が熱くて良かったので、全体としてはプラスでした。
そして、好きだった点。
編集者の一人の西岡という登場人物の魅力。
新しく作る辞書、『大渡海』の編集に関わったメンバーの中で、
唯一文学的センスが一般人並の社員であり、
編纂の途中で部署移動があり、広告部へと移動してしまう。
周りの同僚の「辞書」や「言葉」に対する情熱の圧倒的な差を感じながらも、
表にはあまり出さないけれど、
そんな彼らを心の中で尊敬し、熱中できるものがあって羨ましい、と思い、
自分がいなくなってからも、彼らのサポートができるように、
人間関係が苦手な馬締のために、
社外交渉対策のファイルを作ったり、
馬締の人間性を後から来た人に知ってもらおうと、
彼が家具矢に対して書いた恋文のコピーをこっそり隠し、
後から来た社員に見てもらえるように仕向けたりした。
そんな彼なりの仕事に対する情熱が、かっこよかった。
この物語の主人公である馬締は、「天才」的な要素がある
ちょっと変わった人であるため、ちょっと感情移入がしにくい。
そんな中、「凡人」っぽい西岡という登場人物には感情移入しやすく、
また、そんな彼の奮闘っぷりが、個人的にすごくカッコいいと思いました。
そして、彼の彼女との関係性や会話も好きでした。
そして、物語の流れとしても、
馬締が『大渡海』編纂に関わり始めるところから、
後半で視点が岸部みどりという新しく配属された社員に変わる。
そこで、部署移動していなくなった西岡の奮闘の後に出会う。
そういう流れが、辞書編纂という数十年という歴史を感じさせ、
読み終わった時には、自分まで不思議な達成感を味わえました。
まとめると、辞書編纂という、身近な存在でありながら、
これまで想像もしたことのなかった世界を想像し、
こんな感じに、馬締のような「天才」型の人間を、
「より凡人」型のたくさんの人達が支えてできたのだろうか。
と想像させてくれる本でした。
132/200 『木暮荘物語』三浦しをん(作家)
『木暮荘物語』三浦しをん(作家)
発行:2003年6月 文春文庫
難易度:★★☆☆☆
感動度:★★★★☆
共感度:★★★★☆
個人的評価:★★★★☆
ページ数:304ページ
【本の紹介】(Amazonより抜粋)
小田急線の急行通過駅・世田谷代田から徒歩五分、
築ウン十年、全六室のぼろアパート木暮荘。
そこでは老大家木暮と女子大生の光子、サラリーマンの神崎に花屋の店員繭の四人が、
平穏な日々を送っていた。
だが、一旦愛を求めた時、それぞれが抱える懊悩が痛烈な悲しみとなって滲み出す。
それを和らげ癒すのは、安普請ゆえに繋がりはじめる隣人たちのぬくもりだった……。
【目次】
もう売ってしまったため割愛。
【感想】
木暮荘というボロアパートに暮らす人々の日常と小さなつながりを、
毎章異なる人の目線から描いた短編小説でした。
どの登場人物もどこか変わっている性格や嗜好の持ち主であり、
それぞれが違う悩みを抱きながらも生きていく姿には、憎めない愛らしさがあり、
また、そんな人たちが、お互いの胸の内を吐露するわけでもなく、
「好き」でも「嫌い」でもない、はっきりしないふわふわした感情で
繋がっている感じが、すごいいいなぁ。と思いました。
どの短編にも、「性・恋愛」というテーマが紛れ込んでいて、
時には「不倫」とか、「覗き」とか、生々しすぎて気持ち悪く感じてしまう行為もありましたが、
けど、人間ってそういう一面もあるよなぁ。とも思える本でした。
第一話目は、彼氏と暮らしてる女性の元に海外を放浪していた元彼が突然転がり込んで来て、
戸惑いながらも、元彼が他に行く当てがないということで、しばらくの間三人で暮らす。
という物語でしたが、
元彼の人柄のおかげか、現彼氏は元彼を追い出そうとせず、
なんだかんだで仲良くなってしまう。
という不思議な三人の関係が奇妙で、だけど、なんだか温かくて、
恋人・元恋人、という関係を超えた繋がりを感じさせられました。
女子高校生・光子は、この物語の中で大事な役割を担っているのですが、
行動や言動はギャルっぽいのに、根は優しくて、
死ぬ前にヤりたいという願望と葛藤していた家主のじいさんの話し相手になったり、
女子高生・光子の部屋をのぞき続けていたサラリーマンのことも許して、
時々のぞき穴を通して話をしたり、
ある日急に同級生が持ってきた、できちゃった赤ん坊を数日間預かったり。
なんだかんだで人との交流を拒まず受け入れていて、
光子のそんな人間性だけがちょっと浮世離れしていて、
行動や言動は普通っぽく描かれているのに、
現実味がないかもしれない。と思いました。
でも、彼女には特殊な事情があったから、
むしろ自分から精一杯普通っぽく見せようとしていたのかもしれない。
、、、という風にも捉えられる、奥の深いキャラでした。
まとめると、この光子という女子高生の存在は
ちょっとフィクション・ファンタジーがかっていましたが、
その点を考慮しても、一言では表せない人間関係がたくさん描かれており、
そんな人達の物語がうまく絡まり合う、
一冊の本として、まとまりのある、読むと心があったかくなる一冊でした。
2015年4月18日土曜日
131/200 『熱帯魚』吉田修一(作家)
『熱帯魚』吉田修一(作家)
発行:2003年6月 文春文庫
難易度:★★☆☆☆
感動度:★★☆☆☆
共感度:★★★☆☆
個人的評価:★★★★☆
ページ数:248ページ
【本の紹介】(裏表紙より抜粋)
大工の大輔は子連れの美女、真実と同棲し、結婚を目指すのだが、
そこに毎日熱帯魚ばかり見て過ごす引きこもり気味の義理の弟・光男までが加わることに。
不思議な共同生活のなかで、ふたりの間には微妙な温度差が生じて・・・・・・。
ひりひりする恋を描く、とびっきりクールな青春小説。
表題作の他「グリーンピース」「突風」の二篇収録。
そこに毎日熱帯魚ばかり見て過ごす引きこもり気味の義理の弟・光男までが加わることに。
不思議な共同生活のなかで、ふたりの間には微妙な温度差が生じて・・・・・・。
ひりひりする恋を描く、とびっきりクールな青春小説。
表題作の他「グリーンピース」「突風」の二篇収録。
【目次】
第一章 熱帯魚
第二章 グリーンピース
第三章 突風
【感想】
吉田修一の作品の好きなところは、その「カオス」っぷりであると思う。
短編小説に登場する人物の性格も、育ってきた環境も、皆バラバラである。
主人公のタイプが違ってくるだけで、物語の世界観も変わってくる。
「熱帯魚」の主人公は、人付き合いに対しオープンで、
細かいことは気にしないが、時折繊細な部分もあるちょっと自分勝手な大工。
「グリーンピース」は、たまに暴力的で、退廃的な一面もあるが、
それでも、心のどこかで愛とか、優しさとか、つながりとかを求めてる転職活動中の男性。
「突風」は、会社の休暇を利用して海の家でバイトをする会社員と、
その海の家で夫を支える、ものごとの限度を知らない奥さん。
それぞれの登場人物は、どこか「不完全」で、「クズっぽさ」があって、
けど、それは勧善懲悪的な「善悪」で2つに分断される価値観ではなく、
一人の人の中に善悪が共存していて、
その二つの面が時折顔を出している。そんな印象を受けました。
そんな人間描写がやけにリアルで、人間っぽさを感じつつ、
でも、「うわ、こいつ、やっぱりクズだなぁ。」って思ってしまう。
けど、そんな不完全さがどこか愛おしく、
そんな彼らのことを憎めないし、
誰にでも何かしら「クズっぽい」ところはあるし、
きっと、色んな人がいていいんだ。
って思わせてくれる。そんな物語でした。
吉田修一の作品の好きなところは、その「カオス」っぷりであると思う。
短編小説に登場する人物の性格も、育ってきた環境も、皆バラバラである。
主人公のタイプが違ってくるだけで、物語の世界観も変わってくる。
「熱帯魚」の主人公は、人付き合いに対しオープンで、
細かいことは気にしないが、時折繊細な部分もあるちょっと自分勝手な大工。
「グリーンピース」は、たまに暴力的で、退廃的な一面もあるが、
それでも、心のどこかで愛とか、優しさとか、つながりとかを求めてる転職活動中の男性。
「突風」は、会社の休暇を利用して海の家でバイトをする会社員と、
その海の家で夫を支える、ものごとの限度を知らない奥さん。
それぞれの登場人物は、どこか「不完全」で、「クズっぽさ」があって、
けど、それは勧善懲悪的な「善悪」で2つに分断される価値観ではなく、
一人の人の中に善悪が共存していて、
その二つの面が時折顔を出している。そんな印象を受けました。
そんな人間描写がやけにリアルで、人間っぽさを感じつつ、
でも、「うわ、こいつ、やっぱりクズだなぁ。」って思ってしまう。
けど、そんな不完全さがどこか愛おしく、
そんな彼らのことを憎めないし、
誰にでも何かしら「クズっぽい」ところはあるし、
きっと、色んな人がいていいんだ。
って思わせてくれる。そんな物語でした。
130/200 『つくし世代』藤本耕平(マーケッター)
『つくし世代』
藤本耕平(マーケッター)
発行:2014年12月 宝島社
難易度:★★★☆☆
資料収集度:★★★★☆
理解度:★★★★★
個人的評価:★★★★★
ページ数:238ページ
【本のテーマ】
あの商品はなぜ売れた?あの広告はなぜ成功した?
芽生えつつある新しいマインド、行動と消費の原理。
若者たちの「今」、そして「さとり」の次までが分かる。
【目次】
序論 さとっているだけじゃない今時の若者は何を考えている?
第一章 チョイスする価値観――世間の常識より「自分ものさし」
第二章 つながり願望――支え合いが当たり前じゃないからつながりたい
第三章 ケチ美学――「消費しない」ことで高まることで高まる満足感
第四章 ノット・ハングリー ――失われた三つの飢餓感
第五章 せつな主義 ――不確かな将来より今の充実
第六章 新世代の「友達」感覚 ――リムる、ファボる、クラスター分けする
第七章 なぜシェアするのか?――「はずさないコーデ」と「サプライズ」
第八章 誰もが「ぬるオタ」―ー妄想するリア充たち
第九章 コスパ至上主義――若者たちを動かす「誰トク」精神
第十章 つくし世代――自分ひとりではなく「誰かのために」
終章 若者たちはなぜ松岡修造が好きなのか
【感想】
「女子力男子」と合わせて読むことで、「ゆとり」「さとり」、そしてその先の若者について
理解を深められる本でした。
1992年というのが大きな転換期としてとりあげられていました。
①共働き家庭の割合が専業主婦家庭の割合を追い越した年
②「個性」を重視したいわゆる「ゆとり教育」に向け、学習指導要領が改訂された年
③いわゆるITネイティブとして育った子供たちが中学校に上がり始めた年
④バブルが崩壊した年
そんな背景、環境の中で育ってきた子供たちを、
これまでメディア等では「ゆとり」「さとり」と言う言葉で表現してきましたが、
その言葉だけでは表現しきれない側面があり、それが「つくし」であると述べていた。
ハングリー精神が無く、より合理的な、コスパを重視する。
等の特徴は、「さとり」と重複するところがありますが、
本書では特に「つながり欲求」が高い、というところに焦点を当てていました。
コスパや合理性を追求する反面、「つながり」を感じられるようなモノ・コトに関しては、
お金や手間を惜しまない。
そこには、そうでもしないと「つながり」を感じにくくなっている現代の人間関係が
根底に存在しているからではないか。と述べていました。
また、「フォトジェニック」という言葉が印象的で、
SNSやTwitterにあげる写真がいかに写真映えするか。
その要素を含んだイベントやモノが若者から人気を得る。
そこにも、その根本にあるのは「つながり欲求」であると述べていました。
(例:エレクトリックラン・カラーラン・フローズン生)
しかし、「つくし世代」は、「つながり」を大切にする一方で、一人の時間も大切にしたがる。
そのため、「一人カラオケ」に始まり、「一人焼肉」・「ぼっち席」などの
これまでは表面化してこなかった需要が一般化してきている。
また、「つくし世代」は「ぬるオタ」要素がある、と指摘しており、
著者の調べ(アンケート)によると、10代(206名)の8割が自分は何らかの「オタク」要素がある
と答えていた。またこの「趣味のつながり」が、これまでのカテゴリー分けの壁を乗り越えることを可能にすると述べ、「秋葉系」と「渋谷系」という、これまで別々のカテゴリー分けされていたものが、
「アキシブ系」というカテゴリーとなったり、様々なカテゴリーとオタク要素が融合し始めている。
これらの特徴を踏まえたうえで、彼ら「つくし世代」を効果的に取り込む
マーケティング戦略として、
「ブランド・価値観の押しつけ」ではなく、
「いじられ上手」な素材・話題を提供する事である。と述べていた。
従来のように大々的にテレビCMとして放送するのではなく、
話題やネタになりやすいPRや動画をSNSを通して拡散する。
そのことで、お互いにその動画をシェアしていくことで、
彼らに「いじりやすい」話題を提供しつつ商品のPRや宣伝を行う。
【感想】
若者についての本を読むと、文章化された「若者の価値観」を読んで、
「そうそう!」という共感を得られる部分と、
「え、こんなこともするの?」と、一部ついていけない、
自分より若い人たちの価値観に気付かされ、
また、「そもそも、もっと上の世代の人の目には、この価値観が新鮮なものに映っているのか。
じゃあ、上の人たちの価値観ってどんなものなんだろう??」
という3つのことを考える。
世代に関する著書はそうやって、自分の考え方や価値観、
そして、その価値観が生まれた背景について考えさせられるから、
自分を見つめ直すことができる興味深いジャンルだと思います。
2015年4月12日日曜日
129/200 『天国旅行』三浦しをん(作家)
『天国旅行』三浦しをん(作家)
発行:2010年3月 新潮文庫
難易度:★★★☆☆
感動度:★★★★☆
共感度:★★★☆☆
個人的評価:★★★★☆
ページ数:312ページ
【本の紹介】(裏表紙より抜粋)
現実に絶望し、道閉ざされたとき、人はどこを目指すのだろうか。
すべてを捨てて行き着く果てに、救いはあるのだろうか。
富士の樹海で出会った男の導き、命懸けで結ばれた相手へしたためた遺言、
前世の縁を信じる女が囚われた黒い夢、一家心中で生き残った男の決意――。
出口のない日々に閉じ込められた想いが、生と死の狭間で溶けだしていく。
全ての心に希望が灯る傑作短編集。
すべてを捨てて行き着く果てに、救いはあるのだろうか。
富士の樹海で出会った男の導き、命懸けで結ばれた相手へしたためた遺言、
前世の縁を信じる女が囚われた黒い夢、一家心中で生き残った男の決意――。
出口のない日々に閉じ込められた想いが、生と死の狭間で溶けだしていく。
全ての心に希望が灯る傑作短編集。
【目次】
第一章 森の奥
第二章 遺言
第三章 初盆の客
第四章 君は夜
第五章 炎
第六章 星くずドライブ
第六章 星くずドライブ
第七章 SINK
解説 角田光代
解説 角田光代
【感想】
「心中」をテーマに集めた短編集だけに、ちょっと重かった。
特に印象に残ったのは、「森の奥」、「君は夜」、「炎」、「星くずドライブ」、「SINK」
ほとんどや笑
「遺言」と「初盆の客」は登場人物の年齢がちょっと高い感じだった。
「君は夜」、「星くずドライブ」は、ちょっとファンタジー要素があって面白かった。
三浦しをんさんの短編小説の特徴は、
話ごとに作風・雰囲気が変わること。
文章表現等ではなく、登場人物の背景や、物語構成や世界観が違う。
そして、解説:角田光代さんが指摘した、
「登場人物同士の関係性が単純なものではない」という表現にすごく共感しました。
夫婦・恋人・友人。等の言葉で限定できない関係性がある。
人と人の数だけ、その関係性がある。
共有する思いや、経験によって、不思議な、それでいて強力な絆が生まれる。
そんな言葉にはできない関係性をうまく描いているところがとても好きです。
「心中」をテーマに集めた短編集だけに、ちょっと重かった。
特に印象に残ったのは、「森の奥」、「君は夜」、「炎」、「星くずドライブ」、「SINK」
ほとんどや笑
「遺言」と「初盆の客」は登場人物の年齢がちょっと高い感じだった。
「君は夜」、「星くずドライブ」は、ちょっとファンタジー要素があって面白かった。
三浦しをんさんの短編小説の特徴は、
話ごとに作風・雰囲気が変わること。
文章表現等ではなく、登場人物の背景や、物語構成や世界観が違う。
そして、解説:角田光代さんが指摘した、
「登場人物同士の関係性が単純なものではない」という表現にすごく共感しました。
夫婦・恋人・友人。等の言葉で限定できない関係性がある。
人と人の数だけ、その関係性がある。
共有する思いや、経験によって、不思議な、それでいて強力な絆が生まれる。
そんな言葉にはできない関係性をうまく描いているところがとても好きです。
128/200 『日曜日たち』吉田修一(作家)
『日曜日たち』吉田修一(作家)
発行:2003年6月 講談社文庫
難易度:★★☆☆☆
感動度:★★★★☆
共感度:★★★★☆
個人的評価:★★★★☆
ページ数:207ページ
【本の紹介】(裏表紙より抜粋)
ありふれた「日曜日」。だが、5人の若者にとっては、特別な日曜日だった。
都会の喧騒と鬱屈とした毎日の中で、
疲れながら、もがきながらも生きていく男女の姿を描いた5つのストーリー。
そしてそれぞれの過去をつなぐ不思議な小学生の兄弟。
ふたりに秘められた真実とは。絡み合い交錯しあう、連作短篇集の傑作。
都会の喧騒と鬱屈とした毎日の中で、
疲れながら、もがきながらも生きていく男女の姿を描いた5つのストーリー。
そしてそれぞれの過去をつなぐ不思議な小学生の兄弟。
ふたりに秘められた真実とは。絡み合い交錯しあう、連作短篇集の傑作。
【目次】
第一章 日曜日のエレベーター
第二章 日曜日の被害者
第三章 日曜日の新郎たち
第四章 日曜日の運勢
第五章 日曜日たち
解説 重松清
【感想】
様々な若者の日常が切り取られて描かれおり、
そのほんの一部分が幼い兄弟ふたりによって、
重なって繋がれて紡がれている。そんな物語だった。
ていうか、本の表紙がかっこよすぎる。。。
医者の卵の女性のヒモとなっている男性。
友人が空き巣被害に遭ったという電話をして来て、怖くなり、
過去のことを思い出しながら真夜中に彼氏のもとへ向かう女性。
結婚も意識していた彼女を亡くした男性と、
知人の息子の結婚式の為に九州からやって来た、妻を亡くして数年の父親。
好きになった女性の運命に翻弄され、各地を転々と移動し生活する男性。
彼氏のDVに悩みながら、自立センターに駆け込む女性。
そんなそれぞれのストーリーの中に、九州から母親を探してやってきたふたりの少年が、
さりげなく登場する。さりげなく、というより、身寄りのないふたりの少年を
それぞれの登場人物が心配し、声をかけることで、ほんの少しだけ、関わっていく。
こうやって、ネタバレのあらすじを書いてみただけで、
やっぱり、吉田修一すごいなぁ。と思ってしまった。
それぞれ考え方も、立場もそれぞれの若者の日常を上手く描いていて、
その中にふたりの少年の物語を挟むことで、
複数の物語が平行的に存在していることを自然と感じさせる。
しかも、吉田修一さん、1968年生まれなのに、
なんでこんなに若者を描くのが自然で、うまいんだろう。
吉田修一さんの本は、「パレード」といい、この本といい、
何度も読みたくなる本です。読めば読むほど味が出てくる。という感じです。
様々な若者の日常が切り取られて描かれおり、
そのほんの一部分が幼い兄弟ふたりによって、
重なって繋がれて紡がれている。そんな物語だった。
ていうか、本の表紙がかっこよすぎる。。。
医者の卵の女性のヒモとなっている男性。
友人が空き巣被害に遭ったという電話をして来て、怖くなり、
過去のことを思い出しながら真夜中に彼氏のもとへ向かう女性。
結婚も意識していた彼女を亡くした男性と、
知人の息子の結婚式の為に九州からやって来た、妻を亡くして数年の父親。
好きになった女性の運命に翻弄され、各地を転々と移動し生活する男性。
彼氏のDVに悩みながら、自立センターに駆け込む女性。
そんなそれぞれのストーリーの中に、九州から母親を探してやってきたふたりの少年が、
さりげなく登場する。さりげなく、というより、身寄りのないふたりの少年を
それぞれの登場人物が心配し、声をかけることで、ほんの少しだけ、関わっていく。
こうやって、ネタバレのあらすじを書いてみただけで、
やっぱり、吉田修一すごいなぁ。と思ってしまった。
それぞれ考え方も、立場もそれぞれの若者の日常を上手く描いていて、
その中にふたりの少年の物語を挟むことで、
複数の物語が平行的に存在していることを自然と感じさせる。
しかも、吉田修一さん、1968年生まれなのに、
なんでこんなに若者を描くのが自然で、うまいんだろう。
吉田修一さんの本は、「パレード」といい、この本といい、
何度も読みたくなる本です。読めば読むほど味が出てくる。という感じです。
127/200 『格闘する者に〇』三浦しをん(作家)
『格闘する者に○』
三浦しをん(作家)
発行:2005年3月 新潮社
難易度:★★☆☆☆
感動度:★★★☆☆
共感度:★★★☆☆
個人的評価:★★★☆☆
ページ数:279ページ
【本の紹介】(裏表紙より抜粋)
これからどうやって生きていこう?
マイペースに過ごす女子大生可南子にしのびよる苛酷な就職戦線。
漫画大好き→漫画雑誌の編集者になれたら・・・・・。
いざ、活動を始めてみると、思いもよらぬ世間の荒波が次々と襲いかかってくる。
連戦連敗、いまだ内定ゼロ。呑気な友人たち、ワケありの家族、
年の離れた書道家との恋。格闘する青春の日々を妄想力全開で描く、
才気あふれる小説デビュー作。
マイペースに過ごす女子大生可南子にしのびよる苛酷な就職戦線。
漫画大好き→漫画雑誌の編集者になれたら・・・・・。
いざ、活動を始めてみると、思いもよらぬ世間の荒波が次々と襲いかかってくる。
連戦連敗、いまだ内定ゼロ。呑気な友人たち、ワケありの家族、
年の離れた書道家との恋。格闘する青春の日々を妄想力全開で描く、
才気あふれる小説デビュー作。
【目次】
第一章 志望
第二章 応募
第三章 協議
第四章 筆記
第五章 面接
第六章 進路
第七章 合否
解説 重松清
【感想】
三浦しをんのデビュー作品。
当初の三浦しをんさんの作風には女性作家っぽさがある物語構成・文章構成だと感じました。
しかし、登場人物のキャラの濃さ、人間味はこの頃から健在していて、
登場人物それぞれに立場があり、悩みがあり、夢がある、と感じました。
ネタバレになりますが、
最終的に就職が決まらないまま物語が終わってしまう、というところも、
ありがちなハッピーエンドで終わらせてしまわないところがいいと思いました。
結果的に見るとうまくいっていない。かもしれませんが、
それでも主人公の可南子が、「自分を信じて生きる」と言っていたり、
中国に旅立つ、恋人である書道家のおじいさんのことを愛し続け、
別れを心から惜しむ。など、
可南子が自分の不甲斐なさを実感しながらも、前向きで、強く生きている姿が
たくましくて印象的でした。
また、物語の中で、周りの登場人物に起こる出来事やそれに伴う心情の動きは、
読んでいてついていきやすいものでした。
また、就職活動の流れについても、
出版社という世界の理想と現実がシニカルに描かれていて
可南子の毒舌による痛烈な批判が痛快でした。
また、就職活動の流れについても、
出版社という世界の理想と現実がシニカルに描かれていて
可南子の毒舌による痛烈な批判が痛快でした。
解説の重松清さんのコメントも印象的で、
作中に主人公加奈子が、『海流の中の島々byヘミングウェイ』の感想を、
「人の孤独について書かれた本」である、と述べているように、
この本も同様に「人の孤独について書かれた本」である。と述べていました。
それがどういうことか、最初分からなかったのですが、
三浦しをんさんの作品に出てくる登場人物は、
それぞれ特徴的な性格や、嗜好や悩みを抱えていて、
それぞれの悩みに向き合いながら生きていこうとしている姿が、
「孤独と向き合う」ということになるのだと思います。
まとめると、人間味あふれる三浦しをんさんの作風の原点を感じられる作品でした。
2015年1月24日土曜日
126/200 『女子力男子』原田曜平(博報堂ブランドデザイン)
『女子力男子』
原田曜平(博報堂ブランドデザイン)
発行:2014年12月 宝島社
難易度:★★★☆☆
資料収集度:★★★★☆
理解度:★★★★★
個人的評価:★★★★★
ページ数:238ページ
【本のテーマ】
新消費者『女子力男子』の思考を徹底調査!
・「速水もこみち」「羽生結弦」「織田信成」も女子力男子?
・信用できる情報源は「女友達」と「お母さん」?
・硬派もマッチョもダサい?!若者のカッコイイ意識とは?
・女子力男子に響く 新商品・サービスのアイデアの芽
【目次】
序論 「男子は女子より元気がない」説は本当か
第一章 違和感だらけ?女子力男子の実態
第二章 「若者の消費離れ」、読み解くカギは女子力男子にあり
第三章 女子力男子はなぜ急増したのか
第四章 日本で世界で男子の女子化はとまらない
第五章 リアル女子力男子81人大解剖
第六章 女子力男子に響く新商品・サービスのアイデアの芽
第七章 リアルな思考丸わかり!女子力男子座談会
【感想】
「マイルド・ヤンキー」、「さとり世代」などの表現を生み出してきた原田氏の新刊。
かつての「男性像」というものが変わりつつあり、
「男性の女性化」というと、なよなよした感じをイメージされがちですが、
そうではなく、前向きな意味として、「女子力」を持つ男性が増えている。
という感じの主張が伝わってきました。
女子になりたいわけではない、あくまで男子として女子のような
「美しさ」や「優しさ」に憧れる。
かつての「男らしさ」に、「女らしさ」を取り入れた。
そんな新しい「男性像」を感じ取ることができました。
しかし、「女子力男子」があくまで「男子」なのであって、
「男性」というある一定の年齢以上の男性像を意味しないという点では、
「女子力男子」が数年後、さらに大人になった際に、
どういう言葉で、どういう風にカテゴライズされていくのか、ということを考えました。
女子力男子の中でさらに四つの領域にカテゴライズされていたのも、
とても興味深かったです。その中のいくつの「女子力男子」が、
さらに歳を重ねても同じ生き方をキープできるのでしょうか。
年上の世代の人に是非読んでもらいたいです。
そして、数十年後、様々なかつての「女子力男子」が、生きて行きやすい
世の中であることを願っています。
125/200 『となり町戦争』三崎亜記(作家)
『となり町戦争』三崎亜記(作家)
発行:2006年12月 集英社文庫
難易度:★☆☆☆☆
感動度:★★☆☆☆
共感度:★★☆☆☆
個人的評価:★★☆☆☆
ページ数:272ページ
【本の紹介】(裏表紙より抜粋)
ある日、突然にとなり町との戦争が始まった。だが、銃声も聞こえず、
目に見える流血もなく、人々は平穏な日常を送っていた。
それでも、町の広報誌に発表される戦死者数は静かに増え続ける。
そんな戦争に現実感を抱けずにいた「僕」に、町役場から一通の任命書が届いた・・・・・・。
見えない戦争を描き、第17回小説すばる新人賞を受賞した傑作。
文庫版だけの特別書下ろしサイドストーリーを収録。
目に見える流血もなく、人々は平穏な日常を送っていた。
それでも、町の広報誌に発表される戦死者数は静かに増え続ける。
そんな戦争に現実感を抱けずにいた「僕」に、町役場から一通の任命書が届いた・・・・・・。
見えない戦争を描き、第17回小説すばる新人賞を受賞した傑作。
文庫版だけの特別書下ろしサイドストーリーを収録。
【目次】
第一章 となり町との戦争がはじまる
第二章 偵察業務
第三章 分室での業務
第四章 査察
第五章 戦争の終わり
終章
別章
【感想】
すっきりしない本でした。
まず、読み初めに、このストーリーの舞台であったり、時代設定であったり、
そういう背景がよく分からないままに進んでいきました。
そしてストーリーが進んでいくと、主人公がその戦争に少しずつ巻き込まれていく
様子が描かれているのですが、
となりまちとの戦争が密かに行われているとはいえ、
戦死者数も出ているのに、銃声ひとつ聞こえないって、
どういう戦い方してるんだ?
っていう素朴な疑問が出てきました。
主人公の付き人みたいな感じの人が出てきたり、
主人公を危機から救うために人が死んだり。
というか、そもそもなんで主人公が諜報員?的な奴に選ばれたのか、
他にも選ばれた人がいなかったのか?とか、
なんだかすごく主人公を中心にストーリーが回ってる感があって、
色んな点において、ちょっと中二病感が漂う物語でした。
けど、実感がわかないところで戦争が起こっている、ということや、
自分が無関係だと思っていることが、戦争に関係しているかもしれない、
というテーマが描かれているのは伝わってきました。
所々に役所に提出する戦争関連の書類がそのまま書かれていて、
戦争という非現実的なものと、役所の書類という味気のない現実的なものが
まじりあっているというのが、不思議な感じでした。
第一章 となり町との戦争がはじまる
第二章 偵察業務
第三章 分室での業務
第四章 査察
第五章 戦争の終わり
終章
別章
【感想】
すっきりしない本でした。
まず、読み初めに、このストーリーの舞台であったり、時代設定であったり、
そういう背景がよく分からないままに進んでいきました。
そしてストーリーが進んでいくと、主人公がその戦争に少しずつ巻き込まれていく
様子が描かれているのですが、
となりまちとの戦争が密かに行われているとはいえ、
戦死者数も出ているのに、銃声ひとつ聞こえないって、
どういう戦い方してるんだ?
っていう素朴な疑問が出てきました。
主人公の付き人みたいな感じの人が出てきたり、
主人公を危機から救うために人が死んだり。
というか、そもそもなんで主人公が諜報員?的な奴に選ばれたのか、
他にも選ばれた人がいなかったのか?とか、
なんだかすごく主人公を中心にストーリーが回ってる感があって、
色んな点において、ちょっと中二病感が漂う物語でした。
けど、実感がわかないところで戦争が起こっている、ということや、
自分が無関係だと思っていることが、戦争に関係しているかもしれない、
というテーマが描かれているのは伝わってきました。
所々に役所に提出する戦争関連の書類がそのまま書かれていて、
戦争という非現実的なものと、役所の書類という味気のない現実的なものが
まじりあっているというのが、不思議な感じでした。
2015年1月2日金曜日
124/200 『未来いそっぷ』星新一(作家)
『未来いそっぷ』星新一(作家)
発行:2001年9月 新潮文庫
難易度:★☆☆☆☆
感動度:★★★★☆
共感度:★★★☆☆
個人的評価:★★★★☆
ページ数:272ページ
【本の紹介】(表紙帯より抜粋)
<アリとキリギリス><ウサギとカメ>など、誰でもごぞんじの寓話の世界。
語り継がれてきた寓話も、星新一の手にかかると、ビックリ驚く大革命。
時代が変われば話も変わるとはいえ、
古典的な物語をこんなふうに改作してしまっていいものかどうか、
ちょっぴり気になりますが――。
表題作など、愉しい笑いと痛烈な風刺で別世界へご案内するショート・ショート33篇。
語り継がれてきた寓話も、星新一の手にかかると、ビックリ驚く大革命。
時代が変われば話も変わるとはいえ、
古典的な物語をこんなふうに改作してしまっていいものかどうか、
ちょっぴり気になりますが――。
表題作など、愉しい笑いと痛烈な風刺で別世界へご案内するショート・ショート33篇。
【目次】
いそっぷ村の繁栄
シンデレラ姫の幸福な人生、表と裏、頭の大きなロボット、
底なしの沼、ある商品、無罪の薬、新しがりや、
余暇の芸術、おカバさま、利口なオウム、怪しい症状、いい上役、
電話連絡、やさしい人柄、つなわたり、オフィスの妖精、健康な犬、
熱中、別れの夢、少年と両親、ねらった金庫、価値検査器、企業内の聖人、
夢の時代、ある夜の物語、旅行の準備、どっちにしても、不在の日、
奇病、ふしぎなネコ、やはり、たそがれ
【感想】
いそっぷ村の繁栄では、有名な寓話に新たな解釈を加えていた。
分かりやすい文章で、短い文章でありながら、
どの短編も奇想天外なストーリーであり、星さんの才能を感じました。
印象的な中でも特に印象的だった話が2つ。
少年と両親
反抗的な少年と、言いなりになる両親、
よくある反抗期のシーンと思いきや、
最後の真実には驚きました。
両親が子供を甘やかしていた理由もすっきりしました。
不在の日
この話は短編小説の中でも異色を放っていました。
何しろ「作者が不在の小説」という世界観。
ショートショートの中では少し長く、
どこに着地するのかと不安定な感じがした後の最後のオチは、
「なるほど」と思わせられる哲学的なものでした。
今回「未来いそっぷ」ということもあり、未来的なSFが多かったです。
、、、星さんの作品は毎回割とSFが多かった気もしますが。
星新一さんのショートショートの魅力は、
おっ!と思わせられる「オチ」があることと、
随所に哲学的な教訓をさりげなく取り入れているところだと思います。
いそっぷ村の繁栄
シンデレラ姫の幸福な人生、表と裏、頭の大きなロボット、
底なしの沼、ある商品、無罪の薬、新しがりや、
余暇の芸術、おカバさま、利口なオウム、怪しい症状、いい上役、
電話連絡、やさしい人柄、つなわたり、オフィスの妖精、健康な犬、
熱中、別れの夢、少年と両親、ねらった金庫、価値検査器、企業内の聖人、
夢の時代、ある夜の物語、旅行の準備、どっちにしても、不在の日、
奇病、ふしぎなネコ、やはり、たそがれ
【感想】
いそっぷ村の繁栄では、有名な寓話に新たな解釈を加えていた。
分かりやすい文章で、短い文章でありながら、
どの短編も奇想天外なストーリーであり、星さんの才能を感じました。
印象的な中でも特に印象的だった話が2つ。
少年と両親
反抗的な少年と、言いなりになる両親、
よくある反抗期のシーンと思いきや、
最後の真実には驚きました。
両親が子供を甘やかしていた理由もすっきりしました。
不在の日
この話は短編小説の中でも異色を放っていました。
何しろ「作者が不在の小説」という世界観。
ショートショートの中では少し長く、
どこに着地するのかと不安定な感じがした後の最後のオチは、
「なるほど」と思わせられる哲学的なものでした。
今回「未来いそっぷ」ということもあり、未来的なSFが多かったです。
、、、星さんの作品は毎回割とSFが多かった気もしますが。
星新一さんのショートショートの魅力は、
おっ!と思わせられる「オチ」があることと、
随所に哲学的な教訓をさりげなく取り入れているところだと思います。
123/200 『男女1100人の「キズナ系親孝行、始めました。」』牛窪恵(マーケティングライター)
『男女1100人の「キズナ系親孝行、始めました。」』
牛窪恵(マーケティングライター)
発行:2012年8月 河出書房新社
難易度:★★★☆☆
資料収集度:★★★☆☆
理解度:★★★☆☆
個人的評価:★★★★☆
ページ数:228ページ
【本のテーマ】(Amazonの商品紹介文より抜粋)
親孝行に“いつか"はない!
震災後、そう気づいた20~40代の男女たち。
本書では、彼ら1100人への大規模なアンケート調査とインタビューを通じ、
平成のいまに相応しい「キズナ系親孝行」のヒント100件以上を、
親子の感動ストーリーとともに紹介します。
お金や時間がなくてもすぐ実践できる、平成親子の“つながり"術が満載。
二世代、三世代向けビジネスを模索する、企業担当者も必見です。
【目次】
第一章 親孝行の理想と現実
第二章 趣味と親孝行
第三章 旅と親孝行
第四章 暮らしと親孝行
第五章 同居と親孝行
第六章 就活と親孝行
【感想】
かつての「結婚して子供を産み、家を買ってあげる」というような親孝行の理想像は、
もはや過去の物であって、団塊世代は子供達に自由に生きてほしいと願っている人が
以前よりも増えている。それよりも、親孝行のハードルを下げ、
親子間のキズナを実感できるような、
小さな日々の中での親孝行の方が現実的であり、
その小さな親孝行の例を実際の例を基にレポートしていた。
社会人になってからも「実家にいること」は、
物理的に自立していない、たまに甘えてしまうという点で「親不孝である」面がある一方、
親の手伝いをしたり、親に関心を持つことができるという点では「親孝行である」面がある。
しかし、「甘える」ことで、親の親心を満足させてあげている、
というちょっと複雑な親孝行も存在していると報告していた。
(子どものちょっとした外出でも車で送りたがる親と、それに付き合う子どものエピソード等)
また、親の趣味に関するプレゼントは、
親に関心があるということを伝え、また、第二の人生的な趣味を応援している、
ということが伝わりやすいので、親孝行としては適している。
しかし、親の方が詳しいことがあり、失敗すると「もったいない」と言われるリスクもある。
親に贈る旅行に関しては、バリアフリーであることが重要だと述べていた。
あとは、母娘二人旅行が増えてきていること、新婚旅行に親を連れて行くケースもあるなどの
エピソードが語られていた。
親孝行阻害要素としての「三大ない」
「お金がない」「時間がない」「ぎこちない」
その3つをいかにクリアし、自然な形で親孝行をするかがポイントである。
家のリフォーム等に関しても、「親の老い」を理由にするのは嫌がられるケースが多いので、
ペットや兄弟などの別の理由を用意したほうが親に受け入れてもらいやすい。
終活に関しても、「エンディングノート」というものが話題にあがっていたが、
もう少し説明がほしいところだった。
牛窪さんの本は、さらっと読めてしまい、インタビューをまとめたものなので、
データとして記憶に残るというよりも、こういうケースもあるんだなぁ。という程度に留まる。
けれども、読み終わってからも、「あれってどういうものなんだろう」って好奇心をくすぐられ、
そこから先は自分で調べていく、みたいな感じで、
知的好奇心のきっかけをくれる、情報をくれる著者だと思います。
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