2015年5月18日月曜日

133/200 『舟を編む』三浦しをん(作家)


読破っ!!
『舟を編む』三浦しをん(作家)
発行:2003年6月 文春文庫
難易度:★★★
感動度:★★
共感度:★★
個人的評価:★★★★
ページ数:347ページ



【本の紹介】(amazonより抜粋)
出版社の営業部員・馬締光也は、言葉への鋭いセンスを買われ、辞書編集部に引き抜かれた。
新しい辞書『大渡海』の完成に向け、彼と編集部の面々の長い長い旅が始まる。
定年間近のベテラン編集者。日本語研究に人生を捧げる老学者。
辞書作りに情熱を持ち始める同僚たち。そして馬締がついに出会った運命の女性。
不器用な人々の思いが胸を打つ本屋大賞受賞作!

【目次】
舟を編む
解説 平木靖成
馬締の恋文 全文公開

【感想】
三浦しをんの話題の本を読んでみました。
『大渡海』という一つの辞書を完成させるまでの、
編集者たちの熱い熱いお話。プラス、恋物語。

感想として、好きだった点と微妙だった点を述べます。
前置きしておきますが、いち三浦しをんファンとしての、期待を含めた個人的感想です。
どうかお気を悪くされませんように。

まず、微妙だった点。さらっと書きます。
主人公・馬締と、ヒロイン・家具矢の出会いが、アパートの家主の親戚であり、
出会いからお付き合いするまでが、あまりにもスムーズにうまくいき過ぎている点。
家具矢の後半でのイメージは、女性でありながらも寡黙で一徹な寿司職人、
という感じだったのに、そこからは繋がりにくいくらい、
軽く馬締を遊園地にデートへ誘う。という展開。
もちろん、もしかしたら、彼女なりに緊張して、タイミングを見計らって
デートに誘ったのかもしれないですが、その辺の描写がもうちょっと欲しかった。
(その後の恋文のくだりはおもしろかったですが。)
ですが、この物語は恋物語メインではないので、
辞書完成までのお話が熱くて良かったので、全体としてはプラスでした。

そして、好きだった点。
編集者の一人の西岡という登場人物の魅力。
新しく作る辞書、『大渡海』の編集に関わったメンバーの中で、
唯一文学的センスが一般人並の社員であり、
編纂の途中で部署移動があり、広告部へと移動してしまう。
周りの同僚の「辞書」や「言葉」に対する情熱の圧倒的な差を感じながらも、
表にはあまり出さないけれど、
そんな彼らを心の中で尊敬し、熱中できるものがあって羨ましい、と思い、
自分がいなくなってからも、彼らのサポートができるように、
人間関係が苦手な馬締のために、
社外交渉対策のファイルを作ったり、
馬締の人間性を後から来た人に知ってもらおうと、
彼が家具矢に対して書いた恋文のコピーをこっそり隠し、
後から来た社員に見てもらえるように仕向けたりした。

そんな彼なりの仕事に対する情熱が、かっこよかった。
この物語の主人公である馬締は、「天才」的な要素がある
ちょっと変わった人であるため、ちょっと感情移入がしにくい。
そんな中、「凡人」っぽい西岡という登場人物には感情移入しやすく、
また、そんな彼の奮闘っぷりが、個人的にすごくカッコいいと思いました。
そして、彼の彼女との関係性や会話も好きでした。

そして、物語の流れとしても、
馬締が『大渡海』編纂に関わり始めるところから、
後半で視点が岸部みどりという新しく配属された社員に変わる。
そこで、部署移動していなくなった西岡の奮闘の後に出会う。
そういう流れが、辞書編纂という数十年という歴史を感じさせ、
読み終わった時には、自分まで不思議な達成感を味わえました。

まとめると、辞書編纂という、身近な存在でありながら、
これまで想像もしたことのなかった世界を想像し、
こんな感じに、馬締のような「天才」型の人間を、
「より凡人」型のたくさんの人達が支えてできたのだろうか。
と想像させてくれる本でした。

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