2015年7月25日土曜日

139/200 『愛着障害~子ども時代を引きずる人々~』岡田尊司(精神科医・作家)


読破っ!!
『愛着障害』岡田尊司(精神科医・作家)
発行:2011年9月 光文社新書

難易度:★
資料収集度:★
理解度:★
個人的評価:★★
ページ数:313ページ


【本のテーマ】(表紙帯より抜粋)
従来、愛着の問題は、子どもの問題、それも特殊で悲惨な家庭環境で育った子どもの問題として
扱われることが多かった。しかし、近年は、一般の子どもにも当てはまるだけでなく、
大人にも広く見られる問題だと考えられるようになっている。
しかも、今日、社会問題となっているさまざまな困難や障害に関わっていることが明らかとなってきたのである。
また昨今、発達障害ということが盛んに言われ、それが子どもだけでなく、
大人にも少なくないことが知られるようになっているが、この発達の問題の背景には、
実は、かなりの割合で愛着の問題が関係しているのである。
実際、愛着障害が、発達障害として診断されているケースも多い。

【目次】
第一章 愛着障害と愛着スタイル
第二章 愛着障害が生まれる要因と背景
第三章 愛着障害の特性と病理
第四章 愛着スタイルを見分ける
第五章 愛着スタイルと対人関係、仕事、愛情
 1.安定型愛着スタイル
 2.回避型愛着スタイル
 3.不安型愛着スタイル
 4.恐れ・回避型愛着スタイル
第六章 愛着障害の克服
 1.なぜ従来型の治療は効果がないのか
 2.いかに克服していくか
 (1)安全基地となる存在
 (2)愛着の傷を修復する
 (3)役割と責任を持つ

【感想】
近年話題になりつつある発達障害の根本的な原因を親との人間関係による
愛着障害にあると述べたチャレンジングかつ、斬新な本でした。

テーマが重い本で、読み進めていくのが辛かったですが、
自分の生まれ育ってきた環境や過去について振り返られり、向き合える本でした。

本書の前半では著名人が抱えていた愛着障害について述べており、
夏目漱石、太宰治をはじめとした作家から、ビルゲイツ、オバマまで、
さまざまな著名人の家庭環境とそれがその人物に与えた影響、
彼らの心の闇について書かれていました。
そういう面ばかりの話を読むと、こんなに心に闇を抱えている人が、
どうしてこんなに表舞台に立ったり、作家の場合作品が教科書にのるようにまでに
なったのかな、と疑問に思うくらいでした。

それを、これだけの著名人「だからこそ」の過去と愛着障害と捉えるのか、
これだけの著名人「でも」辛い過去と愛着障害がある、と捉えるのかで後半の内容の
入ってきやすさが変わってくると思うのですが、
自分は後者、著名人「でも」愛着障害がある、と捉え、
一般人でも程度の差はあれ、似たような事例が存在している。と考えました。

克服方法に関して、
自分が親に対して不満を抱いたり、怒りの感情を抱いていることをまずは受け入れ、
しっかりとそのことに向き合うことが大事だと述べていた。
その上で、親が自分にしてくれなかったこと、与えてくれなかったものを、
外の世界に求め、「安全地帯」となるような心の拠り所や他者を自分で見つけ出し、
その「安全地帯」によって、心に空いた穴を埋め、
親がくれなかったもの、発達しきれなかった部分の埋め合わせをし、
最終的には親のことを許す。
親以外の人間関係の中で、ギブアンドテイクでお互いに埋め合わせをしていく。
そのような過程が愛着障害、発達障害を克服する方法だと理解しました。

自分の過去を振り返り、親がしてくれなかったこと、自分の発達不足なところ、
そして、自分にとっての「安全地帯」となってくれた存在のこと、
色々考えました。
そして、「安全地帯」となってくれた存在に、心から感謝したいと思いました。
そして、親に対するわだかまりや不満についても見つめ直すことができ、
その感情を否定するでも、見て見ないふりするでもなく、
きちんと向き合った上で、許すことができるようになりたい。と思いました。

小さい頃に親と過ごした時間に対する「愛着」が、
その後のすべての「愛情」に関する感情に関わっていく過程を知ることができ、
愛情のメカニズムや由来について考えることができました。
そう考えると、家庭環境が違えば「愛着」の概念も変わり、
そうすると、「愛情」に対する概念や価値観も人それぞれ、様々になるのだということを、
再度認識させられました。

心身の健康に関わる問題の根本は生活習慣や思考習慣であり、
その生活習慣や思考習慣は親から学び、身に付いたものであるとすると、
この本は健康の根本に関わるテーマを扱っていると思いました。
教育の大切さと同時に教育の不完全さを感じることができる本でした。

ただ一つ気になるのは、本の表紙。
重版に伴って表紙を作ったようですが、「子供をだっこしてください。」
なんて、そんな簡単な話ではありません。
子供を愛することが必ずしも良い方向に繋がるとは限りません。
子供との関係が出来上がった後、図らずしも親との離別があった場合には
子供に残す心の傷が深くなってしまう恐れがあります。
この本の一番のテーマは「子供を愛すること」ではなく、
「親の不完全さと向き合い克服し、許すこと」だと思うので、
もうちょっとそのテーマにあった表紙の絵とか、キャッチコピーにして欲しかったです。

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