2015年12月27日日曜日

145/200『かもめのジョナサン』リチャード・バック(作家)


読破っ!!
『かもめのジョナサン』(作家)
発行:2014年6月 新潮社文庫

難易度:★☆☆
資料収集度:★☆☆☆
理解度:★
個人的評価:★★☆☆
ページ数:236ページ



【本のテーマ】(裏紙帯より抜粋)
「飛ぶ歓び」「生きる歓び」を追い求め、自分の限界を突破しようとした、
かもめのジョナサン。群れから追放された彼は、精神世界の重要さに気づき、
見出した真実を仲間に伝える。しかし、ジョナサンが姿を消したあと、
残された弟子のかもめたちは、彼の神格化を始め、教えは形骸化していく・・・・・・。
新たに加えられた奇跡の最終章。
帰ってきた伝説のかもめが自由への扉を開き、あなたを変える!

【目次】
Part one
Part two
Part three
Part four

【感想】
ベースは成長物語。少年ジャンプ系に通じるものを感じた。
「より美しく飛ぶ」という信念に取り憑かれたかもめのジョナサンが、
群れから追放され、チャンやサリヴァンに出会い、より高みを目指し飛行訓練を行う。
そして、かつてのジョナサンのような
がむしゃらに飛ぶことに執着しているフレッチャーに飛行術を教える。
そのフレッチャーがまたほかのかもめ達に飛行術を教える頃には、
ジョナサンの存在は神格化されてしまう。

読んでから感想書かずに放置したため、
あらすじ程度のことしかかけない。。。涙

しかし、この本は二回目の読了なので、
三回目に期待。

143/200『クール・ジャパン!?~~外国人が見たニッポン』鴻上尚史(作家・演出家)


読破っ!!
『クール・ジャパン!?』鴻上尚史(作家・演出家)
発行:2015年4月 講談社現代新書

難易度:★☆☆
資料収集度:★
理解度:★
個人的評価:★★
ページ数:236ページ



【本のテーマ】(表紙帯より抜粋)
なぜ日本人は職場のデスクに家族の写真を置いていないのか?
日本人は写真が大好きなのです。なのに、どうして、世界では主流になっている
「自分のデスクに家族の写真を置いていないのか」と、多くの外国人は不思議に思うのです。
欧米はもちろんですが、アジアでも、自分の職場の机の上に、
妻や子供、愛犬の写真を置くのが普通です。なのに、どうして日本人はしないの?と言うのです。
家族の写真を置いている理由は、「自分の個人スペースなんだから、
そこを快適な空間にすることは当たり前だろう」とアメリカ人が説明したことにつきます。
全員がうなづきました。(中略)カナダ人が言いました。「上司に怒られてストレスがたまっても、
机の上の妻の写真を見たらホッとする。ストレスが減る。だから、置いているんだよ。」と。
僕は訊きました。「妻の写真を見て、ホッとするの?妻の写真見て、ストレスが増えることはないの?」
番組に参加した外国人は「こいつはなにを言っているんだ」という冷たい目で僕を見ました。
ニードルカーペット、いえ、針のムシロに座っているようで、いたたまれませんでした。

【目次】

【感想】
感想書かないまま放置してしまい、あまり覚えてないため、
二回目読めたら読みます。(読まない予感(・・;))

2015年12月26日土曜日

144/200『ブレーキ』山田悠介(作家)


読破っ!!
『ブレーキ』山田悠介(作家)
発行:2015年6月 角川文庫

難易度:★☆☆☆☆
資料収集度:★☆☆
理解度:★
個人的評価:★★☆☆☆
ページ数:291ページ




【本のテーマ】(表紙帯より抜粋)
ビンゴに己の運命を託す死刑囚。命を狩るサッカーで大金を稼ぐ男。
”とある役割”を決めるためにトランプに挑む家族。
観客の命を守るために優勝しなければいけないゴルファー。
そして、愛する者の処刑を防ぐためにブレーキを踏まずに死のコースを駆ける青年。
生き残りたければ勝つしかない――これは、自らの生命を賭けて繰り広げられる死の遊戯。
山田悠介の原点ともいえる5つのサバイバルゲームが、装いも新たに再文庫化!


【目次】
ビンゴ
サッカー
ババ抜き
ゴルフ
ブレーキ

【感想】
読みやすい短編。軽い読み物だった。
ハラハラ系の短編と言えば、乙一が思い浮かびますが、

山田悠介の短編はまた違った色があります。
文章構成力や物語の運び、伏線の回収は乙一の方が好きです。
山田悠介はそれらの点では叶いませんが、
「状況」の設定の仕方がユニークだと思います。
普段誰もが遊んだり見たことがあるような遊びや身近なモノが、
命を賭けた戦いとなる。
日常から延長されたハラハラ物語、
しかし、この本はハラハラ加減が自分には物足りませんでした。
状況設定はユニークなんだけど、もうちょっとハラハラさせてほしかったなぁ。
乙一の場合は、状況設定がもっとさりげない感じがする。
いつの間にか物語の中に引き込まれて、読み終わったころに、
「あぁ、この物語はこういう状況設定だったな」って思いだせる感じ。
山田悠介の方が物語の状況設定が露骨で。
そこが多分物足りなかった原因なのかな、と思う。
あと、文庫本なのに、字の大きさを大きくして叫んでる声を表現するとか、
反則やろ。(悪い意味で)

乙一よりも対象年齢が低いと感じました。
中学生~高校初期くらいまでで楽しめる作品だと思いました。

2015年12月19日土曜日

(第二篇)”秒回“和”已读“的弊害

科学技术的日新月异的进步给我们带来很多变化。
最大的变化之一就是智能手机的普及。
日本二十代的年轻人百分之八十有智能手机,
用SNS的三十代已经超过百分之八十。
中国情况也差不多。在中国替LINE用微信和QQ,替facebook用人人网等等。
那些变化给我们什么样的影响呢?

第一,表面上的变化,联络方法变化了。
以前我们只能打个家庭电话才能沟通朋友。
有时候以为给朋友打电话却接电话的是他家人,就感觉有点尴尬。
然后先手机普及了,我们用个人电话可以随时联络了。
但是一般用邮件的比较多。有着急的事情才用打个电话的人比较多。
然后变成智能手机,用SNS了就联络节奏更加快了。

第二,随着变成随时随便跟人家联络,人际关系也有些变化了。
虽然联络地越来越方便,不过那也会引起有些压力。

在中国的,“秒回”代表着那种压力。
秒回就是主要是男女朋友之间,收到了短信之后立刻给对方回信的意思。
很多年轻人重视对方的秒回的程度。
秒回的程度就代表着对方心里你是多么重要。

在日本的,“已读”代表着那种压力。
已读就是用line的时候,对方看到了短信,发信者就能看到在短信旁边“已读”这两个字。
我们会知道对方“已读”之后没给我回信,这被叫做“已读无视”
在日本的话跟中国有些不同,有些人“已读”之后立刻回信也不太开心,
却感觉到对方太闲了或者没有别的朋友。

这些两个现象,虽然表面上有些不同,
但是两个都是从智能手机能的够随时随便联络因素引起来的人际关系上的压力。

一方面中国年轻人重视谁给谁秒回,一方面日本年轻人重视谁被谁被已读无视了什么的。
但是呢,我们不应该被智能手机被支配或者被影响人际关系。
虽然我们随便随时可以联络了,但是还是我们都有自己的时间和自己的节奏。
本来谁也没有权利要求对方勉强放弃自己的时间来联络。
然后,本来最重要的是回信的内容,而不是回信的速度。

当然秒回和已读里面有一些礼貌上的问题。
我们收到了短信就应该尽可能早点看它,早点回信。
不过太重视那一点的话,我们的人际关系就会发生压力会累。
我们享受科学技术的好处,但是理解怎样对待它不能被支配。

2015年12月8日火曜日

(第一篇)黑企业的诞生

最近通い始めた中国語のレッスンのために作文します。
気が向いたら和訳します。

这几年来在日本,被叫做“黑企业”的公司被看到问题了。
黑企业就是让员工工作的太辛苦,没给他们十分的休息空间。
但是呢,十几年前,在1980年代日本还在高度成长期的时候,
员工们一样得从早上到深夜工作了。
一个很有名的广告词“你能工作24个小时不?”是营养饮料(regain)
这广告代表着哪些时代把他们所有的能量都埋头工作的员工们。
但是在那些时代,这种工作方式没有被看到问题。
是为什么呢?

理由应该有两个。
第一,80年代,从经济方面看来,日本很有前途。
工作得越多就能够涨越多钱。奖金也挺多。
他们经常下班了就去喝酒逛街到深夜,然后公司会给他们组出车的车票。
经济不断地发展,升级的机会也挺多的。
他们为了买房子,买车,养家庭和孩子,坚持工作。
心里有希望,所以他们能够自愿地工作到深夜。

第二,他们能分享“共同的物语”
从那年代的日本人来说,进入重点大学,进入好公司,
跟才貌双全的妻子结婚,买房子买车子,就是很幸福的事情。
向那种理想他们不断地努力,到达那些理想就你会感到自己人生的阶段。


可是,现代日本的样子就不一样了。

第一,我们经过所谓“被失去的十年”(从1990年到2000年)
大企业接连地倒闭,工资也降下来了。
而且突入“超高龄化少子社会”,将来不确定能得到自己付出的养老金。
在这种背景下长大的年轻人,
被叫做“宽裕世代”是因为在学习环境自由空间太大了,
甚至是被叫做“领悟世代”是因为对自己的期待或者野望太少了,
媒体说他们对社会没有兴趣,没有关心,不容易感动。
经济不好的情况下,曾经想象的“普通”已经不是普通了。
房子买不起,车子买不起,结婚,养孩子也要很多钱。

第二,社会接受多样性了
进入好公司也不一定拿到幸福。
以前大家分享的“共同的物语”也已经不可靠了。
选择“不生孩子”或者“不结婚”的很多年轻人也越来越多了。
还有爱好也多样性了,以前不太受欢迎的“宅男”和“宅女”
现在已经得到市民权了,有时候看到帅哥美女也自称自己是“宅”。
年轻人不太爱喝酒,下班就回家埋头自己的爱好。

当然,80年代也有宅男宅女,现代还在相信曾经的“共同物语”的人也有。
我们不能容易地辨别世代论,可是观察时代变化还是很重要。

然后,最近引起另一个问题,
就是那两种世代人之间的价值观的矛盾。
在公司的宴会之中,中年人容易会提到结婚的话题,或者按“共同的物语”的话题。
从年轻人来说,日本的未来也不是那么有前途可是他们要求年轻人一样得努力。
太不算话了。
最近,新入社员不到三年就退职或者跳槽,还有有些年轻人得了忧郁症。
那种问题有可能从这些矛盾来引起来的。

我经常想象,现在已经经验战争的世代已经越来越少了。
还有过了几十年,经验高度经济的世代也会慢慢的减少。
那日本的未来会怎么样。
我们不能回到过去那些时代的趋势。

2015年9月6日日曜日

142/200『50歳を超えたらもう年をとらない 46の法則』 阪本節郎(博報堂)


読破っ!!
『50歳を超えたらもう年をとらない 46の法則』 阪本節郎(博報堂)
発行:2014年9月 講談社+α新書

難易度:★
資料収集度:★☆☆
理解度:★☆☆
個人的評価:★★☆☆
ページ数:217ページ



【本のテーマ】(表紙帯より抜粋)
本書では「自分だけはジジババにならない」と思っていることは、決して非常識ではなく、
「次の常識」になりそうだ、ということを多くの調査分析データから示しています。
決して若づくりをしているわけではないし、白髪になったり頭部が薄くなったりもしますが、
それでも一見ジジババには見えない人も増えて来ました。
そうあり続けるためにはどうしたらよいか。そのヒントが何かしら得られれば、というのが願いです。
市場全体が構造的に大きく変わるかもしれない、
新しく大きなビジネスチャンスも生まれようとしています。
「新しい大人」としての生活や消費への前向きな意欲は大きな機会となるでしょう。
そのヒントが本書にあります。


【目次】
1 ジーンズの似合う大人になる
2. 50代を過ぎたら歳を取らない、と思ってみる
3. これから人生最高のときを創ろうとする
4. 「成熟した人」でなく「センスのある人」になる
5. 「若々しくありたい」の先には「自分は若い」と思う、がある
6. 「見た目」にこだわる
7. 自分は結構イケていると思う
8. どこまでも女性を卒業しない
9. 肩の力を抜いて自然体でいる
10. どこまでも年相応にならない また、そういう自分を変わり者だと思わない
11. 「イタい」と言われても気にしない
12. 新しい日本人の規範を作る
13. オシャレや化粧は自分のためにする
14. 新しいライフスタイルを自分たちから生み出していく
15. スマホ・タブレットも自分の道具にする
16. つねに何か新しいことを始める
17. 会社はリタイアしても社会はリタイアしない
18. 自分が将来オジイサン・オバアサンになると思わない
19. オジサン・オバサンと呼ばれても自分のことだとは思わない
20. 先端を走り続けてみる
21. 介護予防・健康ケアを自分のタスクにする
22. それでも体が弱ったら
23. 親の介護・介護予防もする
24. 夫婦すれ違いを解消する
25. 素敵な大人の二人になる
26 仲間コミュニケーションは第三の資本
27. 複数の異性と大人のお付き合いをする
28. 母娘たまには父息子
29. 祖父母が子供家族の面倒を見る新3世代へ
30. 新3世代は"教えてほしい"が秘密の扉
31. デジタル新3世代へ
32. おカネに働いてもらう
33. 新しい旅のスタイルをつくる①二人旅
34. 新しい旅のスタイルをつくる②仲間旅
35. 新しい旅のスタイルをつくる③新3世代旅
36. 食を楽しみずっとグルメ
37. 肉好きな人は栄養バランスで健康に
38. 男の料理・女の料理
39. エンタテインメントを楽しみ続ける
40. 新しい大人文化の担い手になる①一流の観客になる
41. 新しい大人文化の担い手になる②新しいトレンドの発信源に
42. 社会に「支えられる側」から社会を「支える側」になる①自助
43 社会に「支えられる側」から社会を「支える側」になる②共助
44. 社会に「支えられる側」から社会を「支える側」になる③クロスジェネレーション
45. 死に向かうのではなく 人生を全うしようとする
46. 過去と現在とこれからに感謝し、若い精神を持ち続ける

あとがき

【感想】
日経新聞で取り上げられていた本で、僕がよく読んでいる、ZIPにも出演している原田曜平さん
と同じ博報堂の人、ということで読んでみました。

が。この人の文章。個人的には読みにくかったです。
期待していたハードルが高かった分余計に。
その理由が3点。

まず1点目、この本の目的が「分析」なのか、「提言」なのかはっきりしない。
提言しているかと思いきや、分析が入り、分析しているかと思いきや、提言が入る。
これでは、「新しい大人とは、大多数がこうだから、同じように真似してみなさい」
と言っているように聞こえる。
そこはあくまで分析に留めるだけにして欲しかった。
ライフスタイルは自由に選択できるべきだし、
また、そうなりたくても簡単になれない人だっていると思うから。
(タイトルからして提言本だというのは何となく分かるのですが、
もっと分析的な感じを期待していました。。。)

2点目、分析に関しても、「行動」の分析よりも「心理」の分析が多かった。
後半は旅行や家族との関わりなどの「行動」に焦点を当てた部分もありましたが、
前半は特に、「こう思っている」とか、「こう思われたい」とか、「理想像」とか、
(例:いつまでも若々しくいたいと思いますか?言われて嬉しい言葉は?)
そういう質問項目に対する回答と、その割合だったので、
それはもしかしたら、数十年前だってそう思う人は多かったかもしれない。
もっと具体的な、現代ならではの「行動」に焦点を当てた分析でないと、
説得力にやや欠けると思う。とはいっても、「心理」分析としては興味深かったです。

3点目、文章構成。
まず46項目は多すぎる。しかもその中に重複している内容がある。
もっとポイントを絞って多くても10くらいにまとめてもらわないと、
要点を押さえて理解したくても、難しかったです。

そして、文章の書き方も、時々よくわからないところで「カタカナ」を使う。
(例:「自分だけはシニア・中高年ではない」と思う人たちを指して、
「イタい」とか「無理しているのでヤメテクレ」という議論もよくネット上では見られます。)
イタいはカタカナにするの分かりますが、なぜ「やめてくれ」まで??
そういう突然、よくわからないタイミングでカタカナを使う表現が何か所も出てきました。
この著者の年齢が50歳以上であるので、その年齢以上の方の特徴なのかな、とも思いますが、
(手塚治虫の漫画でこういうよく分からないタイミングで「カタカナ」になるの、見たことあります。)
気になってしまい内容に集中しにくいところがありました。

さて、好き勝手に、辛辣に評価しておりますが、
良かった点をあげていきます。良かった点は2点

まず1点。著者が50歳以上の人だと言いましたが、
文章表現は分かりにくかったと述べましたが、
その年代の人が「大人像」が変わってきているぞ。という本を書いたということは、
自分にとっては印象的でした。
一般的に年を召された人ほど、「こうあるべきだ!」という考えが強く、
「男はこうあるべき!」「大人はこうあるべき!」という風に主張しがちですが、
この著者は時代の変遷を感じ取り、変わってきているみたいですね、
という風に述べていることは、自分にとって意外で、
著者みたいな大人がもっと現状を、同じ立場から発信していってくれたらいいのに。と思います。
男女観も、大人観も、家族観も、全部変わってきている、
新しい定義、概念、価値観をもっと広く伝えていってほしい、
そうすることで、「新しい大人」を含めたより若い世代の人たちが生きやすくなると思う。
そういう意味で、注目すべき点だと感じました。

2点目は、「あとがき」に込められたメッセージ性。

2020年には、大人(成人)の10人に8人は40歳以上、全人口の3人に1人は60代以上になる。
という事実を述べ、少子高齢化は避けられない深刻な問題であるけれど、
しかし絶望するだけではなく、実際の「シニア」は割と元気で、
ハツラツと生きようとしているということ。
また、先進国の中で日本は先陣を切って超高齢化社会を進んでいくため、
モデルケースとして、世界各国から注目を浴びているということ。
日本が将来的にどうなるか、それをみて各国も対応を考えていくだろう。

それが言いたかったがための本文なのか、と思わされたし、
あとがきで著者も、本文に書いたことは皆に当てはまるとは限らない、
自分だけこう思っているのじゃないかと不安になっている人に安心してほしかった。
と述べているので、なら提言本じゃなくて分析本にしろよ!
、、、とツッコんでしまいました。

けど、あとがきにこの著者の人柄が見えて、良かったです。

141/200 『トヨタの問題解決』OJTソリューションズ(コンサルティング)


読破っ!!
『トヨタの問題解決』OJTソリューションズ(コンサルティング会社)
発行:2014年5月 中経出版

難易度:★☆☆☆
資料収集度:★☆☆
理解度:★
個人的評価:★★
ページ数:239ページ


【本のテーマ】(表紙帯より抜粋)
どんな環境でも勝ち続ける「思考力」がある
トヨタ独自の最強メソッド「問題解決の8ステップ」公開!

【目次】
PART1 仕事の成果が変わるトヨタの問題解決
01 「問題がない」が最大の問題である
02 問題とは「あるべき姿」と「現状」のギャップ
03 問題解決の基本は「発生型」と「設定型」
04 「ビジョン指向型」がイノベーションを生む
05 「ビジョン指向型」には「意思」をこめる
06問題解決に繋がる8ステップ
PART2 問題解決の8ステップ
STEP1 問題を明確にする
01  「問題ありき」「対策ありき」ではうまくいかない
02 「やりたい」ではなく「やるべき」問題を選ぶ
03 問題を発見する7つの視点
04 「汚れ」のあるところに問題あり
05 問題を絞り込む3つの視点
06 問題は「データ」で示す
07 最初は”思いつき”でもいい

STEP2 現状を把握する
01 問題をブレイクダウンする
02 データの「バラツキ」を探せ
03 「三現主義」で問題点を特定する
04 取り組む問題は欲張ってはいけない

STEP3 目標を設定する
01 「あるべき姿」と「目標」は異なる
02 目標は数値で示す

STEP4 真因を考え抜く
01 「なぜ」を5回繰り返せ
02 「特性要因図」で真因に迫る
03 「真因かどうか」を確認する3つのポイント
04 正真正銘の「真因」に迫れ
05 「真因」を他人に押し付けてはいけない

STEP5~7 対策を立てて実行する
01 できるだけたくさんの対策を洗い出す
02 対策の優先順位を決める
03 スピード! スピード! スピード!
04 百行は一果にしかず
05 効果の確認は期限を厳守
06 結果だけでなく「プロセス」も振り返る

STEP8 成果を定着させる
01 「歯止め」をせよ
02 仕事の「プロセス」を共有せよ
03 問題解決に終わりはない

おわりに

【感想】

これまで読んでみたほかのトヨタ関係の本が難しかったから、
この本は分かりやすすぎて、深いところを分かっていないのではないかと思ってしまうくらい、
分かりやすかった。
そして、今の仕事でも会議の中で上司が口酸っぱく言い続けていることが、
この本の中でも書かれていて、「あぁ、あのことか!」と思う点がいくつかあった。

短期的な課題、中長期的な課題を、
日々の業務の中から、もしくは、自分でより理想的な姿を描いて
そのイメージとの間のギャップの中から見つけ、
データによる現状把握から、制度・仕組みの中にある原因の徹底的な追求を行い、
自分の出来るレベルから着実に、期限を決めてそれぞれの対策に取り組み
改善活動を行っていく。
そしてその改善を他部署等の違うケースにも横展開する。
横展開できるように誰がやっても出来るような仕組み・制度を整える=「標準化」する。

そんなトヨタの改善活動の考え方の基礎を学ぶことができました。

『「なぜ?」を5回』などの具体例が日常生活レベルの話だったので、
すんなり理解できましたが、
これが実際の現場の場合だともっと複雑で、専門的な話になり、
それぞれの原因が一概には言えないようなものであったりするのだろうなぁ。と考えました。

しかし、この考え方は仕事だけでなく、人生においても役立つ考え方だと思います。
「人を責めず、制度や仕組みを変える」
「常に更なる高みを目指す」
という基本姿勢がとても良く、見習いたいと思いました。

トヨタ方式の代表的な「カンバン方式」、「にんべんのついた自働化」については
触れられておらず、あくまで、それらの対策が出てくるまでの考え方、
そしてその実行の仕方から振り返りまで、を一般化して述べている本でした。

たぶん上記二つの概念について学ぶには、それこそ当時の現状の問題点、
なぜが5回繰り返された過程、対策が実施される過程がとても専門的で具体的になるため、
理解度が一気に下がる気がします。
そういう意味で、それらの改善の考え方の要点をわかりやすくまとめてくれている、
という意味で良い本だと思いました。

また読み返すことでポイントを思い出すことができると思います。

2015年7月28日火曜日

140/200 『エスパー・小林の「運」がつく人「霊」が憑く人』エスパー小林(霊能力者)


読破っ!!
『エスパー・小林の「運」がつく人「霊」が憑く人』エスパー小林(霊能力者)
発行:2015年4月 王様文庫

難易度:★☆☆☆
資料収集度:★☆☆☆
理解度:★☆☆☆
個人的評価:★★☆☆☆

ページ数:221ページ



【本のテーマ】(表紙帯より抜粋)
人生の「要所」でつまずかないために・・・
私は「見えない世界」の真実を視る力を使って、人生相談を受けたり、
将来展望のアドバイスをしている。
そこで感じるのは、ちょっとした行動、考え方、習慣で
「運」を大きくつかむ人もいれば、運を落とす人、さらには「霊」に憑かれてしまう人がいる、
ということだ。では、どうしたらいいか、
本書で余すところなく明かしていこう。

【目次】
第一章 あなたの「運気」の守り方
第二章 「低級霊」に憑かれる人 「高級霊」が味方する人
第三章 「運気の波」に乗れる人 乗れない人
第四章 最高の「縁」を手に入れる技術
第五章 運を呼び寄せる「パワー」アクション

【感想】
こんなにタイトルからして胡散臭い本を、初めて読んだ笑
こないだ実家に帰省した時に、母親が「これ面白かったで」といって渡してくれた。
母がなんでこんな本を読む気になったのかは謎だけど、
想像したよりも胡散臭くない内容やった。という感想が気になり読破。

その結果の感想は、、、やっぱり胡散臭い!!笑
けど、霊の話について書いているかと思いきや、
「どんな環境に自分を置くかが大事」だとか、人との「縁」を見極め、
悪い縁からはなるべく身を置くようにしろ。だとか、
そういう自己啓発書的な部分は、胡散臭くもなく、理解もできた。

ここからは個人的感想。。
「霊的なパワー」が存在しないことを証明できないから、
一概に「胡散臭い」と切り捨ててしまうのも良くないと思うし、
実際に「運が良い人」というのはいると思うけど、
それを自分から切り離した外部的要因に結び付けて、
「高級霊」や「守護神」がいる、という風に結論付けるのは、
どうも納得がいかない。(もしほんとにいたらごめんなさい笑)

外部的要因ではなく、内部的要因であるとすると、
どんな人が「運」が良くなるのか。それを端的に表した言葉が、
「Serendipity (セレンディピティ)」(日本語に訳すると「掘り出し上手」)だと思う。
「運」が良い人は、「チャンス」を掴むのがうまいんだと思うし、
「チャンス」を与えてもらうのもうまいんだと思う。
そして、「君子危うきに近寄らず」じゃないけど、悪運や悪縁から遠ざかるのもうまいと思う。
けど、そんな人を周りの人が見たら、「あの人は運がいい」という言葉で片付けてしまう。
つまり、外部へのアンテナをどれくらい張っているか、
チャレンジ精神がどれくらいあるか、(無謀であるか、とも言える)
結局はそういうハングリー精神とか、バイタリティとか、
内面的性格が「Serendipity」に繋がるんだと思う。
・・・とはいっても、やっぱりそういう本人の努力だけではどうにもならないこともあるから、
そこは「運」なのだとも思う。
(て、彼はおそらくその部分の「運」の話をしているのだろうけれども。)

そして、「運気」が上がる、下がるというのを、霊的なものと外的要因っぽく言うのも
やっぱり胡散臭い。
やはり、それも本人の捉え方次第で、プラシーボ効果じゃないけど、
「効果がある」と思うから効果が出るということがあり、
また、いわくつきの物件や過去に悲惨なことがあった場所で運気が下がるとか、
パワースポットで運気が上がる、というのも、
結局は本人がそこに何かが存在しているかのように感じ取る
そこで起こったこと昔のことを意識的・無意識に想像し、
「臨在感的に把握」することで、その場所に対する印象を抱き、
またそのイメージを膨らませ、その結果心身に少なからず影響が出てくる現象だ。
というのが科学的で、現実的だと思う。

話がそれるけど、この「臨在感的に把握する」という言葉は、
「空気の研究」をしていた山本七平氏が用いた言葉で、
僕はすごく気に入っている。
というのは、「空気が読めない」という言葉の「空気」というものは、
誰かがその「空気」を定義したわけでもないのに、
その場にいる人たちが多少の違いこそあれ、
似たような「場の流れ」や「集団の思惑」を「臨在感的に把握」し、共有しているから成り立つ。
それは、自分とは切り離して存在している概念ではなく、
あくまで、自己の中から曖昧な存在として生み出されたものであり、
しかし、それでいて確固とした存在感や影響力を持つものである。
ここで、「臨在感的」というのがポイントで、
この言葉があることで、実際の存在以上に存在感を感じている。という事実が際立つ。
(あえて何も存在していないのに、とは書かない。笑)

霊能力者といわれる人は、この「臨在感的把握」能力が高いのだと思う。
その場所の歴史的な意味や意義を感じ取りそれを「霊」だと言ったり、
また、過去の経験から、他人の細かい特徴やの類似性を読み取り、
新たに出会った人の性格や過去を、
さも「臨在感的」に存在しているかのように「把握」するのである。
それは外れてしまうとただの「思い込み」であるが、
当たると「過去の経験の積み重ねの中の、類似的データから導き出された統計学」となる。

結局、占いとは、そういう曖昧だけどどこか説得力のある統計学だと思う。

普段の生活の中で、
全く関係性のない二人が(例えば、地元の大学の先輩と、職場の先輩とか)
どこか似ていると思ってしまうことがある、
どちらか片方と接していると、もう片方の存在を思い出してしまう。
ということがある。それはきっと、その二人にどこかしらの類似点があり、
生活面や思考面においても何らかの共通点があるかのかもしれない。
そういった人のパターン分けや分類を深めていけば、
占い的なことができるのかもしれない。と考える。

何千、何万もの人の人生のサンプルデータを取り、集計し、分類し、
類似性を研究すれば、そのパターンごとに、それなりに役立つ人生訓ができるのかもしれない。
新しく出会った人をそのデータに基づいて分類し、
その人の人生に類似したデータを取り出してくることで、
その人の人生の決断に役立つアドバイスができるかもしれない。

近年流行りのビックデータを駆使した、統計学に基づいた最強の占い、
というものを作ってみて欲しいです。
そうすれば、少しは悩める人が減るんではないでしょうか。

2015年7月25日土曜日

139/200 『愛着障害~子ども時代を引きずる人々~』岡田尊司(精神科医・作家)


読破っ!!
『愛着障害』岡田尊司(精神科医・作家)
発行:2011年9月 光文社新書

難易度:★
資料収集度:★
理解度:★
個人的評価:★★
ページ数:313ページ


【本のテーマ】(表紙帯より抜粋)
従来、愛着の問題は、子どもの問題、それも特殊で悲惨な家庭環境で育った子どもの問題として
扱われることが多かった。しかし、近年は、一般の子どもにも当てはまるだけでなく、
大人にも広く見られる問題だと考えられるようになっている。
しかも、今日、社会問題となっているさまざまな困難や障害に関わっていることが明らかとなってきたのである。
また昨今、発達障害ということが盛んに言われ、それが子どもだけでなく、
大人にも少なくないことが知られるようになっているが、この発達の問題の背景には、
実は、かなりの割合で愛着の問題が関係しているのである。
実際、愛着障害が、発達障害として診断されているケースも多い。

【目次】
第一章 愛着障害と愛着スタイル
第二章 愛着障害が生まれる要因と背景
第三章 愛着障害の特性と病理
第四章 愛着スタイルを見分ける
第五章 愛着スタイルと対人関係、仕事、愛情
 1.安定型愛着スタイル
 2.回避型愛着スタイル
 3.不安型愛着スタイル
 4.恐れ・回避型愛着スタイル
第六章 愛着障害の克服
 1.なぜ従来型の治療は効果がないのか
 2.いかに克服していくか
 (1)安全基地となる存在
 (2)愛着の傷を修復する
 (3)役割と責任を持つ

【感想】
近年話題になりつつある発達障害の根本的な原因を親との人間関係による
愛着障害にあると述べたチャレンジングかつ、斬新な本でした。

テーマが重い本で、読み進めていくのが辛かったですが、
自分の生まれ育ってきた環境や過去について振り返られり、向き合える本でした。

本書の前半では著名人が抱えていた愛着障害について述べており、
夏目漱石、太宰治をはじめとした作家から、ビルゲイツ、オバマまで、
さまざまな著名人の家庭環境とそれがその人物に与えた影響、
彼らの心の闇について書かれていました。
そういう面ばかりの話を読むと、こんなに心に闇を抱えている人が、
どうしてこんなに表舞台に立ったり、作家の場合作品が教科書にのるようにまでに
なったのかな、と疑問に思うくらいでした。

それを、これだけの著名人「だからこそ」の過去と愛着障害と捉えるのか、
これだけの著名人「でも」辛い過去と愛着障害がある、と捉えるのかで後半の内容の
入ってきやすさが変わってくると思うのですが、
自分は後者、著名人「でも」愛着障害がある、と捉え、
一般人でも程度の差はあれ、似たような事例が存在している。と考えました。

克服方法に関して、
自分が親に対して不満を抱いたり、怒りの感情を抱いていることをまずは受け入れ、
しっかりとそのことに向き合うことが大事だと述べていた。
その上で、親が自分にしてくれなかったこと、与えてくれなかったものを、
外の世界に求め、「安全地帯」となるような心の拠り所や他者を自分で見つけ出し、
その「安全地帯」によって、心に空いた穴を埋め、
親がくれなかったもの、発達しきれなかった部分の埋め合わせをし、
最終的には親のことを許す。
親以外の人間関係の中で、ギブアンドテイクでお互いに埋め合わせをしていく。
そのような過程が愛着障害、発達障害を克服する方法だと理解しました。

自分の過去を振り返り、親がしてくれなかったこと、自分の発達不足なところ、
そして、自分にとっての「安全地帯」となってくれた存在のこと、
色々考えました。
そして、「安全地帯」となってくれた存在に、心から感謝したいと思いました。
そして、親に対するわだかまりや不満についても見つめ直すことができ、
その感情を否定するでも、見て見ないふりするでもなく、
きちんと向き合った上で、許すことができるようになりたい。と思いました。

小さい頃に親と過ごした時間に対する「愛着」が、
その後のすべての「愛情」に関する感情に関わっていく過程を知ることができ、
愛情のメカニズムや由来について考えることができました。
そう考えると、家庭環境が違えば「愛着」の概念も変わり、
そうすると、「愛情」に対する概念や価値観も人それぞれ、様々になるのだということを、
再度認識させられました。

心身の健康に関わる問題の根本は生活習慣や思考習慣であり、
その生活習慣や思考習慣は親から学び、身に付いたものであるとすると、
この本は健康の根本に関わるテーマを扱っていると思いました。
教育の大切さと同時に教育の不完全さを感じることができる本でした。

ただ一つ気になるのは、本の表紙。
重版に伴って表紙を作ったようですが、「子供をだっこしてください。」
なんて、そんな簡単な話ではありません。
子供を愛することが必ずしも良い方向に繋がるとは限りません。
子供との関係が出来上がった後、図らずしも親との離別があった場合には
子供に残す心の傷が深くなってしまう恐れがあります。
この本の一番のテーマは「子供を愛すること」ではなく、
「親の不完全さと向き合い克服し、許すこと」だと思うので、
もうちょっとそのテーマにあった表紙の絵とか、キャッチコピーにして欲しかったです。

2015年6月22日月曜日

138/200 『風に舞い上がるビニールシート』森絵都(作家)


読破っ!!
『風に舞い上がるビニールシート』森絵都(作家)
発行:2006年5月 文春文庫
難易度:★★★★
感動度:★★★★
共感度:★★★★
個人的評価:★★★★★

ページ数:342ページ



【本の紹介】(裏表紙より抜粋)
才能豊かなパティシエの気まぐれに奔走させられたり、
犬のボランティアのために水商売のバイトをしたり、
難民を保護し支援する国連機関で夫婦の愛のあり方に苦しんだり・・・・・・。
自分だけの価値観を守り、お金よりも大切な何かのために懸命に生きる人々を描いた
6編。あたたかくて力強い、第135回直木賞受賞作。

【目次】
器を探して
犬の散歩
守護神
鐘の音
ジェネレーションギャップX
風に舞い上がるビニールシート
解説: 藤田香織

【感想】

すごいよかった。
高校生の時に一度読んだことがあったけれど、
その時に何を感じたのかはもうすっかり忘れてて、
話の内容もかなり曖昧だったけど、
今読んでみると、また違う味わいがあってよかった。

良かったと思う点と、考えたことをそれぞれ書きます。

まず、良かったと思った点は、
それぞれの短編の世界観が違っているのが良い。
そして、それぞれの短編の「日常」がやけに細かく、詳しくて、
(たくさん参考文献を読まれたんでしょうね。)とてもリアルに感じられた。
そして、そんな中にそれぞれの人が悩みを抱えながらも奮闘する姿に感動を覚えた。

それぞれ別個の短編の中には、時間軸を移動した展開があったり、
過去の話も盛り込んでいたり、と、内容がとても濃く、それでいて引き込まれやすく、
読み始めると一気に読み終わってしまうような小説だった。

また、世界観だけではなく、文章の表現方法も変わっているのがよかった。
「守護神」では夜間大学に通う生徒たちのやりとり、ということで、
知的で論理的で、淡々と息継ぎをするまもなく畳み掛けるような会話のやりとりが、
リズミカルで快感だった。

「鐘の音」では、仏師が主人公で、関西弁(若干違和感を感じる関西弁でしたが)
メインのやり取りであり、古風な職人気質の雰囲気がよく出ていたと思う。

「風に舞い上がるビニールシート」では、難民のために働く国際公務員たちが主人公ということで、
会話がまるで洋画を字幕で見ているかのような、
そんな欧米チックなアメリカンなノリをうまく表現していた。

こんなにもコロコロ作風を変えられる作家はすごいと思う。
読んでいて飽きないからこういうジャンルがすごく好き。


そして、考えたこと。

この小説の表題ともなっている「風に舞いあがるビニールシート」、
これは、表題作の中の登場人物、国連機関職員のエドが、
紛争地域でいとも簡単に命が失われていく難民を例えた言葉でした。
強い風で簡単に飛んでいってしまうビニールシートのように失われていく命を、
エドは必死で捕まえて、飛んでいかないようにこの世界にとどめようとしている。

そういう感動的なエピソードでしたが、
もしこの小説が短編小説ではなく、この作品だけであったならば、
この例えも、お話もどこか綺麗事で現実味のない無味乾燥なものとなっていた気がする。
というのも、この話だけにスポットを当ててしまうと、
紛争地域ではなくても、物質的には豊かとされる日本においても、
人々は悩み、苦しみ、もがき、どうにかしようと努力している。
という事実が隠れてしまいがちだからである。

紛争地には不幸がたくさんあるというのは何となく想像できるけど、
紛争地じゃないからといって、必ずしも幸福なわけでもない。

風に舞い上がるビニールシートの表現を用いるのなら、
決して簡単に風で飛んではいかないけど、
いろんな人に踏まれて、汚されて、雨風にさらされて、
ボロボロになりながらも、それでも地面にとどまっているビニールシート、だってある。

どっちが幸せで不幸か、なんて簡単に、一概には言えない。

もちろん、簡単に命が失われていってしまうことは悲しくて、辛いことである。
けど、命が失われない世界でも、悲しいことや辛いことはたくさんある。

6編のちょっと変わった人たちの、「平和ボケした」(作中の言葉)日本で、
それでも苦しんだり悩んだりしている人たちの話の最後に、
この「風に舞い上がるビニールシート」という話があった。

その流れがすごく秀逸で、その流れがあったからこそ、
難民という少し身近ではない話も、すんなりと入ってきた。

もしも森絵都さんがそこまで意識してそういう構成にしていたのなら、
もうまさに、脱帽!なんて勝手に想像して興奮していました。

森絵都さんの「カラフル」を読んだ時は、「児童文学」というイメージだったのに、
この短編小説でイメージが変わりました。
ほかの作品も読んでみたいと思います。

2015年6月14日日曜日

137/200 『「続ける」技術』石田淳(行動科学マネジメント研究所所長)


読破っ!!
「続ける」技術』
石田淳(行動科学マネジメント研究所所長)
発行:2014年12月 宝島社
難易度:★☆☆☆
資料収集度:★☆☆☆
理解度:★
個人的評価:★★☆☆☆

ページ数:164ページ

【本のテーマ】
性格も、精神力も、時間も、年齢も、お金も関係なし!あなたの「行動」に着目すれば、
もうムダな挫折感を味わうことはありません!
アメリカ発の「行動科学マネジメント」を使って
「継続は力なり。」をあなたのものにする!
3日坊主にならない「とっておきのコツ」を紹介します。


【目次】
第一章 あ~あ、やっぱり続かない・・・
第二章 「続かない理由」はここにある
第三章 行動に着目すれば、物事は簡単に継続できる!
第四章 ステップで解説!続ける技術を身に付けよう!
第五章 続けるためのちょっとしたコツ
第六章 行動科学で続けられた!~第一章の登場人物たちは・・・~

【感想】
兄がこの人の別の本を読んでいると聞いて、
どんな人なのかなー、と思い読んでみた自己啓発書。
ページに余白を多く使っているので、文章量としては多くない。

内容と文章構成について思ったことを書きます。

内容について。
続けることが出来ない理由は、自分の意志の弱さなどではなく、
自分の周りの環境をコントロールできていないからである。
行動科学に基づいて、環境をコントロールすることで、
「続けやすい」環境を作っていくことができる。という内容でした。

分かりやすいなと思ったのは、
「行動」という概念が大きく二種類に分かれていて、
「何かを増やそうとする行動」と、「何かを減らそうとする行動」という分類で、
「何かを増やそうとする行動」とは、
例えば、英語の勉強時間を増やす、であったり、運動量を増やす、であったり。
「何かを減らそうとする行動」とは、
例えば、煙草を吸う量を減らすとか、体重を減らす。とか。

それで、増やそうとする行動には、
その行動に繋がりやすい環境を作り、
減らそうとする行動については、その行動に繋がりやすい環境を作らないようにする。
ということで、当たり前だと言われたら、そうなのですが、
それを意識して行動に移すことが重要だと再認識しました。

また、物事の原因を「個人の性格や性質」に起因させるのではなく、
「周りの環境」に起因させ、その環境について分析する。という行動科学の考え方が
行動社会学に似ていたので、すんなり理解できました。

文章構成に関して。
一章で具体的な例やエピソードを述べ、最終章でその人たちが行動科学を取り入れ、
「続けること」に成功していく。という流れは、
イメージしやすく、やる気を引き出してくれる効果がありました。
いわゆる、ベネッセの広告漫画的なダメダメからのサクセスストーリー論法です。

個人的には分量も少なく、さらっと読める自己啓発でした。
衝撃的な気付きというよりも、「ふむふむ、そうだよな。」
という感じで読み終わってしまいました。
分かっていても実際にはなかなかうまく出来ないんだよなー。
というのが率直な感想ですが、
でも、続かないのが「意志」の問題ではない、環境を工夫して変えろ!
というメッセージは、続かなくて諦めかけている時に参考にしたいと思いました。

136/200 『間接自慢する若者たち』原田曜平(博報堂ブランドデザイン)


読破っ!!
間接自慢する若者たち』
原田曜平(博報堂ブランドデザイン)
発行:2015年4月 角川書店

難易度:★☆☆☆
資料収集度:★
理解度:★
個人的評価:★★
ページ数:175ページ


【本のテーマ】(表紙帯より抜粋)
若者の消費のツボがわかる34のキーワード!
マイルドヤンキー、さとり世代の次に流行るのは何?

【目次】
第一章 SNSでリア充アピールする若者たち
第二章 SNSで流行るネタ消費
第三章 SNSで絆をなめ合う若者たち
第四章 SNSでイタイと思われたくない若者たち
第五章 SNSから逃げ出したい若者たち
第六章 SNS世代の潜在需要を引き出せ

枡アナvs若者座談会

【感想】
博報堂ブランドデザインの原田さんの、
新書ではなく、ZIP番組スタッフとの共著。

内容に関してと、本の構成に関して、思うことを少しずつ。

まず、内容に関して。
最近の若者がどのようにSNSと関わっているか、
そのアプリ等の概要と使われ方について写真と共に説明されていた。
SNS上では、いかに自分が「リア充」的に過ごしているか
アピールする場となっている側面があり、
そこでは、いかに「写真映えするか」また、「直接的な自慢になっていないか」が
投稿する際に大きな関心となっている。ということが述べられていた。
(「写真映えするか」は藤本耕平氏著の『つくし世代』では「フォトジェニック」
という言葉で表現されていた。)

SNSを通したコミュニケーションというものは良い面、悪い面の両方あるし、
一概に全て悪いとは思わないけれども、
写真映えする、とっつきやすい投稿の方が「いいね!」もコメントもしやすいし、
複雑な長文を投稿するのは気が引ける。
けど、実際のリアルな生活って、そんなに単純なものではないと思う。
ブルーハーツが歌ってたけど、
「写真には写らない 美しさ」っていうのがあると思う。
そんなリアルな日常はどうしたってFacebookにもtwitterにもあげることはできない。
けれども、やっぱりネット上では、「分かりやすくて覚えやすい」エピソードが
みんなにシェアされ、「いいね!」される。のだと再認識した。

そういう点で、「複雑だけど辛抱強く見ていくと、少しずつ理解できていくもの」が、
SNS上ではどんどん切り捨てられていくような印象を受けた。
FacebookやTwitterなどのアピールを目的としたSNSにはまりすぎると、
思考や感受性がより「インスタント」なもの、
よく言えば直感的、悪く言えば短絡的なものになり、
一度インスタントな感性からはじき出された、
複雑で理解しにくいエピソードは、ブロックし、シャットアウトしてしまい、
自分の感性に心地よい刺激を与えてくれるものだけを残すようになってしまう。
そんな危険性があると感じた。

そんな中、この本でいちばん斬新で衝撃的だったのは、
次のトレンドとして「匿名SNS」という概念を紹介していたことだった。
これまでは、友達の枠の中でのSNSがメインであったが、
そこではアピールがメインになり、なかなか本音を出しにくいというデメリットがあり、
それを補うように今後は「匿名SNS」が流行るのではないか。と予想していた。

この予想に関しては、実際は匿名SNSとしての役割は「2ちゃんねる」が
果たしていたとも考えられるが、
「2ちゃんねる」の世界観は「ネタ」的であり、匿名であることをいいことに、
誹謗中傷が飛び交う事が多々あり、コミュニケーションという側面に障害をきたしていた。
だから、「他人と本音のコミュニケーションをする」ということをメインテーマとした
匿名SNSというニーズがあり、実際にそのコミュニケーションを目的としたアプリがある、
ということは衝撃的で、自分も早速アプリをダウンロードして使ってみた。
(RUMORというアプリで、すでにZIPでも紹介されたとのことでした。)
今のところ、2ちゃんねるとtwitterの間的な感じですが、
今後ユーザーが増えるのか、どのように使われるのか。気になるところです。

ただ、懸念点としては、
今twitterでも問題視されている、個人情報の「晒し」行為が、
匿名でされる可能性があるな。と感じました。
一番簡単に起こりうるのは、「芸能人見た!」とかのつぶやきを
その匿名SNSでするとか。(twitterだとユーザー特定・凍結されてしまうので。)

とか、若者の文化の現在と未来を考察するのはやっぱり楽しくて、
書き出したら止まらないから、これくらいにしておきます。


本に関して。
原田さんはこれまで「新書」という形態で、もう少し堅い感じで書いていた。
それが今回の著書では、ZIPとの共著ということで、
より受け入れられやすいような、キャッチ―でポップな構成になっていた。
前ページに枠の背景が印刷がしてあり、写真も比較的多かったし、
文字の大きさも新書にしては大きく、ページ数は新書にしては少なかった。

それを沢山の人に読まれやすい、として評価できるけど、
その分ちょっと内容が浅くなってしまった。という評価もできる。

自分としては、社会人になってあんまり難しい本が読めなくなってきたので、
シンプルで分かりやすいのは嬉しいけど、より深く考察したいと考える人にとっては、
少し物足りない内容だったかもしれない。と感じました。

2015年5月31日日曜日

135/200 『ランドマーク』吉田修一(作家)


読破っ!!
『ランドマーク』吉田修一(作家)
発行:2007年7月 講談社文庫
難易度:★
感動度:★★
共感度:★★
個人的評価:★★
ページ数:221ページ



【本の紹介】(裏表紙より抜粋)
大宮の地にそびえたつ地上35階建ての超高層ビル。
それはフロアがねじれながら、巨大な螺旋を描くという、特異な構造をもっていた。
設計士・犬飼と鉄筋工・隼人、ふたりの毎日もビルが投影したかのように不安定になり、
ついにゆがんだ日常は臨界点を超える。圧巻の構想力と、並外れた筆力で描く傑作長編。

【感想】
良かった点
主人公が設計士と鉄筋工という、管理者と現場で働く人という対照的な登場人物を、
一つの建物の建設という共通点を持ちながら、
ザッピングストーリー的に入れ替わり・交互に出てきた点。
泥臭い、労働環境的にそんなによくない隼人の生活と、
設計士としてグローバルな感じで働いている犬飼の生活が、
対照的で比較することでより一層際立った。

二人それぞれの女性との恋愛関係の描写がよかった。
隼人は中華料理店で働く女性と、犬飼は年が一回りも違う大学生女性。
隼人の方はお互い飾らない関係だけど、なかなか結婚とまではいかない感じの恋愛、
犬飼の方は妻がいながらも愛人としての関係。
犬飼と不倫してる大学生女子の後ろめたさを感じている発言や行動が良いと思った。

あと、舞台が大宮っていうのが初めてで、
何回か行ったことあるので、小説の舞台になるっていうのが不思議な感じだった。

悪かった点、
最後があっさりしすぎていた。そして、釈然としなかった。
終わりかけで、展開がいい方向に進むと見せかけて、
最後の最後に事件が起こって、それまで順調に進んでいた状況が
いろいろ変わるなぁ。って思ったところで話が終わってしまった。

そのもやもや感が、多分物語を通して出てくる犬飼と隼人達が建設中の
「らせん状にねじれを持った不安定な高層ビル」に重ねているのだということなんだろうけど、
そうとわかっていても、なんだか釈然としない。

ラストは釈然としなかったけど、
吉田修一の本には、実在するものがたくさん登場して、
興味を持ってそこからネットで調べたりして、
そうやって世界が広がるところが好きです。

2015年5月18日月曜日

134/200 『何者』朝井リョウ(作家)


読破っ!!
『何者』朝井リョウ(作家)
発行:2012年11月 新潮社
難易度:★
感動度:★★★★
共感度:★★★★★
個人的評価:★★★★
ページ数:286ページ





【本の紹介】(Amazonより抜粋)
「あんた、本当は私のこと笑ってるんでしょ」就活の情報交換をきっかけに集まった、拓人、光太郎、瑞月、理香、隆良。
学生団体のリーダー、海外ボランティア、手作りの名刺……
自分を生き抜くために必要なことは、何なのか。この世界を組み変える力は、どこから生まれ来るのか。
影を宿しながら光に向いて進む、就活大学生の自意識をリアルにあぶりだす、書下ろし長編小説。

【感想】

この本は、久々に衝撃的だった。
吉田修一の「パレード」を読んだ時みたいに。
最後の怒涛の展開に一気に引き込まれた。
そして、最初から最後まで、小説の中て描かれていた
主人公・拓人の心の中の独白にすごい共感していたのに、
最後の最後で作者に裏切られた。笑
心の中で思うことと、それを実際に言葉にして発信すること。
その二つの間には本当は壁があるはずなのに、
Twitterというツールは、その壁をないものにしてしまうような、
そんな効果があると再認識させられました。
(かといって、思ったことを言葉にしないままもやもやさせ続けるのも、
それが本当に健全か?と言われると、、、そうとも言えない。
ということも考えさせられました。)

まず、物語の構成がすごく良いと思う。
そして、どの登場人物も、どこか「痛く」て、
意識高いように見せるよう背伸びしたり、
不安やうまくいっていないことはなるべく見せないようにしたり。
そういう一つ一つが自分自身の学生時代を
(学生時代だけじゃなく、今もまだある笑)
ありありと、生々しく思い出させられて、
突きつけられている気がして、
恥ずかしい気持ちになりました。
それくらい、リアルな若者が描かれていると感じました。

そして、最後の怒涛の展開で、登場人物に対する印象がすごく変わる。
それは、物語の中で作者によってうまくリードされていたのだろうと思うので、
もう一度、拓人の視点に惑わされすぎずに、
最後の展開を知った上で読んでみたら、
また印象が変わるのではないかな。と思いました。

僕自身はTwitterあまり楽しんでうまく使いこなせないのですが、
この物語のように、自意識と自分の感情に任せて利用したら、
(というか、「つぶやく」って、自然と自己中心的な発言になる気がする。)
やっぱり、こういう感じになるのか・・・!!
と、さらにTwitterを使いたくなくなりました。笑

Twitterに限らず、Facebookや、個人設営の「オフィシャル」ブログ等、
「自意識」を上手く飼い慣らさないと、
傍から見て「痛い」人間になる。とうこと、
けれど、たとえそう見えたとしても、自分で「痛い」と自覚しながらも、
そうしないと頑張れない、そうやって自分のやる気を奮い立たせている。
そんなリアルな感情がありありと描かれていた。

、、、もうほんとに、「痛」すぎて共感できる本だった。

133/200 『舟を編む』三浦しをん(作家)


読破っ!!
『舟を編む』三浦しをん(作家)
発行:2003年6月 文春文庫
難易度:★★★
感動度:★★
共感度:★★
個人的評価:★★★★
ページ数:347ページ



【本の紹介】(amazonより抜粋)
出版社の営業部員・馬締光也は、言葉への鋭いセンスを買われ、辞書編集部に引き抜かれた。
新しい辞書『大渡海』の完成に向け、彼と編集部の面々の長い長い旅が始まる。
定年間近のベテラン編集者。日本語研究に人生を捧げる老学者。
辞書作りに情熱を持ち始める同僚たち。そして馬締がついに出会った運命の女性。
不器用な人々の思いが胸を打つ本屋大賞受賞作!

【目次】
舟を編む
解説 平木靖成
馬締の恋文 全文公開

【感想】
三浦しをんの話題の本を読んでみました。
『大渡海』という一つの辞書を完成させるまでの、
編集者たちの熱い熱いお話。プラス、恋物語。

感想として、好きだった点と微妙だった点を述べます。
前置きしておきますが、いち三浦しをんファンとしての、期待を含めた個人的感想です。
どうかお気を悪くされませんように。

まず、微妙だった点。さらっと書きます。
主人公・馬締と、ヒロイン・家具矢の出会いが、アパートの家主の親戚であり、
出会いからお付き合いするまでが、あまりにもスムーズにうまくいき過ぎている点。
家具矢の後半でのイメージは、女性でありながらも寡黙で一徹な寿司職人、
という感じだったのに、そこからは繋がりにくいくらい、
軽く馬締を遊園地にデートへ誘う。という展開。
もちろん、もしかしたら、彼女なりに緊張して、タイミングを見計らって
デートに誘ったのかもしれないですが、その辺の描写がもうちょっと欲しかった。
(その後の恋文のくだりはおもしろかったですが。)
ですが、この物語は恋物語メインではないので、
辞書完成までのお話が熱くて良かったので、全体としてはプラスでした。

そして、好きだった点。
編集者の一人の西岡という登場人物の魅力。
新しく作る辞書、『大渡海』の編集に関わったメンバーの中で、
唯一文学的センスが一般人並の社員であり、
編纂の途中で部署移動があり、広告部へと移動してしまう。
周りの同僚の「辞書」や「言葉」に対する情熱の圧倒的な差を感じながらも、
表にはあまり出さないけれど、
そんな彼らを心の中で尊敬し、熱中できるものがあって羨ましい、と思い、
自分がいなくなってからも、彼らのサポートができるように、
人間関係が苦手な馬締のために、
社外交渉対策のファイルを作ったり、
馬締の人間性を後から来た人に知ってもらおうと、
彼が家具矢に対して書いた恋文のコピーをこっそり隠し、
後から来た社員に見てもらえるように仕向けたりした。

そんな彼なりの仕事に対する情熱が、かっこよかった。
この物語の主人公である馬締は、「天才」的な要素がある
ちょっと変わった人であるため、ちょっと感情移入がしにくい。
そんな中、「凡人」っぽい西岡という登場人物には感情移入しやすく、
また、そんな彼の奮闘っぷりが、個人的にすごくカッコいいと思いました。
そして、彼の彼女との関係性や会話も好きでした。

そして、物語の流れとしても、
馬締が『大渡海』編纂に関わり始めるところから、
後半で視点が岸部みどりという新しく配属された社員に変わる。
そこで、部署移動していなくなった西岡の奮闘の後に出会う。
そういう流れが、辞書編纂という数十年という歴史を感じさせ、
読み終わった時には、自分まで不思議な達成感を味わえました。

まとめると、辞書編纂という、身近な存在でありながら、
これまで想像もしたことのなかった世界を想像し、
こんな感じに、馬締のような「天才」型の人間を、
「より凡人」型のたくさんの人達が支えてできたのだろうか。
と想像させてくれる本でした。

132/200 『木暮荘物語』三浦しをん(作家)


読破っ!!
『木暮荘物語』三浦しをん(作家)
発行:2003年6月 文春文庫
難易度:★
感動度:★★★★
共感度:★★★★☆
個人的評価:★★★★
ページ数:304ページ




【本の紹介】(Amazonより抜粋)
小田急線の急行通過駅・世田谷代田から徒歩五分、
築ウン十年、全六室のぼろアパート木暮荘。
そこでは老大家木暮と女子大生の光子、サラリーマンの神崎に花屋の店員繭の四人が、
平穏な日々を送っていた。
だが、一旦愛を求めた時、それぞれが抱える懊悩が痛烈な悲しみとなって滲み出す。
それを和らげ癒すのは、安普請ゆえに繋がりはじめる隣人たちのぬくもりだった……。

【目次】

もう売ってしまったため割愛。


【感想】

木暮荘というボロアパートに暮らす人々の日常と小さなつながりを、
毎章異なる人の目線から描いた短編小説でした。
どの登場人物もどこか変わっている性格や嗜好の持ち主であり、
それぞれが違う悩みを抱きながらも生きていく姿には、憎めない愛らしさがあり、
また、そんな人たちが、お互いの胸の内を吐露するわけでもなく、
「好き」でも「嫌い」でもない、はっきりしないふわふわした感情で
繋がっている感じが、すごいいいなぁ。と思いました。

どの短編にも、「性・恋愛」というテーマが紛れ込んでいて、
時には「不倫」とか、「覗き」とか、生々しすぎて気持ち悪く感じてしまう行為もありましたが、
けど、人間ってそういう一面もあるよなぁ。とも思える本でした。

第一話目は、彼氏と暮らしてる女性の元に海外を放浪していた元彼が突然転がり込んで来て、
戸惑いながらも、元彼が他に行く当てがないということで、しばらくの間三人で暮らす。
という物語でしたが、
元彼の人柄のおかげか、現彼氏は元彼を追い出そうとせず、
なんだかんだで仲良くなってしまう。
という不思議な三人の関係が奇妙で、だけど、なんだか温かくて、
恋人・元恋人、という関係を超えた繋がりを感じさせられました。

女子高校生・光子は、この物語の中で大事な役割を担っているのですが、
行動や言動はギャルっぽいのに、根は優しくて、
死ぬ前にヤりたいという願望と葛藤していた家主のじいさんの話し相手になったり、
女子高生・光子の部屋をのぞき続けていたサラリーマンのことも許して、
時々のぞき穴を通して話をしたり、
ある日急に同級生が持ってきた、できちゃった赤ん坊を数日間預かったり。
なんだかんだで人との交流を拒まず受け入れていて、
光子のそんな人間性だけがちょっと浮世離れしていて、
行動や言動は普通っぽく描かれているのに、
現実味がないかもしれない。と思いました。
でも、彼女には特殊な事情があったから、
むしろ自分から精一杯普通っぽく見せようとしていたのかもしれない。
、、、という風にも捉えられる、奥の深いキャラでした。

まとめると、この光子という女子高生の存在は
ちょっとフィクション・ファンタジーがかっていましたが、
その点を考慮しても、一言では表せない人間関係がたくさん描かれており、
そんな人達の物語がうまく絡まり合う、
一冊の本として、まとまりのある、読むと心があったかくなる一冊でした。

2015年4月18日土曜日

131/200 『熱帯魚』吉田修一(作家)


読破っ!!
『熱帯魚』吉田修一(作家)
発行:2003年6月 文春文庫
難易度:★
感動度:★★
共感度:★★
個人的評価:★★★★
ページ数:248ページ



【本の紹介】(裏表紙より抜粋)

大工の大輔は子連れの美女、真実と同棲し、結婚を目指すのだが、
そこに毎日熱帯魚ばかり見て過ごす引きこもり気味の義理の弟・光男までが加わることに。
不思議な共同生活のなかで、ふたりの間には微妙な温度差が生じて・・・・・・。
ひりひりする恋を描く、とびっきりクールな青春小説。
表題作の他「グリーンピース」「突風」の二篇収録。


【目次】
第一章 熱帯魚
第二章 グリーンピース
第三章 突風

【感想】
吉田修一の作品の好きなところは、その「カオス」っぷりであると思う。
短編小説に登場する人物の性格も、育ってきた環境も、皆バラバラである。
主人公のタイプが違ってくるだけで、物語の世界観も変わってくる。
「熱帯魚」の主人公は、人付き合いに対しオープンで、
細かいことは気にしないが、時折繊細な部分もあるちょっと自分勝手な大工。
「グリーンピース」は、たまに暴力的で、退廃的な一面もあるが、
それでも、心のどこかで愛とか、優しさとか、つながりとかを求めてる転職活動中の男性。
「突風」は、会社の休暇を利用して海の家でバイトをする会社員と、
その海の家で夫を支える、ものごとの限度を知らない奥さん。

それぞれの登場人物は、どこか「不完全」で、「クズっぽさ」があって、
けど、それは勧善懲悪的な「善悪」で2つに分断される価値観ではなく、
一人の人の中に善悪が共存していて、
その二つの面が時折顔を出している。そんな印象を受けました。
そんな人間描写がやけにリアルで、人間っぽさを感じつつ、
でも、「うわ、こいつ、やっぱりクズだなぁ。」って思ってしまう。
けど、そんな不完全さがどこか愛おしく、
そんな彼らのことを憎めないし、
誰にでも何かしら「クズっぽい」ところはあるし、
きっと、色んな人がいていいんだ。
って思わせてくれる。そんな物語でした。

130/200 『つくし世代』藤本耕平(マーケッター)


読破っ!!
つくし世代』
藤本耕平(マーケッター)
発行:2014年12月 宝島社
難易度:★☆☆
資料収集度:★
理解度:★
個人的評価:★★
ページ数:238ページ



【本のテーマ】
あの商品はなぜ売れた?あの広告はなぜ成功した?
芽生えつつある新しいマインド、行動と消費の原理。
若者たちの「今」、そして「さとり」の次までが分かる。


【目次】
序論 さとっているだけじゃない今時の若者は何を考えている?
第一章 チョイスする価値観――世間の常識より「自分ものさし」
第二章 つながり願望――支え合いが当たり前じゃないからつながりたい
第三章 ケチ美学――「消費しない」ことで高まることで高まる満足感
第四章 ノット・ハングリー ――失われた三つの飢餓感
第五章 せつな主義 ――不確かな将来より今の充実
第六章 新世代の「友達」感覚 ――リムる、ファボる、クラスター分けする
第七章 なぜシェアするのか?――「はずさないコーデ」と「サプライズ」
第八章 誰もが「ぬるオタ」―ー妄想するリア充たち
第九章 コスパ至上主義――若者たちを動かす「誰トク」精神
第十章 つくし世代――自分ひとりではなく「誰かのために」
終章 若者たちはなぜ松岡修造が好きなのか

【感想】
「女子力男子」と合わせて読むことで、「ゆとり」「さとり」、そしてその先の若者について
理解を深められる本でした。

1992年というのが大きな転換期としてとりあげられていました。
①共働き家庭の割合が専業主婦家庭の割合を追い越した年
「個性」を重視したいわゆる「ゆとり教育」に向け、学習指導要領が改訂された年
③いわゆるITネイティブとして育った子供たちが中学校に上がり始めた年
④バブルが崩壊した年

そんな背景、環境の中で育ってきた子供たちを、
これまでメディア等では「ゆとり」「さとり」と言う言葉で表現してきましたが、
その言葉だけでは表現しきれない側面があり、それが「つくし」であると述べていた。

ハングリー精神が無く、より合理的な、コスパを重視する。
等の特徴は、「さとり」と重複するところがありますが、
本書では特に「つながり欲求」が高い、というところに焦点を当てていました。
コスパや合理性を追求する反面、「つながり」を感じられるようなモノ・コトに関しては、
お金や手間を惜しまない。
そこには、そうでもしないと「つながり」を感じにくくなっている現代の人間関係が
根底に存在しているからではないか。と述べていました。

また、「フォトジェニック」という言葉が印象的で、
SNSやTwitterにあげる写真がいかに写真映えするか。
その要素を含んだイベントやモノが若者から人気を得る。
そこにも、その根本にあるのは「つながり欲求」であると述べていました。
(例:エレクトリックラン・カラーラン・フローズン生)

しかし、「つくし世代」は、「つながり」を大切にする一方で、一人の時間も大切にしたがる。
そのため、「一人カラオケ」に始まり、「一人焼肉」・「ぼっち席」などの
これまでは表面化してこなかった需要が一般化してきている。

また、「つくし世代」は「ぬるオタ」要素がある、と指摘しており、
著者の調べ(アンケート)によると、10代(206名)の8割が自分は何らかの「オタク」要素がある
と答えていた。またこの「趣味のつながり」が、これまでのカテゴリー分けの壁を乗り越えることを可能にすると述べ、「秋葉系」と「渋谷系」という、これまで別々のカテゴリー分けされていたものが、
「アキシブ系」というカテゴリーとなったり、様々なカテゴリーとオタク要素が融合し始めている。

これらの特徴を踏まえたうえで、彼ら「つくし世代」を効果的に取り込む
マーケティング戦略として、
「ブランド・価値観の押しつけ」ではなく、
「いじられ上手」な素材・話題を提供する事である。と述べていた。

従来のように大々的にテレビCMとして放送するのではなく、
話題やネタになりやすいPRや動画をSNSを通して拡散する。
そのことで、お互いにその動画をシェアしていくことで、
彼らに「いじりやすい」話題を提供しつつ商品のPRや宣伝を行う。

【感想】
若者についての本を読むと、文章化された「若者の価値観」を読んで、
「そうそう!」という共感を得られる部分と、
「え、こんなこともするの?」と、一部ついていけない、
自分より若い人たちの価値観に気付かされ、
また、「そもそも、もっと上の世代の人の目には、この価値観が新鮮なものに映っているのか。
じゃあ、上の人たちの価値観ってどんなものなんだろう??」
という3つのことを考える。

世代に関する著書はそうやって、自分の考え方や価値観、
そして、その価値観が生まれた背景について考えさせられるから、
自分を見つめ直すことができる興味深いジャンルだと思います。

2015年4月12日日曜日

129/200 『天国旅行』三浦しをん(作家)


読破っ!!
『天国旅行』三浦しをん(作家)
発行:2010年3月 新潮文庫
難易度:★★★
感動度:★★★★
共感度:★★
個人的評価:★★★★
ページ数:312ページ



【本の紹介】(裏表紙より抜粋)

現実に絶望し、道閉ざされたとき、人はどこを目指すのだろうか。
すべてを捨てて行き着く果てに、救いはあるのだろうか。
富士の樹海で出会った男の導き、命懸けで結ばれた相手へしたためた遺言、
前世の縁を信じる女が囚われた黒い夢、一家心中で生き残った男の決意――。
出口のない日々に閉じ込められた想いが、生と死の狭間で溶けだしていく。
全ての心に希望が灯る傑作短編集。



【目次】
第一章 森の奥
第二章 遺言
第三章 初盆の客
第四章 君は夜
第五章 炎
第六章 星くずドライブ
第七章 SINK
解説 角田光代

【感想】
「心中」をテーマに集めた短編集だけに、ちょっと重かった。
特に印象に残ったのは、「森の奥」、「君は夜」、「炎」、「星くずドライブ」、「SINK」
ほとんどや笑
「遺言」と「初盆の客」は登場人物の年齢がちょっと高い感じだった。
「君は夜」、「星くずドライブ」は、ちょっとファンタジー要素があって面白かった。

三浦しをんさんの短編小説の特徴は、
話ごとに作風・雰囲気が変わること。
文章表現等ではなく、登場人物の背景や、物語構成や世界観が違う。

そして、解説:角田光代さんが指摘した、
「登場人物同士の関係性が単純なものではない」という表現にすごく共感しました。
夫婦・恋人・友人。等の言葉で限定できない関係性がある。
人と人の数だけ、その関係性がある。
共有する思いや、経験によって、不思議な、それでいて強力な絆が生まれる。
そんな言葉にはできない関係性をうまく描いているところがとても好きです。

128/200 『日曜日たち』吉田修一(作家)


読破っ!!
『日曜日たち』吉田修一(作家)
発行:2003年6月 講談社文庫
難易度:★
感動度:★★★★
共感度:★★★★☆
個人的評価:★★★★
ページ数:207ページ





【本の紹介】(裏表紙より抜粋)

ありふれた「日曜日」。だが、5人の若者にとっては、特別な日曜日だった。
都会の喧騒と鬱屈とした毎日の中で、
疲れながら、もがきながらも生きていく男女の姿を描いた5つのストーリー。
そしてそれぞれの過去をつなぐ不思議な小学生の兄弟。
ふたりに秘められた真実とは。絡み合い交錯しあう、連作短篇集の傑作。



【目次】
第一章 日曜日のエレベーター
第二章 日曜日の被害者
第三章 日曜日の新郎たち
第四章 日曜日の運勢
第五章 日曜日たち
解説 重松清

【感想】
様々な若者の日常が切り取られて描かれおり、
そのほんの一部分が幼い兄弟ふたりによって、
重なって繋がれて紡がれている。そんな物語だった。
ていうか、本の表紙がかっこよすぎる。。。

医者の卵の女性のヒモとなっている男性。
友人が空き巣被害に遭ったという電話をして来て、怖くなり、
過去のことを思い出しながら真夜中に彼氏のもとへ向かう女性。
結婚も意識していた彼女を亡くした男性と、
知人の息子の結婚式の為に九州からやって来た、妻を亡くして数年の父親。
好きになった女性の運命に翻弄され、各地を転々と移動し生活する男性。
彼氏のDVに悩みながら、自立センターに駆け込む女性。

そんなそれぞれのストーリーの中に、九州から母親を探してやってきたふたりの少年が、
さりげなく登場する。さりげなく、というより、身寄りのないふたりの少年を
それぞれの登場人物が心配し、声をかけることで、ほんの少しだけ、関わっていく。

こうやって、ネタバレのあらすじを書いてみただけで、
やっぱり、吉田修一すごいなぁ。と思ってしまった。
それぞれ考え方も、立場もそれぞれの若者の日常を上手く描いていて、
その中にふたりの少年の物語を挟むことで、
複数の物語が平行的に存在していることを自然と感じさせる。

しかも、吉田修一さん、1968年生まれなのに、
なんでこんなに若者を描くのが自然で、うまいんだろう。

吉田修一さんの本は、「パレード」といい、この本といい、
何度も読みたくなる本です。読めば読むほど味が出てくる。という感じです。