2013年8月28日水曜日

100冊読書 19/100 『アホの壁』 筒井康隆

 読破っ!!
『アホの壁』筒井康隆(作家)
発行:2010年2月
難易度:★☆☆☆☆
ページ数:184ページ
 
【本のテーマ】
人はなぜ「アホ」なことをしてしまうのか?個人的な範囲から、組織的な範囲、そして、国レベルでの「アホ」な行為について分析し、論じていた。


【キーワード】
ナルシズム、罪悪感と自己破壊衝動、焦点的自殺、エロスとタナトス、
同種既存、文化的立場、精神の卓越、平和主義者
 
 
【目次】
序章:なぜこんなアホな本を書いたか
第一章:人はなぜアホなことを言うのか
第二章:人はなぜアホなことをするのか
第三章:人はなぜアホな喧嘩をするのか
第四章:人はなぜアホな計画をするのか
第五章:人はなぜアホな戦争をするのか
終章:アホの存在理由について

【概要】
序章では、本書を書くきっかけを述べていた。
新書の執筆を依頼されたときに、今の自分に何が書けるかを考えた末に、良識とアホとの間に立ちはだかる壁をなぜ人が乗り越えてしまうのか、について考えてみようと思ったから。と述べていた。

第一章では、ある個人がなぜ「アホ」なことを言ってしまうのかについて述べていた。
この本の中の「アホ」とは、ユーモアとは違う、価値のないつまらないものと定義づけていた。アホなことを言ってしまう理由として、①潜在的欲求②強迫観念③局面暴言④甘え、ナルシズム⑤社会的・歴史的背景⑥本物のアホ⑦バラエティ番組から学ぶ、という7つの要素を具体的事例と共に述べていた。

第二章では、ある個人がなぜ「アホ」な行動をとるのかについて述べていた。
おもに第一章で述べた①潜在的無意識(フロイト的なもの)によるものと、②罪悪感と自己破壊衝動による「焦点的自殺」(意識的に方向づけられる自己破壊)のもの、によると述べていた。
②の根本にある要素の例として、哀れな自分に酔うマゾヒズム的なナルシストがあると指摘していた。

第三章では、「アホな」喧嘩というものについて、その特徴と向き合い方について述べていた。
「アホな」喧嘩というものは、両者に何の利益も生み出さずに、不利益を生む。と述べ、それでもアホな喧嘩が起こってしまう原因として、喧嘩をしかけるものの生育環境を述べていた。最終的に「アホな喧嘩はアホが勝つ」と述べ、理論や理性で勝つことが不可能であるとし、矛先をそらすなどの方法をとらない限り、自分も「アホの壁」を超えてしまうことになる。と述べていた。

第四章では、組織の中でなぜ人は「アホな計画」を立て実行してしまうのかについていくつかの事例をあげて説明していた。
①専門家でない親戚友人で事業を立ち上げる②相反する意見を中途半端に混ぜ合わせる③成功の夢によって計画を進める④計画の良いところだけを数える⑤批判を悪意と受け取る⑥自分の価値観だけに頼る⑦成功した事業を名前からまねる⑧専門外のことに簡単に手を出す⑨低い予算で恰好だけつけるなど実際にあったことも含めた「アホな計画」について述べていた。

第五章では、「アホな戦争」がなぜ起こるのかについて述べていた。
「アホな戦争」とは、政治的・宗教的対立による戦争を含まない。として、①スポーツに見らる同種既存(ナショナリズム)の過激化による戦争②歴史の中で「女」が関係しておきた戦争、について述べていた。また、「戦争をなくす方法」について、アインシュタインとフロイトが手紙でやり取りしていたその内容をとりあげ、「文化」が知性を強化し、攻撃本能を昇華させ、内面化させる性質をもつため、戦争と対立する立場にある。と述べ、文化を高める教育を広めることが戦争をなくすことにつながると結論付けていた。

終章には、アホの存在意義について述べていた。
アホがいることで、反面教師になったり、問題が浮き彫りになったりする。と述べ、またアホがいることで、歴史がより豊かなものになった。としていた。また、アホな行為により、無意識の願望を発散することができるため、心のバランスをとる役割を「アホ」が担っているとも述べていた。

【感想】
題名を見たとき、「これ、パクリやん」って思いました。そして、著者をみると、「時をかける少女」とか、「ビーハップハイヒール」でお馴染の筒井康隆さんだったので、気になって読んでみました。
本の構成が、個人的な内面からどんどん組織になり、国になり、と話のスケールが広がっていくところが、さすが作家だ!と思いました。歴史的な話や、フロイトの専門知識の部分は少し難しかったですが、全体的に気軽に読める本でした。
ナショナリズムによる戦争を「アホな戦争」と言い切っているところや、「文化」が戦争と対立し、平和主義者を増やす。という話は共感できました。僕のある中国人の友達が「ヲタクは世界を救う」って言っていたのを思い出し、それをもう少し広く言うとこうなるのか!と思いました。
「アホ」という取っつきやすいテーマで、読みやすい文章で、読んだ時の第一印象は軽かったのに、こうやってまとめてみると、深い話だと再認識しました。「アホ」の深さについて考えるきっかけとなった本です。
また、「アホ」の原因の中にナルシズムという言葉が出てきており、「自己愛」と関連しているということが興味深かったです。人間が自己愛とどう向き合うのかというのは、根源的なテーマのように思います。

【個人的理解】
80% 世界史の歴史の引用、フロイトなどの引用の自分の理解が足りないので。
【個人的評価】
70点 気軽に読めるエッセイ的な本でした。

2 件のコメント:

  1. この本面白そう!!!!
    確かに、こう考えると、文化交流が国家間の対立を緩和できると言われることの根拠がわかるな!!
    そして他国が魅力を感じる程の文化を築かないといけない。そのために、「アホ」はなくてはならないものですね!!!

    一方で、ユダヤ人の音楽家のダニエル・バレンボイムが言ってたことやけど、芸術家(「アホ」な人)が国家を動かすようになることはよくないらしい。あくまで芸術家は芸術の本分を守り、そこからメッセージを出し続けるべきだと言っていました。
    確かに、例えば、フランス革命時代のフランス王家とか、応仁の乱の時の室町幕府とか、貴族や芸術家に翻弄されて芸術に投資しすぎて、貧困層の不満の爆発や他勢力の台頭を招きかえって社会を混乱させたのを見ればわかる気がします。

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    1. コメントありがとうございます!
      読みやすい本なので、ぜひ探してみてください!

      厳密にいうと、筒井さんの定義した「アホ」は「ユーモアとは違う、価値のないつまらないもの」なので、「文化」は「アホ」とイコールではないと思います。
      「芸術家(アホな人)」って書いたら芸術家泣いちゃうよ( ;∀;)
      けど、ガッキーが例にあげた「芸術」を始めとする「文化」っていうのは、正当なものから、アホと紙一重なものもあるから、アホに通じるところは大いにあると思った!

      ガッキーみたいに世界史に詳しいと本読んでも理解深いんかな!
      歴史もうちょい真面目に勉強すればよかった(>_<)これから本読んで少しずつ理解を深めます!

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