2013年8月15日木曜日

100冊読書 12/100 『こんなに違う中国人の面子』江河海

読破っ!!
『こんなに違う中国人の面子』江河海(出版社編集主任)祥伝社黄金文庫
発行:2004年6月
難易度:★★☆☆☆
ページ数:387ページ

 
【本のテーマ】
中国人が重きを置くと言われる「面子」。しかし、どんな面子に重きを置くかは、
性別、年齢、立場、地位、学歴、職業などによってちがう。
25人の中国人のインタビューを通して、面子を考察する。
  
【キーワード】
義理人情、見映え、虚栄、知识分子、文化大革命、面子プロジェクト
面子を立てる、面子をつぶす、面子を鑑みる、面子に執着する、面子を飾る、
面子に囚われる、面子を競う、面子を保つ
白粉は顔にぬれ(何かをするときは、他人が見て一目でわかるようにやれ。)
人要脸 树要皮( 人にとってメンツは樹木に樹皮が大事であるように重要なことだ)
死要面子,活受罪 (死んでも面子が大事という態度)
 
【目次】
前書き
第一部:北京人の面子
第二部:地方人の面子
訳者あとがき
 
【概要】
25人の内訳(男16女9)

第一部(男7女6)
軍の古参幹部の息子、リストラされた失業者(男性)、二度離婚した男、タクシー運転手(男性)、
女子高校生、高級ホテル勤務男性、工場勤務女性、元不良男性、紀律検査機関女性官僚、
高校教師女性、貿易会社副社長女性、低所得家族女性、金持ち不動産業(男性)

第二部(男9女3)
研究所勤務男性、貧乏からはい上がった男性役人、男性役人、会社員男性、社会学者男性、
男性役人、水商売の女性マネージャー、会社男性社長、男性役人、出版社女性編集者、副社長男性、外資系企業勤務女性

【感想】
発行年数が少し古いけれど、一人ひとりの詳しいインタビューが独白形式で書かれており、
とても具体的で、個人的なエピソードがたくさん載っていました。
小説を読んでいる感覚で読めました。
あまりにも具体的なので、実は空想上の人物を描いているだけなのでは?という疑念も
持ちつつ読みました。(^-^;
しかしどちらにせよ、中国人が思う「面子」というものが随所に描かれていて、
理解が深まったと思います。時間を空けてもう一度読みたい本です。
そして、原文でも読んでみたいです。

「面子」というものを日本語で説明しようとすると、以下のような言葉があると思います。
見栄を張る、体裁を保つ、自己愛、誇り、プライド、
筋を通す、義理人情に流される、個の尊重
自分と相手の立場・身分の理解、
人聞きが良い・悪い、見栄えがする・しない

そして、中国人の多くの人が「面子がつぶされた」という経験をした大きな出来事のひとつとして、
「文化大革命」があげられていました。
それまで大学生、大学教授などの識者(知识分子)が
価値があるとして、もてはやされていた時代から打って変わって、
実務経験がある者が価値があるとされ、知識では太刀打ちできない、という
事態に直面した。というエピソードがあげられていました。

訳者のあとがきも興味深くて、
中国人の面子は、虚栄心や嘘つきだと捉えられることがあるが、
それは実は、他者に何かをあげるときにより見映えの良いものをあげたい、という気持ちや、
他者をより喜ばせてあげたいという情に流されている(できなくても引き受ける)
という側面もある。と述べていました。

なぜ面子にこだわるのか、という点に関しては、
訳者自身まだ結論は出ていないですが、
一つの考察として、中国人が「超現実主義」だからだと述べていました。
広大な国で出会う未知の人を瞬時に判別するために、
分かりやすい、表面的で現実的なものから評価し、信用する。
という心理メカニズムができていったのではないか。というふうに述べていました。

そして、もっとも感銘を受けたのは次の文章です。
――つまるところ、メンツは中国人の行動原理なのである。
なぜ人と仲良くしなければならないのか。なぜ、人としてこうあらねばならないのか。
この「なぜ」の部分をどう説明するかは、国や民族、宗教、文化によって違う。
日本人でいえば、ムラ社会からくる共同体原理、「場の和」がそれにあたるだろう。
中国では、それを「メンツ」で説明する。――

自分の卒論のテーマ「面子文化」と「空気文化」の関係性がより理解できました。
二つに関連性と共通点があるという自分の仮説が裏付けられたようで嬉しかったです。

【個人的理解度】
70%
個人的なエピソードの量が多かったので、
分析、という点での理解はまだしきれていないです。

【個人的評価】
90点
もう一度読み返したら、もっと理解が深まると思いました。
また、原文でも読むと、中国語の理解も深まると思いました。

0 件のコメント:

コメントを投稿