2014年9月17日水曜日

114/200 『くまモンの秘密』熊本県庁チームくまモン(公務員)


読破っ!!
『くまモンの秘密』熊本県庁チームくまモン(公務員)
発行:2013年3月 幻冬舎新書
難易度:★
資料収集度:★
理解度:★
個人的評価:★★
ページ数:253ペー



【本のテーマ】(表紙裏より抜粋)
平成二十二年「くまもとサプライズ」キャラクターとして登場したくまモン。
商品売り上げは一年で二百九十三億円、熊本のブランド価値向上への貢献は計り知れない。
ゆるキャラ・くまモンを「売るキャラ」に育て上げたのは、PRもキャラクタービジネスも経験ゼロの、
しがない地方公務員集団・チームくまモン。
くまモン失踪事件などの物語戦略、利用料フリーで経済を活性化させる楽市楽座戦略等等、
公務員の常識を打ち破る自由な活動を展開し、自治体史上例のない成功を遂げた
奇跡のプロジェクトの全貌。

【目次】
第一部 くまモン関西戦略の秘密(熊本県庁チームくまモン関西部隊)
 第一章 熊本をPRしないPR戦略
 第二章 くまモンは日々進化する
 第三章 費用対効果は予算の八倍
 第四章 ゆるキャラから売るキャラへ
 第五章 ダメ出しにくじけずアイディア量産

第二部 くまモン地元戦略の秘密(熊本県庁チームくまモン熊本部隊)
 第六章 原点は保育園・幼稚園の子どもたち
 第七章 迷ったらGO!

第三部 くまモン・トップ戦略の秘密(熊本県知事・蒲島郁夫)

【感想】
 今やどの県へ行っても視界に入ってくるくまモン。
そのくまモンがどうやって今の人気や知名度を築いていったのか、その歴史が書かれていました。
熊本を日本に広める!という壮大なテーマについて書かれているのに、
文章はわりとゆるめの語り口調、ときには自分でツッコミを入れつつ、
そして、随所に「くまモン愛」がちりばめられた、まさに「ゆるく」て、読みやすい本でした。

全体を通しての感想として、
僕は、くまモン誕生の背景にあったストーリーこそが一番大きな「人気の秘密」なのだと思いました。
まず、九州新幹線が開通するプロジェクトが立ち上がり、
博多から鹿児島までが関西から新幹線で手軽に行けるようになる。
その通過地点に熊本県があった。
ここで、このチャンスをモノにしなければ、熊本県はただの「通過地点」になってしまう。
そんなピンチとチャンスが一気に来たような状況で、
「くまもとサプライズ」というテーマを掲げて生まれたのがくまモン。
2010年3月に誕生してから、2011年3月12日の九州新感性開通までの1年間で、
熊本県を日本(特に新幹線開通後の主力ターゲットと想定された関西)に広げる、
という大きな使命を抱えて活動をしていました。

九州新幹線の両端の駅である博多と鹿児島にもきっとゆるキャラがいて、
同じように九州新幹線開通に向けて、
PR活動をしていたのではないかな。と思います。
しかし、くまモンはとび抜けて有名になったのは、
「ピンチとチャンス」と言ったように、覚悟が違ったというのもあるけれども、
やはりそこには「戦略」の違いがあるのだと思いました。
本の中にも出てきていた、「熊本をPRしないPR戦略」というのは面白く、
他の企業や他の県の良さ(くまモンの場合:大阪)を紹介することで、話題性を作り、
お互いの知名度を高める、という「相乗効果」を狙った斬新な戦略が功を成したのだと思います。
「相乗効果」を狙うにあたって、くまモンは余計な「属性」が少ない、普遍的な外見をしていたので、
様々な企業や県とコラボが出来たのだとも書かれていました。
(「ご当地属性」などを盛り込み過ぎると、コラボしても違和感が生じやすい。)
そういう意味で、普遍的でキャッチ―なビジュアルをデザインした水野学さん、
そしてプロデューサーの小山薫堂さんの功績だと思います。

他にも、なるべくお金をかけないように、SNSを使った話題性にとんだPR活動や、
ある一定の条件を守ればマージンを受け取らないという「著作権フリー」、
そしてなにより、自らもPR活動に参加し、様々な企画にGOサインを出した熊本県知事、
様々な要素が重なって、くまモンが沢山の人から愛されるようになったのだと思いました。

著者がくまモン愛しすぎていて、いろんな夢や理想、アイディアを語っているのが、
面白かったです。けれども、熊本県庁チームくまモンの会議では、
そんな夢いっぱいの案も「いいんじゃない!?」と受け入れてもらえる場であった
というのも大きな要因だと思いました。

くまモンが広く知れ渡った今、チームくまモンは
「持続可能な仕組みづくり」という目標を含んだ「くまモンフェーズ2」
に突入している、と書かれており、くまモンの戦略はまだ続くのか!と思いました。
他にも、チームくまモンの同僚曰く、「くまモンと一緒に仕事をしてから意識が変わった」
公務員は、「こういう理由があるからできない。」ということが多かったけれども、
「くまモン」によって熊本の知名度を上げる、というゼロから一を作り出す仕事に関わるうちに、
「できないなら、どうすればできるようになるのか」と考えるようになり、
部署が移動になってからもその発想を続けることができている。と述べていて、
熊本を内側からも活性化する効果があったのだと言えます。
チームくまモンの人事異動が頻繁に行われた、と書かれていたのですが、
それもきっとその感覚を体感してもらったうえで、公務員業務をして欲しかったからではないかな?
という想像も広がりました。

「チームくまモン」こと、「くまもとブランド推進課」が、
雑誌『日経ビジネス』の「奇蹟を起こす すごい組織100」の一つに選ばれた、
というのも納得できるほど、クリエイティブで、アクティブな、公務員の方々の奮闘記でした。

2014年9月9日火曜日

113/200 『日本人はこれから何を買うのか?』三浦展(消費社会研究家)


読破っ!!
『日本人はこれから何を買うのか?「超おひとりさま社会」の消費と行動』 三浦展(消費社会研究家)
発行:20113年4月 光文社新書
難易度:★
資料収集度:★
理解度:★
個人的評価:★★
ページ数:203ペー


【本のテーマ】(表紙そでより抜粋)
2035年、「一人暮らし世帯」が1846万世帯となる。
逆に、かつて主流だった「夫婦と子供世帯」は1153万世帯に減る。
平均的だと思っていた日本の家族像がもはや過去のものになりつつあるのだ。
また、「一人暮らし」というと、未婚の若者といったイメージが強かったが、
今後20代、30代の一人暮らしは減り、代わりに高齢者のおひとりさまが急増する。
「超おひとりさま社会」になることを前提に、社会全体を見渡さなければならない。
個人化・孤立化が進む中、ライフスタイルはどう変わっていくのか。
モノを買わない時代、人々は何を求めているのか。キーワードは「シェア」と
「共費」。さまざまな地域や企業の取り組みを紹介しつつ、
日本社会のゆくえを予測する。

【目次】

第一章 老若男女すべて「おひとりさま」
第二章 おひとりさま消費の現状
第三章 おひとりさまは何が欲しいのか
第四章 コミュニティという商品を買う時代

【概要】
国立社会保障・人口問題研究所のデータを元に、今後高齢者の「おひとりさま」が増加し、
また「家族」という形態も変わってくる、ということを述べ、そこから予想される消費について述べていた。

近年の傾向として、消費の各項目ごとの昨年比の増加率データを元に、
シニア男性の「若者化」、シニア・ミドル女性の「アクティブ化」、ミドル男性の「おうち志向化」、
若年女性の「男性化」、若年男性の「主婦化」などについて述べ、
かつての年齢・性別による固定的な価値観や制約がより少なくなって来ていると述べていた。

おひとりさまの欲しいものとして、様々な具体例を挙げていた。
この本の中の「おひとりさま」の構成比として、高齢者が多い、という前提があった。
買い物難民(今は「買い物弱者」という言い方に変わったらしい)にならないためのサービス、
家事代行サービス、ルームシェアのサービス、リノベーション、
など、より生活に密着したサービスを求める傾向が以前に増して高まっている。

第四章では、「超おひとりさま社会」への対応として、
コンビニに地域のコミュニティ機能を持たせた「コムビニ」(community +convenience)という概念を
提唱していた。
ただ便利なだけではなく、そこに地域のコミュニティ機能を持たせ、
地域との繋がりを感じ、助け合う社会を作り出していくことが、
「おひとりさま」が孤立・孤独にならずに安心・安全に生きていくために必要である。

【感想】
将来の日本が心配になった!少子高齢化。そして、高齢者は「おひとりさま」になる。
そんな社会でどうやって「おひとりさま」を守っていくのか。
そんなテーマについて述べた本でした。

「コムビニ」という概念はとてもユニークで、未来的だと思いましたが、
やはり、三浦展さんの本は、以前も読んだ時にも思ったのですが、
若干、理想論である気がします。
コミュニティというのは、地域性だけで成り立たせるのはとても難しいと思います。
地域性とはすなわちその中に多様性が存在し、
子どももいれば、年寄りもいるし、いい人もいれば、犯罪者もいる。
目的の共有も共通点もなければ、地域性だけではコミュニティになじめない人もいる。
そんな人も含めて、一概に「こうすればこうなる。」とは言えないものだと思います。

けれども、今後の「超おひとり様社会」を考えると、
何かしらの地域によるサポートや繋がりの創造というものが
必要なのだろうな、とも、再認識させられました。
実際に今コンビニでは、高齢者の「おひとりさま」に向けた宅配サービスや、
移動販売を行っているし、コンビニが地域に貢献する役割を持ち始めています。
しかし、そこに「コミュニティ」や「人との繋がり」という機能を持たせる、
というところまでは、辿り着けていないように思います。
というのも、民間企業はお金を稼ぐことが目的だから、個々のサービスに限界があると思うので、
今後は官民一体となったサポートが必要となってくるのではないか、と考えました。

2014年9月3日水曜日

112/200 『趣味力』秋元康(プロデューサー)


読破!!
 『趣味力』秋元康(プロデューサー)
発行:2003年4月 生活人新書
難易度:★
感動度:★★
共感度:★★
個人的評価:★★
ページ数:200ペー

【本の紹介】(表紙そでより抜粋)
人生の後半で、ではなく、今、趣味を始めよう。一日十九時間、仕事に没頭する毎日を送ってきた秋元康が、四十代半ばになって趣味の陶芸に夢中になっている。今何故この年で趣味を始めたのか。同世代の読者に向けて、初めの一歩を強力に後押しする。人生の濃さを決める「趣味力」とは何か、著者は諄々と語り始めた。

【目次】
第一章 今日した仕事に「初めて」はあったか
第二章 男を強くするこだわりと偏り
第三章 僕は趣味のギャンブルから人生を学んだ
第四章 趣味探しとは自分の価値観探しである
第五章 趣味は人生だ


【要約】
一日は誰にも等しく24時間しかない。その時間をいかに濃密に過ごすか。その最大の鍵が「趣味力」である。年をとるに連れて「初めて」のことが少なってくる。そんな中でも、あえて「初めて」の中に積極的に飛び込んでゆき、そして、その「初めて」の中に達成したい「夢」を見ることができることが、人生を輝かせ、仕事や生活を豊かにする秘訣である。
 しかし、いざ「趣味を始める」となっても、世間の流行りや年相応な趣味に落ち着いても、長続きしないことが多い。食わず嫌いをせず、様々なことに挑戦し、その中で「これだ」と思うものに、とことんこだわる姿勢が大切である。例えるならば、いつも5分遅れで時を刻む腕時計と、ある時間をさしたまま止まっている腕時計。前者は永遠に正しい時間を示すことはないが、後者は一日に2回だけ正しい時間を示すことができる。そのように、自分なりの「こだわり」、や自分の色を持つことが、ある時、誰かからその存在を求められることにつながる。
 幸せとは「自己満足」の瞬間の連続である。人生には自分の思い通りに行かないことが多い
けれども、趣味の中では、その反動を補うことができる。
自分が満足できる瞬間を作り出す、という意味で、趣味は大きな意味を持っている。

【感想】
AKBのプロデューサー秋元さん。彼は人生を楽しんでいるなぁ。とつくづく思わせられる本でした。
人生が思うどおりにならない、そのストレスを補うための趣味、自己満足としての趣味。
自己満足、と自己完結はまた違っていて、自己満足を誰かと共有することができたなら。
それはとても幸せなことなのではないかと思いました。
誰にも認められなくても、こだわりをもった人たちが自分たちの色を感じられる瞬間。
その瞬間こそが、趣味の中でも最高の自己満足であり、幸せに直結するものだと思う。
もちろん、仕事や生活の中で認められることが幸せにつながるのも確かだと思うけれども、
現実はそんなに簡単にいかないから、
仕事や生活に支障を来さない限りで「趣味」でそのギャップを補うことは大切だと思う。

秋元さんが始めた陶芸も始めるまではそんなにはまると思っていなかった、と述べていた。
自分が何に出会うかなんて分からないから、
自分の未来が自分が思い描いていたものと違うことに面白みを感じられる人生観が
大切だ、というメッセージは、羽生棋士の「直感力」にも通じるところがありました。

2014年8月30日土曜日

111/200 『平面いぬ。』乙一(作家)


読破!!
『平面いぬ。』乙一(作家)
発行:2003年6月 集英社文庫
難易度:★
感動度:★★
共感度:★★
個人的評価:★★
ページ数:345ペー


【本の紹介】(裏表紙より抜粋)
「わたしは腕に犬を飼っている――」ちょっとした気まぐれから、謎の中国人彫師に彫ってもらった
犬の刺青。「ポッキー」と名付けたその刺青がある日突然、動き出し・・・。
肌に潜む犬と少女の不思議な共同生活を描く表題作ほか、その目を見た者を、
石に変えてしまうという魔物の伝承を巡る怪異譚「石ノ目」など、
天才・乙一のファンタジー・ホラー四編を収録する傑作短編集。


【目次】
石ノ目
はじめ
BLUE
平面いぬ。

【感想】
乙一さんの本は、毎度ながら、それぞれの世界観が濃くて、おもしろかったです。
「石ノ目」は、日本の伝承とか、妖怪とか、そういう日本の古い雰囲気のあるホラーでした。
最後の結末が予想外で、切なるお話でした。

「はじめ」は、小さい頃の不思議な体験がさらに少し飛躍した感じの、
冒険、という言葉が似合う、ホラーというよりも、少し暖かい感じのする話でした。

「BLUE」は、この4つの中で一つだけ際立って異色の世界観でした。
魂を持つ不思議な布で作られたぬいぐるみ達のお話で、
その中でも、余った布の切れ端で無理やり作られたBLUEと、
ぬいぐるみ好きな姉にいじわるをする不器用な弟との交流が、
少し怖くもあり、見た目に囚われない愛情を感じることができる作品でした。。
トイストーリーをダークファンタジー風にした感じのユニークな世界観でした。

「平面いぬ。」は、設定からして不思議で面白かったけど、
体中を動き回る「青い犬の刺青」をめぐる奇想天外なストーリーが面白く、
サクサク読めました。

乙一さんの小説は、設定やアイディアが印象に残るものが多いので、
作品の題名と、数ページをちらっと見返すだけで、内容を割と思い出せるので、
よくこんなに印象に残るお話を思いつくなぁ。とつくづく尊敬します。

110/200 『蹴りたい背中』綿矢りさ(作家)


読破!!
『蹴りたい背中』綿矢りさ(作家)
発行:2003年8月 河出書房新書
難易度:★
感動度:★★
共感度:★★
個人的評価:★★
ページ数:140ペー


【本の紹介】(Amazon.comより抜粋)
高校に入ったばかりの蜷川とハツはクラスの余り者同士。
やがてハツは、あるアイドルに夢中の蜷川の存在が気になってゆく…いびつな友情?
それとも臆病な恋!?不器用さゆえに孤独な二人の関係を描く、待望の文藝賞受賞第一作。
第130回芥川賞受賞。


【感想】
若い作者が書いただけあって、とても読みやすかったです。
蜷川というキャラクターの「キモさ」がうまく描かれていて、
でも、ただキモイだけではなく、自分なりの考えを持って、自分の言葉で話す、
そんな意志の強さみたいなものも感じられる、憎めない感じのキモさが描かれていました。
蜷川とハツの、気を遣わない、遠慮のない関係。
これを恋と呼んでしまうのはなんだか違う気がしたけど、
とあるきっかけで無防備な人間性を見せた蜷川の懐に飛び込んだハツが、
その居心地の良さに居座ってしまっている。という印象を受け取りました。

多分、彼らは学校を卒業したら、連絡も取り合わなくなるんじゃないかな。
二人の関係は、「学校」という閉じられた特殊な環境だからこそ生まれた緩い関係性だから。
けど、そういう友情もあったよなぁ。てか、あってもいいんじゃないかな。と思う一冊でした。

109/200『横道世之介』吉田修一(作家)


読破!!
『横道世之介』吉田修一(作家)
発行:2012年11月 文春文庫
難易度:★
感動度:★★
共感度:★★
個人的評価:★★
ページ数:467ペー


【本の紹介】(裏表紙より抜粋)
大学進学のために長崎から上京した横道世之介18歳。愛すべき押しの弱さと隠された芯の強さで、様々な出会いと笑いを引き寄せる。
友の結婚に出産、学園祭のサンバ行進、お嬢様との恋愛、カメラとの出会い・・・・・・。
誰の人生にも温かな光を灯す、青春小説の金字塔。
第7回本屋大賞第三位に選ばれた、柴田錬三郎賞受賞作。


【目次】

四月 桜
五月 ゴールデンウィーク
六月 梅雨
七月 海水浴
八月 帰省
九月 新学期
十月 十九歳
十一月 学祭
十二月 クリスマス
一月 正月
二月 バレンタインデー
三月 東京

【感想】
このリア充め!!って言いたくなる青春小説でした。
でも、ただのリア充ってわけではなく、どこか憎めない感じがある物語でした。
そして、小説の中で、大学時代に世之介と関わった人が、
何年か後に世之介の事をふと思い出すシーンをちょいちょい挟んでいるのが、
すっごくよかったです。
大学時代の人との出会いが、のちの人生にほんの少しだけ影響している。
というのが、時間の流れを感じさせる、リアルな感じがしました。

登場人物が、割と親しみを持てるキャラクターの人が多く、
読んでいるうちに、自分の知り合いを登場人物と重ねて読んでいることに気付きました。
そして、その人物の事を思い出して、ちょっと懐かしい気持ちになりました。

自分の中で唯一共感できないのが、
自動車教習所でお嬢様とその友達から逆ナンパをされる。というシチュエーション。
ありえへん!と心の中で突っ込んでしまったけれども、
その他のところは、ぼんやりとしているようで、割といろんなところに飛び込んでいく
世之介の人柄がすごく素敵だな。と思いました。

映画化もされているようで、原作の緩くて、自由な感じをどれだけ表現できているのか、
気になります。けど、お嬢様の祥子役に吉高さんを当てているのは、なんか違うと思う。涙

108/200『パーク・ライフ』吉田修一(作家)


読破!!
『パーク・ライフ』吉田修一(作家)
発行:2004年10月 文春文庫
難易度:★
感動度:★★
共感度:★★
個人的評価:★★
ページ数:177ペー


【本の紹介】(裏表紙より抜粋)
公園にひとりで座っていると、あなたには何が見えますか?
スターバックスのコーヒーを片手に、春風に乱れる髪を押さえていたのは、
地下鉄でぼくが話しかけてしまった女だった。なんとなく見えていた景色が
せつないほどリアルに動き始める。
日比谷公園を舞台に、男と女の微妙な距離感を描き、芥川賞を受賞した傑作小説。


【目次】

パークライフ
flowers

【感想】
わりと鮮明に映像が頭に浮かぶ小説でした。
特に表題の「パークライフ」は、日比谷公園が舞台って書いてるんですが、
自分の中ではパリあたりの、やたらおしゃれな街をイメージしていました。
そして、話の中にあった印象的なシーンで、
地下鉄から下を向いて地上にでて、なるべく周りの景色を見ず、
公園の噴水の近くのベンチまで来て、見晴らしが良いところで一気に顔をあげると、
遠近感で錯覚を起こし、言いようのない快感が得られる。
っていうような描写があって、体験してみたいなー!!と思いました。
このシーンも、映画のワンシーン見たく、「絵になる」なぁ。と思いました。
裏表紙の「男女の微妙な関係性」というのも、微妙過ぎだと思いましたが、
決して居心地が悪い感じではなく、
初対面同士、探り探り少しずつ近づいていく感じがよかったです。

それとうって変わって、「flowers」は、どろどろした感情の描写が多く、
舞台も汗っぽい、自動販売機にジュースを補充する職場に転職した男性が主人公で、
「パークライフ」とはまた違った世界観で、その対照的な感じが印象的でした。

107/200 『カミングアウト』高殿円(作家)


読破!!
『カミングアウト』高殿円(作家)
発行:2011年2月 講談社文庫
難易度:★
感動度:★★
共感度:★★
個人的評価:★★
ページ数:379ペー


【本の紹介】(裏表紙より抜粋)
心の中に抱えた秘密。言ってしまったら取り返しのつかなくなるような言葉。
いまなら、言えるんじゃないのか―――。
コインロッカーに衣装を預けて複数人格を楽しむ17歳の女子高生さちみ。
ロリィタ服趣味をひた隠しにしつつそろそろ結婚もしたい、プチお局の29歳OLリョウコ。
”それ”をカミングアウトしたとき、自分は、周囲は、どう変わる?
ストレス解消、すっきりエンタメ!


【目次】

コインロッカークローゼット
オフィス街の中心で不条理を叫ぶ
恋人と奥さんとお母さんの三段活用
骨が水になるとき
老婆は身ひとつで逃亡する
カミングアウト!
エピローグ

【感想】
以前ドラマ化され話題になった「トッカン!」の著者の本ということで、
これも題名と表紙のインパクトで買った一冊。
登場する人々がそれぞれ胸にもやもやした思いを抱えていて、
最後の章でそれを大声でカミングアウトする!というシーンは、
胸がスカッとするものがありました。

その中でも、「骨が水になるとき」という章が特に印象に残りました。
46歳の独身男性が結婚を諦め自分の入る墓を探しに来ていた時に、
家出して放浪していたコインロッカーに複数人格の服を入れている「リンゴ」に出会う。
二人が話す中で「人は死んだらどうなるの?」という話になり、
「骨になって、、、、その先は、水になるんだよ。」という会話があった。
理論上は骨はカルシウムだから、最終的には水になるらしいのだけれども、
誰もそれを見たことが無いのにそう信じている。それって不思議だよね。
それと一緒で、世界には「神話」が溢れていて、
「家族」は仲良くなきゃいけない、「男」は女をリードしないといけない、
「こうあるべきだ、こうじゃなきゃいけない」
という「神話」が人々を苦しめている。

というような会話があって、深ぇ~!!と思いました。
上手く説明できませんが、、、
そういう会話を不自然な感じではなくしていて、
また、放浪女子高生が「神話」と戦って必死に「生きよう」としている姿と、
「死を思う」独身貴族の対照性が、印象的でした。
二人がお互いに見えていない世界観があるということを、
お互いが分かってそれを知りたいと思っている。
そういう思いが伝わってくるようでした。

「普通」という「神話」の下に、本当の、リアルな「生」があるんだ。
って思える一冊でした。

106/200『ボックス!』百田尚樹


読破!!
『ボックス!』百田尚樹(作家)
発行:2013年4月 講談社文庫
難易度:★
感動度:★★
共感度:★★
個人的評価:★★
ページ数:401ペー


【本の紹介】(裏表紙より抜粋)
天才的なボクシングセンス、だけどお調子者の鏑矢義平と、勉強はお得意だけど運動が苦手な木樽優紀。真逆な性格の幼馴染二人が恵比寿高校ボクシング部に入部した。一年生ながら圧倒的な強さで勝ち続ける鏑矢の目標は「高校三年間で八冠を獲ること」。だが彼の前に高校ボクシング界最強の男、稲村が現れる。

【目次】
第一章 耀子、風を見る
第二章 いじめられっ子
第三章 モンスター
第四章 事件
第五章 ジャブ
第六章 サイエンス
第七章 右ストレート
第八章 マスボクシング
第九章 国体予選
第十章 文武両道
第十一章 恐怖心
第十二章 ケンカ
第十三章 インターハイ
第十四章 合宿
第十五章 左フック

【感想】
ザ・スポ根!小説でした。
特徴としては、一章ごとのページ数がそんなに多く読みやすいこと、
ボクシングに関する知識が豊富に描かれている、
初心者の優紀が徐々に上達していく姿に胸が熱くなること。って感じです。
本の世界に入り込みやすい、分かりやすい文章の書き方だから、
読んでいると、シャドーボクシングの練習のシーンとかでは、
つい一緒に真似したくなって、途中で本をおいて鏡を見ながらパンチをしていました。笑

ボクシングというのが力任せの、荒くれ者のスポーツというイメージが強かったのですが、
文武両道を目指す優紀の姿勢であったり、恵比寿高校ボクシング部の他の先輩の方々の人柄を
みると、「スポーツとしてのボクシング」はもっとシビアで精神的・肉体的に鍛えられるスポーツなのだな。と思いました。

上巻では、優紀の幼馴染でボクシングの天才・鏑矢が活躍するシーンが多かったのですが、
下巻では上達した優紀が鏑矢を追い抜くというような伏線が張られていたので、
読むのが楽しみです。

105/200 『きみはポラリス』三浦しをん(作家)


読破!!
『きみはポラリス』三浦しをん(作家)
発行:2011年3月 新潮文庫
難易度:★
感動度:★★
共感度:★★
個人的評価:★★
ページ数:384ペー

【本の紹介】(裏表紙より抜粋)
どうして恋に落ちたとき、人はそれを恋だとわかるのだろう。三角関係、同性愛、片思い、
禁断の愛・・・言葉でいくら定義しても、この地球上にどれひとつとして同じ関係性はない。
けれど、人は生まれながらにして、恋を恋だとしっている――。
誰かを大切に思う時放たれる、ただ一つの特別な光。カタチに囚われずその光を見出し、
感情の宇宙を限りなく広げる。最強の恋愛小説集。


【目次】
永遠に完成しない二通の手紙
裏切らないこと
私たちがしたこと
夜にあふれるもの
骨片
ペーパークラフト
森を歩く
優雅な生活
春太の毎日
冬の一等星
永遠に続く手紙の最初の一文

【感想】
 題名と表紙のインパクトでジャケ買いした一冊。
恋愛小説と書かれているけど、べたな「純愛」のお話はありませんでした。
本の中にはたくさんの関係性が出てきて、様々な視点からの日常が描かれていました。
短編集なのですが、それぞれの主人公や世界観がバラバラで、
同じ著書の小説を読んでいるのかよく分からなくなるくらい、
文章のタッチも登場人物の価値観も違うお話でした。

自分的には「冬の一等星」が一番好きな短編でした。
スーパーの駐車場で女の子が母親の車に隠れていたら、
急用で大阪まで帰らないといけなかった見知らぬ男がその車を盗み、
高速道路の上で女の子が乗っていたことに気が付く。というお話。
状況だけみるとかなりヤバい状況なのに、そんな中で交わさせる二人の会話が、
なんだか温かくて、その女の子が大人になってからも忘れられないでいる。というお話。

状況とか、はたから見た感じとかで人と人との関係性を説明できるほど簡単ではなくて、
人と人との関係性っていうのは、星の数ほどある。奥深いものなんだ。
という、本のテーマが良く現れている話だと思いました。

2014年6月2日月曜日

105/200『直観力』羽生善治(棋士)

読破!!
『直観力』羽生善治(将棋棋士)
発行:2012年11月 PHP文庫
難易度:★
感動度:★★
共感度:★★
個人的評価:★★
ページ数:210ペー


【本の紹介】(裏表紙より抜粋)
個性、持ち味を大切にすれば、悩み、迷いがなくなる。
無駄はない、「見切る」ことができるか、力を借りる、忘れること、客観的に見ること、
キャンセル待ちをする、思い通りにならない自分を楽しむ


【目次】

第一章 直感は、磨くことができる
第二章 無理をしない
第三章 囚われない
第四章 力を借りる
第五章 直感と情報
第六章 あきらめること、あきらめないこと
第七章 自然体の強さ
第八章 変えるもの、変えられないもの


【感想】
プロの将棋棋士である羽生さんが、人生を通して学んだ教訓がたくさん書かれていました。
一章の中の節ごとの文章が短いので、短い時間でも細切れに読める本でした。
しかし、ところどころハッとさせられる言葉が書かれていて。深いなぁ。と思いました。

いくつか深いなと思った言葉(概要)を紹介させていただきます。
自分なりの理解でまとめているので、本文とは少し違うかもしれませんので、気になる方は自分で読んでみてください!

モチベーションとは天気のようなものだ、しかし、モチベーションが上がらなくても、そんな中で必死に頑張ることが大切だ。

本来、将棋の世界では師は弟子に簡単に答えを教えない。もがき苦しみ、悩む弟子を師は暖かく見守る。そして、悩んだ末に答えを出すことが、弟子の成長に繋がり、そうして掴んだものは、簡単に答えを与えられてしまうよりも、長い間記憶の中で消えないからだ。逆に簡単に答えを教えてしまう、ということは、親切な事のように見えて、実はそうでないことがある。
将棋の世界に限らず、弟子は最終的には自分の力だけで生きていくという覚悟が必要だ。
そのためには、簡単に答えを得るのではなく、ベストではなくても、自分の納得のいく、自分らしい選択をすることが必要である。

ミスをしたときには、それまでの予定が狂ってしまい、焦り混乱しミスを取り戻そうとしたりして、さらなるミスをしてしまうことが多い。そんな時は、一息ついて、「自分は今、この盤面をもし「初めて」見たとしたら、自分はどんな手を打つか」と考えるのが良い。それまでの連続した局面を忘れ、新たな気持ちで落ち着いて局面に向き合うことで、さらなる失敗をしなくてすむ。

将棋とは基本的に自己否定のゲームである。現在の局面には否定的、しかし、全体としては楽観的。そのような態度で挑んでいる。人生においても、将来に否定的にならず、現状を楽観視しない姿勢が大切である。

将棋の世界も日々刻一刻と変化し続けている。棋士もそれに合わせて変化しないと、古くなり、淘汰されてしまう。しかし、かと言って、「急激な改革」をしたとしても、それはそれで失敗することが多い。少しずつ、長い時間をかけて、方向性を見失わないまま変化していくのが望ましい。

想像力と創造力について。想像力とは、過去から現在までの現状を分析し、そこから少し未来のことを想像する力。創造力とは、その想像した未来を実現するために具体的に行動に移すこと。その二つのサイクルを繰り返し続けることが大切である。

日本文化は、「水面下」を読むことを伝統的文化としている。短歌も俳句も、茶道も、将棋も、長い時間をかけて「よりコンパクトに」なり、現在の姿となった。そしてその「コンパクトさ」の中に、当事者がおかれた時間や世界観を読み取り、それを「追体験」することが日本文化の神髄であるといえる。現代における半導体技術の躍進、コンビニ文化の発達、Twitterなどにも、そこに共通する日本の精神が隠れている。

羽生さんが将来を思い描くとき、「こうなりたい」と思い描いていたものと違うものになることを理想としている。思い通りになると面白みがない。アクシデントや偶然や運、ツキなどによって変化する自分の周りの環境に対して、納得しながら変化する自分を楽しみたい。と述べていた。

104/200『輝く夜』百田尚樹


読破!!
『輝く夜』百田尚樹(作家)
発行:2010年11月 講談社文庫
難易度:★
感動度:★★
共感度:★★
個人的評価:★★
ページ数:210ペー


【本の紹介】(裏表紙より抜粋)
幸せな空気感溢れるクリスマスイブ、恵子は7年間働いた会社からリストラされた、さらに父さんの危機に瀕する弟になけなしの貯金まで渡してしまう。「高望みなんてしない、平凡な幸せが欲しいだけなのに」。それでも困っている人を放っておけない恵子は、一人の男性を助けようとするが――。
5編の泣ける奇蹟。


【目次】

第一話 魔法の万年筆
第二話 猫
第三話 ケーキ
第四話 タクシー
第五話 サンタクロース

【感想】
ロマンチックな短編集でした。
舞台はクリスマス、それぞれの主人公は女の人。
それぞれの話に情熱的ではないけれども、ほっこりするような恋愛のエピソードが描かれていた。
文章構成や話の構成も、一辺倒ではなく、それぞれ新しい描き方にチャレンジしている。
そういう印象を受けました。
「奇蹟」的な展開にどこか醒めてしまいながらも、でも、読むだけで人の優しさに触れられたような気がして、暖かい気持ちになれる本でした。

2014年5月10日土曜日

103/200『百瀬、こっちを向いて。』中田永一


読破!!
『百瀬、こっちを向いて。』中田永一(作家)
発行:2010年9月 祥伝社文庫
難易度:★
感動度:★★
共感度:★★
個人的評価:★★
ページ数:275ペー



【本の紹介】(裏表紙より抜粋
「人間レベル2」の僕は、教室の中でまるで薄暗い電球のような存在だった。野良猫のような目つきの美少女・百瀬陽が、僕の彼女になるまでは――。しかしその裏には、僕にとって残酷すぎる仕掛けがあった。「こんなに苦しい気持ちは、最初から知らなければよかった・・・!」恋愛のもつ切なさすべてが込められた、みずみずしい恋愛小説集。


【目次】

 百瀬、こっちを向いて。
 なみうちぎわ
 キャベツ畑に彼の声
 小梅が通る

解説 瀧井朝世

【感想】

読みやすかった!映画の予告見て、「桐島、部活やめるってよ」的な、甘酸っぱくて少し苦い恋愛ありの青春小説かな、と思って買ってみたけど、短編集だとは知りませんでした。けど、どの話も設定が面白く、登場人物の人間味もあり、さくさく読めました。
解説を読むと、さらに「確かに!」って思えるこの作品の良さが書かれていました。

僕的には表題作の「百瀬、こっちを向いて」よりも、「小梅が通る」の方が好きでした。(ページ数も4つの中で一番多かった。)解説にも書かれていたけど、全編に共通するのは、主人公が「人は外見、見た目」という現実の中でひっそりと生きている、という点。「小梅が通る」は、その世界観を逆側から描いていて斬新だと思いました。
華やかな世界での恋愛と違った、この世界観の中で描かれる「淡い思い」は、恋愛って名前を付けるべきなのかどうかよくわからないと思いました。
けど、人と人の心の交流が描かれていて、不器用なんだけど誰かを大切に思う気持ちが育っていく、という過程を読んでいくと、心が洗われるような気持ちになりました。

映画では「百瀬、こっちを向いて」だけを取り上げているようです、小説は本当に短編なので、
どう膨らませるのか、という点も気になるところです。けど、向井理主演って、ひっそり生きてる感半減やん。笑 と突っ込みたくなります。映画やから視覚的に綺麗になってしまうのは仕方ないか。
あとは、作者が服面作家というのも、気になるところです。