2014年1月25日土曜日

読書マラソン58/100『ネット大国中国』 遠藤誉

読破っ!!
『ネット大国中国』 遠藤誉 (理学博士)
発行:2011年4月 岩波新書
難易度:★★★
資料収集度:★★
理解度:★☆☆
個人的評価:★★★
ページ数:219ペー



【本のテーマ】
ネット市民=网名によるネット言論は民主化を導くのか。


【キーワード】
80后、网名、防火长城、人肉搜索、五毛党、翻墙、被自杀、「被和谐了」、河蟹三个戴表、権利意識、08憲章、意见领袖、

【目次】
はじめに
第一章 「グーグル中国」撤退騒動は何を語るか
第二章 ネット言論はどのような力を持っているのか
第三章 ネット検閲と世論誘導――“官”の政策
第四章 知恵とパロディで抵抗する網民たち――“民”の対応
第五章 若者とネット空間――権利意識に目覚める80后90后
第六章 ネット言論は中国をどこに導くのか
あとがき

【概要】
第一章 「グーグル中国」撤退騒動は何を語るか
グーグルが一度は中国に進出したが、情報規制のことで問題になり、結局撤退し、香港に拠点におくようになったことになったという一連の事件について書いてあった。

第二章 ネット言論はどのような力を持っているのか
网民(ネット民)はすでに若者を中心として広がり、4.5億人を超えている。孙志刚の事件に代表されるように、これまで見過ごされてきていた政府の腐敗や不正をネット上で追求し、実際に政府が動かざるを得なくなる。という事態が生まれ始めた。そこには、農民たちの「権利意識」の高まりがみられる。また、ネット上のオピニオンリーダーである「意见领袖」がそれらネット民の動きを決める鍵となる、という報告を受けた政府は、正確な「意见领袖」によってネット民を正しく導くことが大切であると述べた。

第三章 ネット検閲と世論誘導――“官”の政策
「グレートファイヤーウォール」は、有害情報から中国を守るために作られ、異民族の侵入から中国を守った万里の長城になぞらえて「防火长城」と呼ばれている。それにより敏感な政治内容や、特定のキーワードにフィルタリングをかけ、監視している。この事業は、「金盾工程」という「公安通信のネットワーク化と電子情報化システムを構築する工程」の一環である。また、ネット上の世論を導くために、「五毛党」という人員を雇い、政府に有利になるような発言をネット上でさせる。ということを行い、世論を操作しようとしている。また、商業サイトを点数制で管理し、検閲に引っかかると点数を減点し、点数が無くなると、サイトを閉鎖させる。という制度を作った。

第四章 知恵とパロディで抵抗する網民たち
グレートファイヤーウォールを潜り抜ける「翻墙」という行為がソフトを用いて行われ、海外のニュースを見たり、制限されたサイトを閲覧している。ある調査によると、彼らの内の約半数が、「政府は、ブラックボックス的な操作をするべきではない」と考えている。
また、2009年の今年の漢字に「被」が選ばれ、李国福の事件を代表として、「被自殺」という言葉が流行した。監獄の中で他殺されたものを自殺したと偽装したことを表す。権威のせいで、行動や事実が操作されていることに対する反感を表し、権利意識の高まりの現れでもある。「被就職」は、就職できない大学生に対し、大学が就職率を高めるために、偽の就職証明書を作成し、就職したということにさせられている現状を表す言葉である。胡錦濤政権が「和諧」をスローガンとして提唱しているのをパロディにして、ネット検閲により規制されることを「被和諧」(=和諧される)と表現しはじめ、さらには、和諧のピンインが河蟹と同じであるため、ネット上に「3つの腕時計をした蟹の写真」が多くアップされた。3つの腕時計は、「三个戴表」と書き、それは江沢民が提唱した「三つの代表」をパロディにしている。他にも同じピンインを用いて別の意味を表す単語として、「草泥马」などの罵しり言葉などがある。

第五章 若者とネット空間――権利意識に目覚める80后90后
改革開放・一人っ子政策がともに1978年から始まっているため、1980年を一つの区切りとする考えから、80后(1980年代以降生まれ)、90后という言葉が生まれ、彼ら80后90 后はネット民の63%を占めている。彼らは一人っ子政策により、親から大事に育てられたため、権利意識が高く、アニメや漫画への興味・関心(主に日本のもの)が高い。政府の「二一一工程」(21世紀までに100の重点大学(学力高い大学)を設定し、国家予算を投入する)により、各大学が定員数を増やしたことにより、大学生が急増し、その結果就職難につながり、多くの「蟻族」(大卒後、仕事がなく、アパートで共同生活をしている)を生み出した。そんな彼らは、ネット上の意见领袖(オピニオンリーダー)の発言に流されやすく、ネットが燃え上がることがあり、実際にデモなどの行動に移ることもある。

第六章 ネット言論は中国をどこに導くのか
中国の民主化を提唱した刘晓波の「08憲章」は、海外からはノーベル平和賞を与えられたが、中国はこれを取締り、彼を服役させ、授賞式にも行かせなかった。逮捕されるかされないかの線引きは、背後に「国際敵対勢力」があるかどうかで、刘晓波は海外メディアの目につくような形で発表したから処罰された。ネットは国民をより「多元化(価値観を多様化)」させ、自己組織化させる効果があり、「半直接民主」「参加型民主」を実現するが、政府はそれによって完全な「民主主義」にすることは許さない。統制の元での民主という「中国式民主」を今後も模索し、「特色ある社会主義国家」として存在していくのであろう。

【感想】
中国の国の在り方を考えさせられる本でした。
ネットの登場・普及により、政府の不正・腐敗が暴かれ、より公正になっていく流れは、とても良いものであると思います。しかし、そのことがつまり、完全な「民主主義」に結び付くのではなく、政府が管理し、統制し、規制する。というスタンスを変えないのが、中国があくまで社会主義国家であり続けようとしている姿が見えました。
規制が強すぎると、それは専制政治になってしまいますが、規制も何もない野放しの民主主義は、正しい方向に導かない。という前提に立っているものだと思います。
日本とは人数の桁も違うし、考え方も少し違うので、この前提がどこまで妥当なのかは分かりませんが、「中国式民主主義」、「特色ある社会主義国」という言葉に見られるように、民主主義と社会主義を融合させて生まれるものを、今後中国の未来に見ることができるのかもしれない。と思うようになりました。

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