2014年1月23日木曜日

読書マラソン55/100『〈自己発見〉の心理学』 国分康孝


読破っ!!
『〈自己発見〉の心理学』 国分康孝(哲学博士・東京成徳大学教授)
発行:2002年1月 講談社現代新書
難易度:★★
資料収集度:★☆☆
理解度:★★☆☆
個人的評価:★★
ページ数:196ページ


【本のテーマ】
哲学とは生き方である。現象と結果を結び付ける捉え方(心の中の文章記述・ビリーフ)によって、
不満を解消することができる。具体例を通して考える実践的な心理学。

【キーワード】
文章記述、ABC理論、ビリーフ、ラショナル・ビリーフ、社会化

【目次】
まえがき
第一章 人生哲学
 哲学の必要性、哲学の任務、倫理療法の人生哲学
第二章 社会生活におけるビリーフ
 人を拒否するべきではない、フラストレーションはよくないものである、
 いい線を行かねばならぬ、人は私の欲する通り行動すべきである
第三章 学習生活におけるビリーフ
 ハウツーよりは倫理や原理や理念を学ぶべきである、自主性・自発性を尊重するべきである
 暗記式の勉強はすべきではない、頭の悪い人間は人生で高望みすべきではない
第四章 家庭生活におけるビリーフ
 家庭は憩いの港たるべき、長男夫婦は親と同居すべきである、
 配偶者は優しくなければならない、嫁は姑の娘である
第五章 職業生活におけるビリーフ
 転職すべきではない、ひぼしにされた人間はダメ人間である
 いばるべきではない、人に認められようとすべきではない
あとがき

【概要】
第一章では、哲学とは生き方であり、様々な価値観があると述べていた。
その中でも、ABC理論(A=Activating event B=Belief C=Consequence)といって、出来事(A)によって感情の動きという結果(C)が出るその間には、そこにどのような文章記述・ビリーフ(B)を理解するか。が重要なファクターであると述べていた。ビリーフには論理的なラショナル・ビリーフと非論理的なイラショナル・ビリーフがあり、ラショナルビリーフの条件は、1事実に基づいているか、2論理的必然性はあるか、3人を幸せにするかという3点である。Bのビリーフを変えることでCの結果としての感情をより不快から遠ざけられるが、時には、根本であるAから変化させないとならない時もある。そのためには自問自答と実際体験をすることが大切である。

第二章では、社会において信じられがちなビリーフの具体例をあげていた。
「人を拒否するべきではない、フラストレーションはよくないものである、いい線を行かねばならぬ、人は私の欲する通り行動すべきである」このようなビリーフ(B)を持つことによって、上手くいかない際に結果(C)として不快感を感じてしまう。だから、「~すべき」ではなく、「~なほうが好ましい、越したことはない」程度に捉え、拒否もフラストレーションも、それらを通して、自己を再発見し、意思表示することができる。相手が自分の思う通りに動かない場合は、「なおそうとせず、わかろうとせよ」という著者の師の言葉のように、考えを押し付けるのではなく、相手の立場に立って考えることが大切である。

第三章では、学習において信じられがちなビリーフの具体例をあげていた。
「ハウツーよりは倫理や原理や理念を学ぶべきである、自主性・自発性を尊重するべきである、暗記式の勉強はすべきではない、頭の悪い人間は人生で高望みすべきではない」このようなビリーフ(B)を持つことによって、上手くいかない際に結果(C)として不快感を感じてしまう。真に物事を考えようとすれば、言葉が必要であり、その基礎部分を理解するためには、「暗記」は必要であるし、人間としての基礎部分を理解していないのに、それを「自由教育」の名のもとに放任するのは、社会化の発展を阻害することであり、その意味で、相手のことを思ったうえであるならば、禁止・強制も否定されるべきではない。と述べていた。頭が悪いと自己レッテル張りしてしまうことについても、一人の人間の中に分野によって得意不得意があるということに目を向け、悪い部分を一般化してしまうことで、事実を歪曲化し、認識を誤ってしまっている。と述べていた。

第四章では、家庭において信じられがちなビリーフの具体例をあげていた。
「家庭は憩いの港たるべき、長男夫婦は親と同居すべきである、配偶者は優しくなければならない、嫁は姑の娘である」このようなビリーフ(B)を持つことによって、上手くいかない際に結果(C)として不快感を感じてしまう。家庭内にも役割期待が存在し、お互いに役割を果たす関係であれば、感情調和がとれていなくても家庭は成り立つ。長男夫婦、配偶者の件は、時代の変化に気付き、認識を改める必要がある。嫁は姑の娘である、というのは、他人である、という認識を持ちつつも共同生活をするうちに、情を持つようになる。と述べていた。

第五章では、職業に対して信じられがちなビリーフの具体例をあげていた。
「転職すべきではない、ひぼしにされた人間はダメ人間である、いばるべきではない、人に認められようとすべきではない」このようなビリーフ(B)を持つことによって、上手くいかない際に結果(C)として不快感を感じてしまう。「いばる」ということは、役割をきちんと引き受ける、という側面があり、ただ単に権威的に威張るのはよくないが、逆に、威張らなさすぎるのも、役割責任を果たせなくなってしまうことになる。
 
【感想】
著者の人生からの教訓に心理学の知識を加えた本、という感じでした。
読んでいると、ふむふむ。と思い、感覚的にはなんとなく分かっていることを言葉にして論理的に説明している感じでした。本の内容全書に共通して言えることは、「決めつけはよくない」ということで、「これが良い、あれは悪い」という論理的根拠のないままに決めつけてしまうのは良くない、として、その「論理的根拠」となりうるには、1事実に基づいているか、2論理的必然性はあるか、3人を幸せにするかという3点である。と述べていて、なるほど。と思いました。
 自由を求める前提として、基礎をきちんと理解しているべきである。という「守破離」の考え方や、役割を果たすことで組織が潤滑に回る。という考え方、人間は能力に凸凹があり、部分だけをみて全体と思ってはならない。など、ほかの本でも目にしたような考え方も出てきていました。
 なるほど。と思うことが書いてあったのはいいのですが、過去からの教訓を論理立てて話しているに過ぎず、全く新しい教示を得られる、というものでもありませんでした。ゼミの先生のアドバイスを聞いている。という感覚になる本でした。新しい発見は多くなくても、自分の考え方に論拠性を与えてくれるような本でした。

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