
『「いいね!」が社会を破壊する』 楡周平(作家、元コダック社員)
発行:2013年10月 新潮新書
難易度:★★★★☆
資料収集度:★★★☆☆
理解度:★★☆☆☆
個人的評価:★★★☆☆
ページ数:239ページ
【本のテーマ】
ネット社会の進化が実生活に及ぼす影響を「ビジネスモデル小説」の第一人者が考察する。
【キーワード】
イノベーションによる構造破壊、LCC(ローコストキャリア)、GMS(総合スーパー)、FBA(フルフィルメント by Amazon)、3Dプリンター、ビッグデータのプラットフォーマ―、「ただ乗り」、オープンソースコンテンツ、パブリックドメイン、
【目次】
第一章 超優良企業はなぜ潰れたのか
第二章 素早く動き、破壊せよ!
第三章 便利の追求が雇用を奪う
第四章 「いいね!」ほど怖いものはない
第五章 勝者なき世界
あとがき
【概要】
第一章では著者が以前働いていたコダックがなぜ潰れたのかを体験をもとに述べていた。
アナログからデジタルの大変化が起こることは会社として予測はできていたが、
利益の観点(デジタルよりフィルムの方が利益が高い)でなかなか切り替えられなかったこと、
そのことにより、株主も方向転換をさせてくれなかったこと、写真店にも具体的な時期を伝えられないため、切り替えさせることができなかったこと、そうしている間に、ケータイの写真とブログの普及により、写真のデジタル化が一気に普及し、イノベーションの波にのまれてしまった。
もちろん、その中で生き残った写真メーカーもあるが、企業の生き残りと、従業員の生き残りは別で、イノベーションによって、多くの技術者が不要の者となってしまった。
第二章では、電子書籍業界においても、写真の時と同じような現象現象が起こっていると指摘していた。
まだ現段階では普及とまではいっていないが、ゆくゆくはデジタルカメラと同じように、何かをきっかけにイノベーションの波が起こると予測していた。否定する要素が情緒的な理由が多く、メリットとして中間の手間を省けることや、「読むための本」という一方的ではなく、「読ませるための本」という逆方向的なシステムも生まれ始めていることをあげ、一気に広まるのは時間の問題であり、その際にはたくさんの人が雇用を失う。と述べていた。
そのような一連の変化をFacebookの創始者、マーク・ザッカーバーグの「素早く動き、破壊せよ」という言葉を引用し、経営の本質を表している。と述べていた。
第三章では、便利さの追求により、雇用が変化する現状と予想について述べていた。
イノベーションは便利さ・効率化を追求し、その結果、雇用をリスクと捉えるようになると述べていた。より少ない人材で効率よくやるか。という方向に方針を向ける。と述べてた。
また、今後高齢化が進むと、生鮮食品などの領域までもネット購入・即日配達がより利用されるようになり、実店舗は「ショールーム」的役割になり、現段階でも、実店舗で見た商品のバーコードをアプリで読み取って、ネット上で安く買う。ということができてしまうようになっている。と述べていた。
第四章では、便利さの追求の裏側について述べていた。
3Dプリンターの登場もイノベーションとして、製造業における多くの作業を個人化してしまい、
雇用の喪失を生み出す可能性を秘めている。と述べていた。
スマホの登場により人は「サボれ」なくなり、LINEは個人情報を集約し、
FACEBOOKは顔写真から個人を特定できるようになった。グーグルでは、誰がどんな言葉を検索したかがサーバーに残されている。「無料」の代償として、個人情報を提供している。
それらの企業は「無くてはならない存在」を目指すと共に、年々個人情報を提供する際の規制やハードルを下げ続けている。
第五章では、雇用の不安定化などについて述べていた。
イノベーションによる変化の速さによって、安定的な企業というものが少なくなり、人生設計が立てにくくなった。若者は、大学までの資格審査を曖昧にしていたものが就職の場になって厳しい目で審査されるようになったつけが回ってきたために就職難になり、ネット就活により、より手を広げた就活を行い、就活難に拍車をかけている。「ただ乗り」という、コンテンツを無料で享受してしまうこと(ニュースをネットで済ましてしまう、など)が最終的にはコンテンツの質を下げてしまうこと、ウィキペディアなどの万人が知識を出し合って、情報を共有できる世界を作ろうとし、オープンソースコンテンツが溢れかえることで、意匠や著作権が限りなくパブリックドメインに近づいていく。そのことにより、「プロ」の存在が否定され、収入が減ることにつながる。
そして、経済が不安定化することにより、富の偏在が起こり、その結果、「勝者なき世界」が訪れる。
あとがきでは、
イノベーションの創造性と破壊について述べ、最後に「ドグマにとらわれてはならないというジョブズの演説を引用していた。
【感想】
THE・憂国論でした。将来が不安になりました。
社会はより効率化・便利さを求めて進むとその結果は、雇用の不安定化・喪失が生まれる。
そんな中で、「タダで情報を共有する」という概念が蔓延し、その結果、さらに経済が停滞し、
コンテンツの質も下がってしまう。という悪循環を感じ取りました。
今の時代、情報やコンテンツの著作権を規制しても、トカゲのしっぽ切りみたいな感じで、どこかしこに、抜け道的に「情報やコンテンツの共有」が存在していて、むしろいっそこの「シェアの時代」を受け入れるべきなのではないかと思います。
小さい頃、親の教育方針?でMACで遊んでいたころ、パソコンのソフトには「フリーウェア」と「シェアウェア」と「製品版」の三種類あって、「製品版」はお金を買って使って使用するもの、「フリーウェア」は無料で提供されるもの、その間の「シェアウェア」というのは、一部無料で、有料の部分があったり、人によっては募金やカンパを募ったりする。という形態がありました。(制作者によってシェアウェアの定義はいろいろだと思います。)つまり、言いたいのは、今、「フリーウェア」的に出回っている「情報の共有」を、いかに「シェアウェア」的な「一部有料」の状態に持っていけるかが重要なのではないかと思います。(例えば、ニコニコ動画の、プレミアム会員への誘導とか)そうしないと、「製品版」ばかりだと「掴み」が悪いし、「フリーウェア」ばかりだと著者の言う「ただ乗り」状態になってしまう。
中国における海賊版やパクリなどを考えても、人って言うのは、本音を言うと、「製品版」的な質のしっかりした物ばかりを求めているのではなくて、「そこそこの質(時にはそんなによくない質)で、それなりに満足できる安い価格で手に入るもの」を求めることも多いのではないかな、と思います。
コンテンツ産業って、質を悪くしても、その内容の本質自体の質はあまり下がらないところが難しいと思います。例えば、いい食材で作るイタリアンとそこそこの食材で作るイタリアンでは、出来上がったイタリアンの味の質にも違いがでるけど、いい画質で見る映画とそこそこの画質で見る映画では、満足度こそ差はあれ、物語の質や世界観の質は変わらない。そこが違うのが難しいところなのかな、といろいろ考えさせられました。
なんだかよくわからなくなったけど、「いいね!」が「ただ乗り」のままなら「社会を破壊する」ことになると思うけど、「いいね!」に対して何らかの「対価」を支払えるシステムが出来れば、「社会を破壊する」ことを食い止められるのではないかな?という抽象的なことを考えました。
【評価・理解度】
本のタイトルに関する記述がもっとほしかったです。しかし、便利さや効率化が世界に与える影響について考えることができました。
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