2014年1月22日水曜日

読書マラソン54/100『パレード』 吉田修一


読破っ!!
『パレード』 吉田修一(作家)
発行:2004年2月 幻冬舎文庫
難易度:★
感動度:★★
共感度:★★
個人的評価:★★
ページ数:309ページ



【本の紹介】(裏表紙より引用)
都内の2LDKマンションに暮らす男女四人の若者達。「上辺だけの付き合い?私にはそれくらいが丁度いい」。それぞれが不安や焦燥感を抱えながらも、“本当の自分”を装うことで優しく怠惰に続く共同生活。そこに男娼をするサトルが加わり、徐々に小さな波紋が広がり始め……。発売直後から各紙誌の絶賛を浴びた、第15回山本周五郎賞受賞作。

【目次】

杉本良平 21歳・H大学経済学部3年
大恒内琴美 23歳・無職
相馬未来 24歳・イラストレーター兼雑貨屋店長
小窪サトル 18歳・自称「夜のお仕事」に勤務
伊原直樹 28歳・インディペンデントの映画配給会社勤務

【感想】

ルームシェアの都会的な関係が描かれた物語だった。表面上は、気を遣わず、仲良く過ごすけれども、深いところは触れ合わない、そんな「さらっとした関係」が描かれていた。
5人の視点から描かれており、最初のうちはそれぞれの関係性がよくわからず、接点が無さすぎる4人がなんでルームシェアをしているのか分からず、でもつかず離れずの関係が妙にリアルだと思って読んでいると、最後の章でルームシェアの真実が分かり、さらに衝撃の展開。そして、さらに衝撃が続く。一度読んだときは、関係性がよく分からないのと、最後の衝撃が強烈だった。今回二回目読んだときは、心の準備はできていたし、関係性も分かって読んでいたけど、一番最後の衝撃で、やっぱり衝撃を受けた。
一回目も、二回目もこの小説全部を通して「優しい無関心」というようなものがあって、温かさを感じると同時に、怖さを感じる。優しさと冷酷さという、同時に存在しえないようなものが存在している。上手く表現できないけど、とても都会的な小説だと思った。お互いのことをなんとなく知っているつもりでいて、実は本当の深い過去や不安を知らない。でも、そもそもそ人が誰かと接する時には、「本当の自分」を断片的にしか見せなくて、その人の全ての「本当の自分」なんて、知りようがないし、知るべきでもない。そんなメッセージを感じました。


以下、最後の衝撃2連続を除いた、ネタバレを書きます。
ネタバレ注意!!

 大学生・良介は地元九州から東京の大学に上京してきた。これといって目的は無いが東京に憧れがあったためである。進学の際、父と母には金銭面で苦労を掛け、母からは反対されたが、父の「東京で色んな友達を作ってこい。」という言葉により母が説得され、上京した。しかし現実はなかなかその通りにはいかない生活をしていた。ある日、サークルの先輩の彼女と浮気関係になってしまい、一夜を過ごし、次の日の朝、彼女の家で彼女の弟と3人で朝ご飯を食べているときに涙を流す。
OL・琴美は、短大生の時に合コンで丸山くんと知り合い、恋に落ちる。しかしある日、躁鬱病の丸山くんの母親のひどい姿を目撃してしまい、衝撃を受け、結果、別れてしまう。会社員生活に嫌気がさしていたころ、クラブで知り合った人が兄のトラックで東京に行く、という話を聞いて、それに同上して東京に行く。東京には、その後芸能活動をしていた丸山くんがいたからである。しかし、彼に連絡をとっても出ず、唯一東京にいた友達・未来に連絡し、アパートに転がりこむ。そして、多忙な中時々来る丸山くんからの連絡を受け、会いに行くという生活を続けている。OL時代の貯金は底をつき、親には「どうしても叶えたい夢がある」と言って仕送りをもらっている。
 イラストレーター・未来は、雑貨屋の店長でお金を稼ぎ、空いた時間に男性の体の一部の絵を描き、露店で並べている。酒飲みで酔っぱらって、ある日、男娼・サトルを連れて来る。幼い頃母が父から虐待を受けているのを見、その記憶を鎮めるために映画のレイプシーンだけを寄せ集めたビデオテープをずっと隠し持っていたが、ある日、そのテープが上書きされていることに気付き、犯人がサトルだと目星をつけ、追い出したがる。
 男娼・サトルは、昔からふっと人の後をつけて、その人の家に不在時に鍵をこじ開けて忍び込む癖があった。特に何かを盗むわけでもなく、その人の生活を垣間見るだけで満足する。親についての過去は結局謎のまま。それぞれのルームメイトにそれぞれ違う話をし、相手に受け入れられやすいように自分の過去を作って話すようなところがあった。
映画配給会社社員・直樹は、美咲と二人でその部屋に住んでいた。しかし、二人の関係が悪くなり、毎日喧嘩するようになる。そんな時、行きつけのバーで知り合いだった未来がアパートの契約が迫っているが事故を起こしたため金銭的にピンチであるというので、ルームシェアを誘う。しかしそれは、二人の間に誰かが入ることで、関係が少しでもましになるのでは、と考えたからであった。良介は、高校の後輩から、サークルの後輩に失恋して自殺しそうなやつがいると相談を受け、その頃、美咲と未来が自分をよそに毎日楽しそうに過ごしているから連れてきてみた。元OL・琴美が急に転がり込んで来た時も、綺麗好きで整理整頓をしてくれたから追い出さずに住まわせた。全部自分のことを考えた結果であるのに、周りからは懐が深いと頼りにされてしまうようになったことに違和感やいら立ちを感じながらも、結局はまた、その期待に応えてしまう。


【物語について思うこと】

 疑問に思うのは、男娼・サトルは酔っぱらった未来に連れられてきたと言っていたけど、描かれていた空き巣の癖からすると、本当は同じように忍び込んだのではないか?という風に思いました。
いつも忍び込んでも何も盗まず、その家の生活感を感じるだけで終わっていたけど、そのアパートではルームシェアの人に見つかってしまい、予想外に受け入れられてしまったから、そのまま居ついてしまったのではないか、、、と勝手に想像しました。
 もうひとつは、直樹が、結局ルームシェアを受け入れたのは全部自分のためだった。と言っていたけど、それにしても、あくまできっかけは自分の為だったかもしれないけど、追い出す手段はあったはずなのに、それをしなかったのは、優しさがあったからではないかと思う。けど、その「優しさ」に見合う面倒見の良さが無かったので、結局、追い出せずストレスになっていたのかな。と思いました。


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