2014年2月9日日曜日

68/100『他人と暮らす若者たち』 久保田裕之


読破っ!!
『他人と暮らす若者たち』 久保田裕之(大阪大学大学院)
発行:2009年11月 集英社
難易度:★
資料収集度:★
理解度:★
個人的評価:★★
ページ数:203ペー

【本のテーマ】(表紙帯より引用)
恋人以外の異性の他人と同居する隠されたルールとは?一人暮らしでも、家族との同居でもない、新たな住居スタイル、シェアハウジング。11人のシェアハウス経験者へのインタビューから明らかにされる、新たな視点の若者論。

【目次】
まえがき
第一章 家族と暮らすか一人で暮らすか
第二章 シェアとは何か【準備編】
第三章 シェアのきっかけと魅力【証言編①】
第四章 シェアへの不満と困難【証言編②】
第五章 共用スペースと個室の意味【証言編③】
第六章 シェアのここがわからない【疑問編】
第七章 新しい住まい方の模索【展望編】
終章 公共性と親密性の再編成
あとがき

【概要】

第一章 家族と暮らすか一人で暮らすか
 近年日本でも「ルームシェア」、「シェアハウス」という言葉が聞かれるようになった。しかしまだ定着はしておらず、日本での一般的な居住スタイルは、家族と同居か一人暮らしのどちらかが主流である。「自立」、「自由」、「親密さ」の意味をどうとらえるかによって、他人と同居することを許すかどうかが決まってくる。「自立」が完全に一人で生きていくことではなく、他者と程よく頼り合う関係を築くこと、「自由」が自分のしたいままにするのではなく、他者との対話の中で自分を認めてもらうこと、「親密さ」を血縁・性的関係だけではなく、共同生活のなかで湧いてくる敬愛の情だと捉えることができるなら、家族も含めた「シェア」生活の価値観を理解することができる。

第二章 シェアとは何か【準備編】
 シェアの概念の整理していた。「ハウスシェア」=一軒家を共有する「フラットハウス」=一区画を共有する「ルームシェア」=一部屋を共有するという3種類に分けられる。しかし、実際は混同して使われていることが多い。他にも、「コープラティブハウス」=数世帯が二世帯住宅のような、もしくはそれ以上の規模に住むこと。「コレクティブハウジング」=数世帯の居住で、より緊密な関係、共同作業を伴うもの、「ゲストハウス」=旅行者用の短期居住用の住居

第三章 シェアのきっかけと魅力【証言編①】
シェアハウスを始めたきっかけは、海外生活において経験した、アメリカのドラマ「フレンズ」などの影響で憧れを抱いた、一人暮らしに飽きた。などがあげられていたが、分類的に見ると、一つは経済的理由「節約志向」=共有することでよりコストを下げられる。「快適志向」=共有することで、一人の時より高価なものが使える。二つ目は非経済的理由として、家族の延長・代替としてのシェア、家族の「役割」から離れた関係としてのシェア、また、異質な他者との生活により、異文化体験ができ、自分をより知ることができる。などがあげられていた。

第四章 シェアへの不満と困難【証言編②】
 シェアをするにあたって、シェアメイトと「サービスレベルの違い」(=掃除などの分担を各自がどの程度まで行うか)と「コミットメントレベルの違い」(=共同生活の中でどの程度時間を共有したいか)そして、「経済状況の違い」によって問題が生じることがある。それらがギャップがありすぎると問題になりうる。また、相手とのギャップを受け入れる精神も必要である。また、物件としても日本にはシェアハウスの物件は少なく、親と子を想定した不平等な部屋の間取りが多い。また、周囲からの理解も得られないことが多い。

第五章 共用スペースと個室の意味【証言編③】
 シェア生活においてルールを定める必要があるかどうか。最初にルールを定めても、実際に暮らし始めてから問題が発生することが多いため、その都度話し合ってルールを定めることが重要である。インタビュー対象者の中には、月1回大掃除の日を決めておき、皆で掃除し、その後食事を共にし、定期的な交流の機会をもうけることで、摩擦が起きないようにしていた。また、シェア生活における「個室」の存在は、必要不可欠なものであり、「逃げ場」であり、「保険」である。などという意見が述べられていた。

第六章 シェアのここがわからない【疑問編】
Q1「他人と住むなんて面倒じゃないの?」→増える面倒もあれば、減る面倒もある。家族が面倒ではないと思われるのは、家族内で役割が決まっているから。しかしそれは対等な生活ではない。
Q2「他人と住んだら危険じゃないの?」→家族と暮らすこと、一人暮らしにも危険は付きまとう。(殺人事件の半分以上は家族間)また、シェア生活は、関係が危険になれば「逃げ出しやすい」という特徴がある。
Q3「途中でシェアを解決したくなったらどうするの?」→不安定性は欠点なのか?家族のように逃げ出せない空間よりは安心である。ただ自分やシェアメイトが退去することを想定し、waiting list「候補者リスト」を作っておくのが策である。
Q4.「異性の友達を連れてきたり泊めてもいいの?」→日本は性に対してオープンではないので、実行するのはなかなか難しいし、そのことを議論することすら難しい。
Q5,「もし病気になったら誰が面倒をみてくれるの?」→相互扶助関係が築けていれば程度の差はあれ助け合える。一人暮らしよりかは助けてもらえる。

第七章 新しい住まい方の模索【展望編】
 世界で行われている家族以外の人との共同生活の方式について。
北欧のコレクティブハウジング、北米のコープ住宅、オランダのスクワッティング住居(=居住者不在の建物に住み着く)、住居以外にも、モノのシェアサイト「シェアモ」、カーシェアリングなどの例があげられていた。シェアをすることは、小さな共同体の中で話し合って決定するという「小さな民主」を形成することである。

終章 公共性と親密性の再編成
 「心の時代」において、個人の心理に焦点は当てられても、その背景にあるシステムに焦点が当て当てられることは少ない。他人と暮らすということは、他人と生きるということである。「コミュニティ」から「ガバナンス」へと意識を切り替えることで、小さな民主を形成できる。(「コミュニティ」=情念的で表面的な意味合いでの人間同士のつきあいに始終する側面ばかりが強調されている。「ガバナンス」=共同の利益に関する課題について意思決定を行い、集団全体を強制的に律していく社会関係。)

【感想】
論理的だった!!!シェアについて、良いところ、悪いところ、現状がインタビューを通して書いてありました。他人とのシェア生活とは、家族との「共依存」の関係から抜け出し、他者との民主的な関係を形成する「訓練する場」としての「第三の暮らし方」(第一=家族と同居、第二=独り暮らし)であると思いました。そこには増える面倒と減る面倒とあり、危険性もあれば、相互扶助もある。
日本の居住スタイルが、「家族」とか「独り暮らし」のどちらかしかない、ということが多く、もっと選択肢があってもいいのにな。と思いました。少なくとも「家族」と暮らしているから「安心・安全・健全」であるとは限らないと思います。家族にはそれぞれに「役割」ができてしまい、その「役割」以外の事に対してあまり踏み込めない。というのは本当に当てはまると思いました。
「引きこもり」、「ニート」、「パラサイトシングル」、「ワーキングプア」、「無縁社会」、「孤独死」など、近年問題化される人たちにとって有効な策の一つとして、「シェア的生活」は経済的・精神的共に大きな意味を持つと思います。今後大事な事、そこに潜む危険性や問題点をどのようにすれば少しでも取り除くことができるか、ということを考えていくことだと思います。
 他人と暮らすことは他人と生きることであり、シェア的生活は、小規模の「ガバナンス」の中で、民主的にルールを決め、「小さな民主」を作り出すことができる。その意識を養うことで、国家全体の「民主」意識を高められるのではないか、と思いました。

0 件のコメント:

コメントを投稿