2014年2月7日金曜日

67/100『内側から見た富士通「成果主義」の崩壊』 城 繁幸


読破っ!!
『内側から見た富士通「成果主義」の崩壊』 城 繁幸(元・富士通人事部社員)
発行:2004年7月 光文社
難易度:★
資料収集度:★
理解度:★
個人的評価:★★
ページ数:235ペー


【本のテーマ】(表紙裏より引用)
富士通がリーディングカンパニーとして「成果主義」を取り入れたのが1993年。その後他の多くの企業も何らかの形で成果主義を取り入れ始めた。しかし、実態は経営者や管理者が制度をつかいこなせず、社員の士気は低下し、不満と嫉妬が渦巻き、自殺者まで出してしまうようになtった。
「成果主義」は社員になにをもたらすのか?富士通の「成果主義」による崩壊はけっして他人事ではない。

【目次】
はじめに
Chapter 1 急降下した業績
Chapter 2 社員はこうしてやる気を失った
Chapter 3 社内総無責任体制
Chapter 4 「成果主義」と企業文化
Chapter 5 人事部の暗部
Chapter 6 日本型「成果主義」の確立へ
おわりに
付録

【概要】
Chapter 1 急降下した業績
 バブル崩壊後、日本型経営の見直しを迫られた際、シリコンバレーに視察団を送り、そこで行われていた「成果主義」を富士通に取り入れることにした。期の初めに目標を設定し、期末にその目標がどれだけ到達できたかによって評価を「SA・A・B・C・E」でランク付けし、そのランクに基づいて給与を変える。というシステムを核とした制度であった。
当初は、メディアや他企業から賞賛の声が多く。次世代の経営方法だとして注目された。

Chapter 2 社員はこうしてやる気を失った
 しかし、実際に運営していくと問題が発生した。社員がやる気をなくし転職が増えた。その原因のひとつとして、評価枠「SA・A・B・C・E」には、それぞれ割合が定められてた「相対評価」であり、目標を設定し、それがどれだけ達成されたかという報告書は文字が多すぎてしっかり目は通されず機械的に処理され、結局は「年功序列」的に評価枠に当てはめられて行く、という現象が生じてしまった。途中から「相対評価」から「絶対評価」に切り替えたが、そうすると次は「評価のインフレーション」という現象が起こってしまった。つまり、A評価が溢れるようになり、A評価の価値が下がってしまった。

Chapter 3 社内総無責任体制
 人事部、経営者は、彼らが彼ら自身を評価することをしないため「A」が多く、一般社員の評価ばかりに重点がおかれるようになってしまった。人事部はその評価自体を公表することをせず、それがよけいに社員の不信感を招いた。そして、結果的にパフォーマンスが下がり、契約が破棄されたり、商品が売れなくなったり、売れない商品を作り続けることにつながってしまった。

Chapter 4 「成果主義」と企業文化
経営者はそれまでの何十年と「年功序列」制度の中で育ってきたため、急に切り替えることが出来なかった。もともと「成果主義」と「ムラ社会的年功序列」は相反する存在であるため、様々な矛盾が生じた。バブル時代、社内の人口比率がピラミッド形式であった場合には「年功序列」は有効的な経営方法であった。

Chapter 5 人事部の暗部
 「成果主義」導入後の人事部の権力の高まり、そして権力の不正利用について述べられていた。

Chapter 6 日本型「成果主義」の確立へ
 そもそも「成果主義」というのは「人件費抑制」という大きな目的をもとに行われるシステムであるが、普及していった際にはその部分に焦点が当てられず、「正当に評価される」という部分をコンサルタント会社が強調していた。改善策としては、評価者が多数いると公平な評価ができにくくなるので、評価者を数を減らし、質を高めること、そして、「目標達成」を評価するのではなく、「成果」のみを評価するべきである。そして、公平な評価のためには評価方法を公開することも不可欠であると述べていた。

【感想】
すごかった!!!一社員のリアルな経験が書かれていて、すごく迫ってくるものがありました。
全体を通しての主張は、「成果主義」自体が悪いのではなく、「成果主義」の制度を、その概念から理解・適応できなかった「年功序列」的思考の経営者たち、そしてそれをいいことに権力を行使するようになった人事部、そのせいでやる気を失ってしまった社員たち。という構図に原因があったというものだと感じました。それまで何十年も年功序列制度の中で育ってきた経営者に急に制度だけの「成果主義」を持ち込んでも、うまくいかない、ということがよく分かりました。
 著者は元社員ということもあり、感情的な文章も見受けられました。本当に経営者・人事部が腐敗していたのか、それは分かりません。もしかすると、ただ、「どうしたらよいのかわからず」その結果の「腐敗」であったのかもしれない。と思いました。
 バブル期の会社内の人口ピラミッドがピラミッド型の「人口ボーナス」の時代には、「年功序列型」が有効であったけれども、それがつぼ型になってくると、中高年の人口が増える一方で、経営者レベルの人員を増やすことはコスト的に釣り合わなくなり、「年功序列型」に無理が生じ始める。その時代にあった経営方法というものが求められ始めた10年前の奮闘記だと感じました。
最終的に富士通は「成果主義」の導入に失敗した。と報道されるようになりましたが、時代の変化を感じ取って、いちはやく行動に移したという点は評価するべきだと思います。実際に富士通が「成果主義」を導入したことにより、他の企業も影響されて取り入れ始めたと書かれていました。
 この本が出されてから10年、富士通はどう変わったのか、成果主義はどう変わったのか、もっと知りたくなりました。

0 件のコメント:

コメントを投稿