2013年11月13日水曜日

読書マラソン36/100『人口負荷社会』 小峰隆夫

読破っ!!
『人口負荷社会』 小峰隆夫(法政大学大学院教授)

発行:2010年6月 日系プレミアシリーズ
難易度:★★★★☆
資料収集度:★★★★☆

理解度:★★☆☆☆
個人的評価:★★★★☆

ページ数:206ページ

 


【本のテーマ】日本社会は今後、少子高齢化を経て、人口が減少していく。


そのようすを「人口ボーナス」の逆である「人口オーナス(人口負荷)」という言葉を使い、
その原因や社会・経済に与える影響を考察していく。 
 
【キーワード】
人口負荷社会、人口ボーナス、人口オーナス、大労働力不足時代、シルバー民主主義、
少子化シフト、 年齢別選挙区、育児保険、世代の自立
 
【目次】
序章 人口減少を考える7つの視点第一章 日本の人口構造はどう変化していくのか
第二章 日本の出生率の真実
第三章 日本の少子化の原因を考える
第四章 人口オーナスとは何か
第五章 少子化、人口減少はなぜ問題なのか
第六章 人口オーナス下の経済成長
第七章 大労働力不足時代へ
第八章 高齢者と女性の就業率を高めるには
第九章 人口オーナス下の産業・企業
第十章 人口オーナス下の社会保障
第十一章 人口オーナスと民主主義の失敗
第十二章 人口オーナス下の地域
第十三章 アジアの人口ボーナスが剥落する日
第十四章 未来のためのコストを担う
おわりに


【概要】
序章 人口減少を考える7つの視点
序章で一章以下で述べることを簡単にまとめていた。
①人口は確かな未来を示している→不確実性が小さいので、将来予測の基盤である。
②経済社会に影響する人口の変化を一言で表すと=人口オーナス⇔人口ボーナス=人口に高まる働く人の割合の増加。人口総数減少よりも人口構成が変化していることが重要である。
③長期的な視点→大労働力不足時代、人手が余る。働く世代が老人を支える制度→無理が生じる
④正統的な経済政策の考え方
労働人口の減少→(対策)1.就業率をあげる2.一人ひとりの人間力を高める3.より成長力の高い分野に人を振り向ける
資金不足→1.財政の健全化2.海外からの投資を促進
全要素生産性→効率的な市場の枠組みの整理、技術開発を促進
社会保障→世代間の不公平をなくす
⑤人口オーナス社会への挑戦による新たな発展の可能性
人口のオーナスに対抗して制度改革をすることで経済社会はより効率化される
⑥社会保障問題をいかに解決するか、いかに実行するか
シルバー民主主義の問題化
⑦人口オーナスは世界的な問題
東アジアは人口ボーナスの時代。しだいに人口オーナスに移行する。日本は人口オーナスの超先進国。人口オーナスの解決策を見出すことは東アジアの未来のためでもある。

第一章 日本の人口構造はどう変化して行くのか
日本の人口変化の特徴→①人口総数の減少②高齢化の進展③少子化の進展、そのスピードが早い。①倍化年数(高齢化社会7%→高齢社会14%)ドイツ40年、イギリス47年、アメリカ73年、フランス115年に対して日本は25年。日本の平均寿命が世界的にみて長いことも原因。②少子化のスピードが速かった。1985~2002の合計特殊出生率→日本0.44ポイント低下、先進国の中では圧倒的。東アジア(韓国、台湾、香港)は日本以上の低下③所得が高まると出生率は低下する傾向2.アジアの結婚観家族観の影響(女性の社会進出と出生の矛盾)
しかし、根本的な変化は少子化。世論や政策の関心が少子化に向かう(=少子化シフト)の動き。
①世間の関心→1970年〜高齢化問題ばかり→1990年〜少子化問題視
②政策的にも対策→1994年エンゼルプランの制定→1994年新エンゼルプランの制定→2003年少子化対策基本法、次世代育成支援対策推進法→2010年少子化対策大網作成→こども手当
③人口議論のタブーが無くなった→問題は高齢化ではなく少子化

第二章 日本の出生率の真実
合計特殊出生率2.07程度なら人口は減らない。2008年合計特殊出生率上昇に転じた。しかしそれは、晩産化の影響であり、若年層の出生率は増えていない。

第三章 日本の少子化の原因を考える
GDPと出生率のグラフ①所得水準の高い国出生率が低い②1次直線ではなく、2次曲線である(減り続けない)③日本は曲線の底にいる。(今後上がる)
所得があがると少子化になる原因=子供を持つことの効用、メリット<コスト
①所得水準上昇→教育費も上昇
②機会費用(できなくなること)が増える
日本特有の原因
①短期的要因→経済の停滞と若者の雇用不安②長期的要因→女性の社会進出による機会費用の増加。2005年。 子供が6才まで休めば37万。6才からパートにでれば、2億2732万円
遺失所得の原因
①長期雇用が遺失所得を大きくする②年功賃金、パートの給料は少ない
遺失所得以外の理由
①父親の育児時間時間の減少②労働者年齢層の高齢化、若者が働きにくい
日本の従来の働き方が少子化の原因であり、少子化は熱が出ているようなもの。
③男女の価値観。女は家事をすべき、アジアに共通の価値観

第四章 人口オーナスとは
従属人口=15才〜64才までの生産年齢人口に支えられている15才以外or65才以上の人の合計
従属人口指数=生産年齢何人で従属人口何人を支えるか。例)100→生産年齢1人で従属人口1人、50→生産年齢2人で従属人口1人
1950年〜1970年人口ボーナス→従属人口指数が低い=生産年齢人口の負担が少ない
1990年から人口オーナスの時代へ。人口ボーナスは過渡期に現れる一時的な現象である。
経済社会に与える影響
①労働制約→人口に占める労働力人口の比率が低下する②貯蓄率が下がる③年金医療介護の世代間対立→賦課方式に無理が生じる④政治的意思決定権をシニア層が持つ。
しかし現場への認識が少ない。少子化対策への投資は先進国の中で最も低い方であり、労働力不足に関しても、女性の就業率は低く、外国人労働者受け入れにも消極的である。
少子化シフトに関しても、1975年の段階で分かっていたが、対策をとり始めたのは2004年頃から。人口オーナスに関しても同じように対策が遅れるのではないか。

第五章 少子化、人口減少はなぜ問題なのか
世間では、社会保障制度が行き詰まる、労働人口が足りなくなるから、国内マーケットの縮小、企業に影響があると考えている。しかし、「経済は人間のためにあるという基本」を考慮すると、企業の売り上げのために国民が存在するのではない。維持することに固執しすぎてはならない。
「日本世界第二位の経済大国」からの転落は問題ではない。①購買力平価ベースGDPでは、
2008年の時点で抜かれている。1.8倍まで差をつけられている。②GDPとは、「国民一人当たりのGDP×人口」人口約10倍なので、中国人の1人当たりGDPが日本の10分の1を上回れば抜かされる
③国民の幸せ≒一人当たりの国民所得を見たら、日本は16位、中国は122位(2008年)
だから、世界第二位の経済大国に固執するよりも、1人当たり所得の高さにおいて世界トップクラスであることの方が重要

第六章 人口オーナス下の経済成長
経済財政改革の基本方針、就業率が低下していくという現状が書かれていない。
以下著者による訂正
<基本指針>→人口減少下で〈就業率が低下する中で〉何より重要なことは、1人当たり生産性の向上である。<白書>→〈就業率が低下する中で〉国民一人当たりの成長率を高めて行くには、労働生産性を向上させることが重要となる。
なぜなら総付加価値GDPは、従業者1人当たりの付加価値生産性と人口に占める従業者の比率の2つの要因で決まるから。
成長には短期的なものと長期的なものがあり、短期的に需要が(どれだけ買ってもらえるか)が支えるが長期的には供給(いかに効率をあげるか)が支えている。長期的潜在成長力は、①労働力②資本③全要素生産性の3つの生産要素によって規定される。③は技術を始めとする①②以外で生産の上昇に寄与するものすべて。人口オーナスが影響を与えるのは①②の投入である。
人口オーナス下では、高齢者が貯金を切り崩すため国内貯蓄が減る。(ライフサイクル仮設)
①老後のために貯蓄する人が多い60%②日本の貯蓄率1992年14.6%から2009年2.8%まで減少(アメリカ3.9%)→国内投資の減少、成長率が低下。日本は海外からの資本流入が少ないので直結している。
民主党の新成長戦略を批判
①目標設定のズレ→名目GDPの数字を目標にしていた→1人当たりGDPの数字を目標にすべき。
失業率低下を目標にしていた→就業率を引き上げること

第七章 大労働力不足時代へ
今後、少子化により、生産労働者人口が減少する。
その対策①高齢者や女性の就業率を高める。②技術革新などにより生産性を高める。③外国人労働者の力を借りる。の3つが考えられる。と述べていた。

第八章 高齢者と女性の就業率を高めるには
まず前提として①「成長のための雇用」ではなく、機会を得られていない人に対して提供する。という意識が必要。②そのためには、待遇改善が必要である。高齢者就業率を高めることのメリットは①高齢者自身の生活水準の向上②国全体の就業率の上昇による労働力不足の緩和③勤労世代を増やし、引退世代を減らすことによる世代間アンバランスの是正、④健康増進を通じて、本人の福祉水準を高め、社会の医療費を抑制する。と述べていた。女性が活用されきれていないということをデータから示し、壁となっている制度として日本の雇用慣行の特徴である「長期雇用」「年功賃金」「長時間労働」「接待型取引慣行」をあげていた。それぞれが、女性にとっては子育てをするべきという価値観のもとでは費やす時間が多すぎて、両立することができない。とのべていた。
女性の雇用を増やすためには構造改革が不可欠であると述べていた。

第九章 人口オーナス下の産業・企業
人口が減少すると、すなわち経済規模が縮小すると考えられがちであるが、
実際はそう簡単に結論付けられるものではない。高齢者は今後「量より質」の買い物をする傾向がみられ、輸出をすることで、国内での消費を増やすことにもつながり、むしろ国内の市場規模が拡大する可能性も考えられる。

第十章 人口オーナス下の社会保障
働く人が働かない人の生活を支えるという仕組み(賦課方式)を維持し、今後もその仕組みが変わらなければ、人口オーナスの度合いが高まれば高まるほど働く人の負担が重くなり、経済状況が悪化する。とし、「賦課方式」と「積み立て方式」の性質の違いについて述べていた。
また、年金改革がうまくいかない原因として「市場の失敗」「政府の失敗」「民主主義の失敗」をあげていた。

第十一章 人口オーナスと民主主義の失敗
今後高齢者が増加するにしたがって、投票者の年齢層の割合が高齢者が多くを占めるようになる。と述べ、それに対する対策として①年齢別選挙区の実施や②デーメニ投票(=子供が成人するまで親が子供の票を投票する。→子供のことを考えて投票できる。)を提案していた。人口ボーナスの時代が終わるのであれば、「世代の自立」が必要であると述べていた。

第十二章 人口オーナス下の地域
地方では、少子高齢化が進んでいるが、実際は出生率が高いところが多い。つまり、成人になってから、都市へ移り住む人が多い。ということである。そのことにより、都市はより人が集まり、地方はより人が減る。という現象が起こっている。

第十三章 アジアの人口ボーナスが剥落する日
少子高齢化という現象は日本に限った現象ではなく、アジア全体に潜在化している問題である。
人口ボーナスの時期をへて人口オーナスの時期に移り変わる。その以降の速度の問題である。
しかし、多くのアジア諸国は、人口ボーナス時期に十分に国力を蓄えることができないまま人口オーナスに突入し、国民一人あたりのGDPが高くないまま人口オーナス時期を迎えなければならない国々がある。しかし、日本はアジアの中でも人口オーナスの先進国であるため、アジア諸国に対してモデルを示すことを期待されている。

第十四章 未来のためのコストを払う
人口オーナスに対応する方法は「適応戦略(変化に適応する)」と「対応戦略(少子化を解決する)」の二種類ある。「適応戦略」のためには、女性と高齢者の就業率の底上げが不可欠であり、海外からの労働者の受け入れも重要である。「対応戦略」のためには、経済状態を安定させ、子供を産みやすくすること、教育費の負担を減らすために、「育児保険」(子供の有無にかかわらず保険料を払い、子供に利益を還元する。)を行うことで、「フリーライド(ただ乗り)」の現象をなくすことができる。と述べていた。

【感想】
大変難しい本でした。しかし、統計資料のデータが多く、図表からイメージがわきました。
つまり、人口減少自体はそんなに問題ではなくて、問題なのは、人口減少に合わせた制度を作れていないことであると感じました。
年金は「賦課式」であり、働く世代が働かない世代を支える。という方法に無理が生じ始めているので、「積み立て式」に少しずつ切り替え、「世代の自立」を図るべきだという主張はもっともだと思いました。

将来労働者人口が足りなくなるので、女性や高齢者、外国人を積極的に採用し、継続的に雇用する必要がある。という主張も、説得力がありました。そのための壁となっている「日本式雇用形態」を今後どれだけ変えていくことができるかが鍵なのだと思いました。

また、今後高齢者が増えることで、選挙の年齢層の割合が高齢者に傾き、
高齢者に有利な法案が通りやすくなる。という危険性も理解することができました。

著者は、問題点をあげるだけでなく、具体的な解決案を出していて、
「年齢別選挙区」や、「育児保険」などは、新しい考え方だと思いました。

【理解・評価】
難しかったですが、最初の序章で全体で話すことを簡潔にまとめてくれており、理解が深まりました。各章で項目分け(第一に、第二に、、)がたくさん出てきて、わかりやすい反面、多すぎだとも思いました。

http://asian-wind.blogspot.jp/2013/11/from_13.html

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