2013年11月5日火曜日

読書マラソン34/100『競争と公平感』 大竹文雄

読破っ!!
『競争と公平感』 大竹文雄(大阪大学社会経済研究所教授)
 
発行:2010年3月 中公新書
難易度:★★★★★
資料収集度:★★★★☆

理解度:★★☆☆☆
個人的評価:★★★☆☆

ページ数:245ページ

 
【本のテーマ】
市場経済であるはずの日本人は、なぜか競争が嫌いな人が多い。そもそも競争するメリットとは何なのか?そして、どのようなときに人は不公平感を感じるのだろうか?という疑問を経済学的視点から具体的に述べていた。
 
【キーワード】
 
最後通牒ゲーム、マシュマロテスト、時間割引率、双曲割引、格差、格差感、相対的貧困、
ワーカーホリック(仕事中毒)、有給休暇、最低賃金引上げ、外国人労働者、見える税・見えない税
 
【目次】
プロローグ
第一章 競争嫌いの日本人
第二章 公平だと感じるのはどんな時ですか?
第三章 働きやすさを考える
エピローグ 経済学って役に立つの?
 
【概要】
第一章 競争嫌いの日本人
日本人は、資本主義社会であるはずなのに、「競争が社会を良くするか?」という問いに「はい」と答える人が世界的に見て少ない。(日本:49%、世界:70%超)かといって、「国は所得再分配政策(貧しい人を国が面倒見る)をすべきだ」という問いに対しても肯定的ではない。(日本:59%、世界80%超)その原因は、日本人の伝統的な村社会的な比較的小さな共同体で助け合う精神が根本にあることや、高度成長の価値観では、働く場はたくさんあったので、貧困=能力が無いという風に感じてしまうこと、また、「勤勉さとコネのどちらが大事か」という質問に対し、「コネ」と答える割合が2005年で41%と急増している。この原因は、近年の不況が若者の価値観に大きな影響を与えたこと。という要因をあげていた。また競争を好んだり嫌ったりする原因を生物学的な観点から言及し、男性の方が女性より競争を好む傾向がある。と述べ、さらには、生育環境的要因による要因についても言及していた。
市場経済のメリットとは「市場で厳しく競争して、国全体が豊かになって、その豊かさを再分配で全員に分け与えることができる」ことであり、デメリットは、競争からくる辛さと、格差である。と述べていた。日本人はメリットを意識せず学校でもあまり教えず、デメリットばかり意識することが、競争嫌いの意識を作る原因であると述べていた。
 
第二章 公平だと感じるのはどんな時ですか? では、伝統的経済学では人間の心理の葛藤や矛盾、そして文化などを取り込きれていない。と述べ、近年行われている研究についてのべていた。
「最後通牒ゲーム」では、1万円を二人で分けるが、Aが分配額を決め、それを見てBが両者受け取るか受け取らないかを決める。というルールであり、経済学的観点から考えるとBは1円以上受け取れるなら、受け取る方が賢明であるが、実際は、ある一定の金額まで分配されないと、「両者受け取らない」を選択する人の割合が多い。という結果から、「不平等感」という感情が経済に影響を与えることを実証していた。
また、「マシュマロテスト」では、4,5歳の子供にマシュマロ1つ乗った皿の前に座らせ、「20分待ったらもう一個あげる」と言い残し部屋を去る。そこで待つことができた子供は、追跡調査により、学校の成績が良く、社会性に優れている。という研究結果があった。そのような時間によって影響される価値観を「時間割引率」で表し、時間割引率が高いと、せっかちで待てない(時間が経過すると価値が割り引かれる。)時間割引率が低いと、忍耐強い。と述べていた。そして、そのように人々の決定はしばしば時間非整合性であり、双曲割引的であると述べていた。また、格差と格差感の違いについて、相対的貧困率という概念について述べていた。相対的貧困率は平均所得の半分以下の物を「貧困者」として計算しているため、相対的貧困率が高くても、実際の貧困の度合いとは結びつかないことがある。と述べていた。また、相対的貧困率が上昇する理由として、①不況②技術革新③グローバル化④高齢化⑤離婚率の増加5つの要因を述べていた。
 
第三章 働きやすさを考える では、競争と公平感が生産性や消費に与える影響について述べていた。
有休取得率制度について、最低賃金引きあげが経済に与える影響などをとりあえげていた。また外国人労働者について、高度な技能労働者と単純労働者にわけ、それぞれが経済に与える影響について述べていた。また、税金については、「見える税(自動的に差し引かれ、認識しやすい税)」を増やすことが消費や生産性の低下につながるため、今後国は「見えない税(本人負担の税)」を増やしていくのではないだろうか、と予想していた。
 
【感想】
経済学の難しい本でした。後半はほとんど分かりませんでした。
しかし、筆者が、経済学も、伝統的な考えだけでは不十分であり、文化や心理学的なものも考慮に入れるべきである。という風に言っていたのに共感し、その流れで社会学というのが新しい学問として生まれたのではないか。と感じました。本の中に出てきた「最後通牒ゲーム」や「マシュマロテスト」は、社会学の範囲の実験であるし、単なる理論だけでは現実を説明しきれない。と思うので、そういう意味で社会学を学んでいてよかった。と思いました。経済学の上に社会学が乗っかっているイメージを持ちました。根本にあるのは経済学ですが、カバーしきれないところや補完する存在として、新しく社会学が生まれたのだと思いました。
本全体を通して、利己主義、平等主義、という概念が出てきて。経済学は基本的に利己主義に基づくため、平等主義の概念を持ち出すと説明できないことがある。と知りました。
 
【評価・理解度】
経済学はやっぱり難しいです。踏み込んだところはあまり理解できませんでした。。。
しかし、経済学の考えに少し触れ、経済学も新しくなっていっているということを知りました。
 

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