『自己愛な人たち』春日武彦(精神科医)講談社現代新書
発行:2012年6月
難易度:★☆☆☆☆
所要時間:約5時間
発行:2012年6月
難易度:★☆☆☆☆
所要時間:約5時間
【本のテーマ】
自己愛とは何か?自惚れ、自画自賛、自己顕示など、のマイナスイメージを持たれがちであるが、
自尊心、自己肯定、誇り、そして他者の尊重にもつながる感情である。
この「自己愛」とうまく向き合えないことから、様々な病理が発生している。
【キーワード】
自己愛の要素:<自己肯定><思い上がり><独りよがり>
様式美、自己愛、空虚感、自己実現、「可能性の亡霊」、
過敏型自己愛、誇大型自己愛、
引きこもり、新型うつ病、自傷行為、「残念な人」
卑しい自己愛、健全な自己愛
【目次】
まえがき
第一章:自己愛に似たもの
第二章:目立ちたがる人たち
第三章:折り合いをつける
第四章:他人を巻き込む
第五章:変装する自己愛
第六章:持て余す自己愛
あとがき
【概要】
第1章では、自己愛の基本的な3つの側面を述べていた。
それは<自己肯定><思い上がり><独りよがり>である。
一つ目の<自己肯定>は誇りを抱き、自信を持ち、自分を認めることで、他人も認める。
それは、心の安定と表裏一体であり、生きていくうえで必須である。
二つ目の<思い上がり>は、
傲慢、尊大、目立ちたがり、自己中心的、
選民意識(自分は選ばれた人間だ)、特権意識(自分は特別だ)、
共感を欠き、他人をないがしろにし、利用する。
三つ目の<独りよがり>については、自画自賛、自己陶酔、都合の良い思い込み
<思い上がり>と<独りよがり>は、他者に見せてしまうと、不快感を与えてしまうため、
その側面を心に秘め、コントロールして生きていくことが大切だと述べていた。
それをコントロールしきれないと、「病理」として表出するようになる。
第二章では、自己愛を、「他者からの認知、賞賛を求める」という側面から述べていた。
様式美(世間から認知される何らかのパターンに同化することで、
個人の認知を得た気分を得ること)としての暴走族、ガングロ。
自己愛を強く求める理由として、幼少時代に感じた「空虚感」の存在があげられる。
第三章では、自己愛を、「自己実現欲求」という側面から述べていた。
自己実現とは、人それぞれが自分の資質や能力に見合った形で努力を重ね、
自分らしらに則って完全な自己を完成させること。
言い換えると、自分自身を冷静に吟味し、分をわきまえる。ということ。
その例として、自己愛を飼い慣らし、世の中と折り合いをつけた人のエピソードをいくつか。
第四章では、自己愛による「他者への攻撃」という側面から述べていた。
自己愛の強い人たちは、「小競り合い」にのめりこみ、
「都合の良いライバル」「敵」「賛美者」を求める。
第五章では、自己愛の病理につながる負の側面を述べていた。
精神医学や心理学での自己愛の二極的理解
「誇大型自己愛」(尊大、自己中心的)
「過敏型自己愛」(自己愛が強いからこそ、失敗を恐れ、消極的、内向的 ≠ 謙虚)
現代日本人は「過敏型自己愛」傾向の人が多い。
「引きこもり」は、自分が大切ゆえ、挫折や敗北を棚上げにするための行為。
「新型うつ病」は、自己愛が満たされないもどかしさや不満感を「うつ」の症状に当てはめたもの。
「自傷行為」は、自己評価を低くすることで、心へのダメージを緩和する行為。
それぞれ、「自己愛」を扱いあぐねた結果の病理である。
第六章では、自己愛をマトリックス思考(縦軸横軸)で述べていた。
前章の「誇大型自己愛」―「過敏型自己愛」と、
「卑しい自己愛」―「健全な自己愛」をマトリックスにして理解する。
「卑しい自己愛」(傲慢、尊大、思い上がり、自己顕示、自惚れ)
「健全な自己愛」(おおらかさ、向上心、誇り)
現代人が多いのは、「過敏型自己愛・卑しい自己愛」である。
「誇大型自己愛・健全な自己愛」の代表として、岡本太郎をあげていた。
自己愛の(個人における意味での)反対語は「死」である。とまとめていた。
生きていくことは、後悔や自己嫌悪、絶望、不安、悔しさの連続であり、
それらは「自己愛」と表裏一体である。
【感想】
読みやすいけど、テーマが重かった!!!!!( ;∀;)
そして、著者の性格が、(著者自身言ってたけど)「ひねくれて」いました。。。
けど、所々核心をつく話や、精神科医独自の視点が書かれていました。
精神科医を受診した患者のエピソードや、小説を引用して論説を進めていました。
「自己愛」に肯定的・否定的側面があるというのには強く共感しました。
現代の病理が「自己愛」に起因すること、
そして、自己愛の反対語が「死」である。自己愛が生きる原動力である。
と言い切っていたことにも、はっとさせられました。
あと、「過敏型自己愛」は鋭いな。と思いました。
僕も他人事とは思えない。。。
この100冊読書っていう行為も、
自己愛の行為だと思っています。
ただそれが、「健全な自己愛」であるように注意して書いていきたいと思います。
【個人的評価】70点
所々ひねくれて、テーマの重い文章だったけど、
最近気になっていたテーマだったし、
独自の観点に、はっとさせられたので70点!