2013年10月10日木曜日

読書マラソン 29/100 『独身の価値の証明』趙学林

読破っ!!
『独身の価値の証明』趙学林、佐藤嘉江子訳
発行:2000年12月 はまの出版
難易度:★☆☆☆☆
資料収集度:★★★☆☆

理解度:★★★★☆
個人的評価:★★★☆☆
ページ数:278ページ




【本のテーマ】
 中国社会で「独身」として生きる人々7人の価値観をインタビュー形式で綴った記録文学。


【キーワード】
インテリ、計画経済時代、市場経済時代、役割の分担、結婚、責任、家庭
 
【目次】
はじめに 訳者:佐藤嘉江子
「独身」に思う
第一章
結婚って何?ーー二人の憂鬱よりも一人の孤独を選ぶ女
第二章
人は結婚で何を失うかーー自由でいたい男
第三章
被害者はいつも女性ーーインテリ女性の言い分
第四章
倦怠のボーダーラインーー結婚に飽きた男
第五章
結婚前と同じ「私」ではいられないの?ーー私の個性を奪わないで
第六章
快適な母子家庭ーー形ばかりの家庭にこだわる必要はない
 第七章
もう幻想はなくなったーー夫より高学歴・高収入の妻
 
【概要】

第一章
都市インテリ女×農村インテリ男
語り手:女
価値観の違いにより離婚。結婚は世間に何かを見せつけるためにする部分がある。もし経済的に余裕があるのならば、価値観の違いにより人生の一番良い時間を無駄に過ごしたくない。独身でも結婚しても変わらずに憂鬱はつきまとう。
 
第二章
インテリ男×嫉妬深い非インテリ女
語り手:男
結婚は女性を家庭に回帰させてしまう。結婚が男女の視野を狭くし、精神的世界の広がりをなくし、自由を制限している。愛という名の束縛により、創造的な精神的交流が失われて行く。それは、結婚という形態の問題である。そう感じた末に、自由な精神を求めて離婚。結婚生活を続けると、理想や達成意欲が持てず利潤追求主義になると感じた。
結婚前の独身は心身のよりどこを求めていたが、結婚後、離婚後の独身は、精神的自由である。
価値観の多様化により結婚は一部の人しか幸せに出来なくなった。独身は市場経済のもとで必然の現象。
 
第三章
インテリ女×処女を気にする男
語り手:女
処女でないことを理由に離婚された。処女の価値について問題を投げかけていた。
男性は女性を商品として見ている
被害者はいつも女性。
サルトルとヴォーヴォワールのように、結婚はせずに生涯ともに暮らした。子供はいないが、支え合い励ましあった。それが理想の関係。
結婚し家庭を押し付けられることで開花出来ない女性の能力がある。独身は社会にとっても、意義があること。
 
第四章
移り気な男×安定的な女
語り手:男
百万年以上の有史前狩猟期の生活が遺伝的に残っている。その頃は雑婚の時代で男の死亡率が高い、そのような環境により新しい物好き、楽しめる時に楽しむ心理的傾向が生まれ、現代にも受け継がれている。
一夫一妻制は人間が文化的であろうとするために支払った代償。
愛情は必ずやある程度の距離を必要とし、近すぎると新鮮味を失い、倦怠感に陥る。恋愛が楽しい理由は相手を知るのが楽しいから。好奇心を満たせるから。
独身の最大の利点は毎日新しい希望に向き合っていられること。
 
第五章
男勝りな女×大人しい文学男
バーやクラブで外国人と飲んだり遊ぶ。それは、新しい世界を知り、刺激を受け、知的好奇心を見たしたいから。しかし、夫は世間の目を気にしたり、家庭の妻の責任を果たせないと非難する。男遊びをしたいのではなく、初対面だからこそ盛り上がることができる、夫婦はもう話しを尽くしたからである。折り合いがつけられずに離婚。
 
第六章
コネで元幹部の男×離婚を選んだ女
語り手:女
元国の機関の幹部であるだけで、失業してからも偉そうにし、男尊女卑な行動に耐えきれなかった。しかし、娘のことを思い母子家庭になることをためらっていたが、形だけの家庭よりも、幸せであるかどうかの方がはるかに大切。と思い離婚。
市場経済は母子家庭に優しい
①能力で給料が増える
②サービスが行き届き男の価値が高くなくなる
③治安も良くなった
 
第七章
キャリアウーマン×普通の男
語り手:女
一度失恋してから同業会社の男と結婚。女の方が稼ぎが良く、主夫のような関係に
パーティーで驚かれたり、夫への態度を変えられたり、嫌味を言われたりする。夫が妻の家政婦になっているという思いが強くなった末に、離婚。

【感想】
 インタビュー対象者7人すべてが独身で、結婚経験し幻滅した具体的なエピソードを語っていました。
共通していたのは、結婚するということは、家庭の責任を背負うということで、それまでの気楽さや自由さがいくらか制限され、人間関係や行動に制限がかかり、精神的自由を縛る圧力が存在している。ということでした。

結婚したあとも変わらない「自分」でいようとすることで夫婦生活に支障をきたし、崩壊して行くエピソードはなんだか絶望的でした。しかし、語り手は絶望的でない結婚も存在しているだろう、とも述べていて、ただ、自分はもう結婚に期待するのに疲れた。と述べる人が多かったです。
しかし、結婚観もさまざまになり、自分らしく生きたいがゆえに家庭や子供を持つことを拒否し、「独身」という生き方を人が増えれば、国として若年者がどんどん減っていってしまうな。。という懸念も持ちました。
具体的なエピソードとして、結婚する際にお互いにルールを決めて順調にいっていたのに、後になって、夫は実はそのルールに納得しておらず、結婚してから相手の考えが変わると思っていた、という話があり、衝撃的でした。あと、結婚に恋愛を求めても、距離が近すぎるために倦怠感を感じるようになるとか、刺激的な精神的な交流相手として結婚相手だけでは不十分だ、という話はリアルでした。他にも、育ってきた環境や、教養の高さなども結婚生活において大事な点であると思いました。あまりにも違いがあり過ぎると、「性格の不一致」に至ってしまう。という話も印象的でした。
心が離れすぎるとお互い理解できないし、近すぎると飽きてしまう。愛情には「適度な距離」が不可欠だ。と語る語り手には、説得力がありました。
また、「世間の目」というのも頻繁に出て来て、男らしさ、妻らしさ、などについて、市場経済に変化して行く中国でも大きなテーマであると知りました。結婚という制度に問題がある。といっている語り手もいて、市場経済が浸透し、価値観が多様化していくなかで、あるべき結婚の制度とはどのようなものなのだろうか。。。と考えさせられました。


【評価・理解度】
希望の少ない本でしたが、結婚する前に読んでおくことでおこりうる問題について考えることができるとおもいました。また、日本の結婚について、ここまで本音で赤裸々な話を聞けなかったので、参考になりました。
日中の差があると言えど、似てる部分が多いなぁ。と思いました。 

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