2013年10月9日水曜日

読書マラソン 28/100 『急変する中国人の人生観』范晨雨

読破っ!!
『急変する中国人の人生観』范晨雨、佐藤嘉江子訳
発行:2004年5月 はまの出版
難易度:★☆☆☆☆
資料収集度:★★★☆☆

理解度:★★★★☆
個人的評価:★★★☆☆
ページ数:262ページ




【本のテーマ】
 中国社会の各階層で生きる25人のインタビューから、社会主義市場経済の実態を描くノンフィクションドキュメンタリー、記録文学。


【キーワード】
労働点数、配給切符、文化大革命、下郷、改革開放、万元戸、車、カラーテレビ、
 
【目次】
はじめに
 
第一部
1市場競争の隊列の中で、2車があるという感じ、3あなたを道に出る、4傍に男性がいない日々、5無冠の帝王の生活、6規則すれすれのところで、7都市の農村人、8北京の生活はとても疲れるわ、9博打好き、10現代のさすらい人、11ローンを抱えた生活、12私たちだって大変なのよ、13世の中に愛を、14暇な日々の中で
 
第二部
15超えがたい世代ギャップ、16都市の漂泊者、17町内会長、18美と健康を追い求めて、19山の中の新農民、20自由だがプレッシャーいっぱいの日々、21自由気ままな生活、22道をゆく人の日々、23人生をデザインする、24砦の外を徘徊する人、25夕日を見て感慨にふける
 
訳者あとがき
 
【概要】
 
第一部では、以下の14名の話があった。
1家電メーカーの価格競争の話、2車を取り巻く嫉妬と羨望と虚栄心の話、3顧客と店の立場が逆転した話、4浮気を発見し離婚した独身の話、5「お車代」を貰う記者の話、6書籍番号の売買、書籍の切り貼りをする出版社の話、7農村人から都市人の万元戸になった人の話、8農村から出稼ぎにきた少女の話、9博打好きな人の話、10製薬会社の営業の話、11借金してでも家を買った夫婦の話、12ツアーの添乗員の話、13SARSに立ち向かった内科医の話、14改革開放の落ちこぼれ失業者の話
 
第二部では、以下の11名の話があった。
15兵隊夫婦と甘やかされた娘の話、16出稼ぎ労働者(内装業)の話、17定年退職後、居民委員会でボランティア精神で世話をするおばさんの話、18美と健康を求める母娘の話、19山を買い農村に別荘を持つ大金持ちの話、20芸能関係者の話、21情報制限が緩和された、というフリーライターの話、22元トラック運転手、現タクシー運転手の話、23デザイナーの話、24独身休職中で、風俗に入り浸る男の話、25腐敗を嘆く元幹部の話
 
【感想】
全体を通して、中国の様々な顔が見えてきました。まずは経済状況が良くなって、カラーテレビや車を買い、それを自慢する人が何回か出てきました。あとは、貧しい人と豊かな人との差が激しかったです。SARSに立ち向かう医者の話やタクシーの運転手の善意など、感動できる良い人も登場する反面、出版業界や芸能界や観光業界の裏側では、リベートを受け取って仕事をもらう、という非合法的(もしくはグレーゾーン)行為が描かれていました。
また、文化大革命、文明改革により影響を受けた人々の姿も描かれていて、文化大革命以前と以後の生活を想像することができました。
 
特に印象に残った話として、15の兵隊夫婦とその娘のジェネレーションギャップについての話があります。豊かな家で育った娘が学校の友達の間でなりたくない職業が3つあって、それは「兵隊、教師、医者」であり、その理由が「なりたい人がなればいい、私は嫌!」と言い切り、兵隊出身の母親が理解できない(その3つの職業は尊敬されるべきものだと思っていたから)というエピソードは、自分自身もどこかでその娘の考えに共感するとともに、それはとても「人任せ」で「都市的」な感覚であり、そういう人ばかりになると「兵隊、教師、医者」の数が減り、負担が増えるんだ。と反省しました。
また、全編の随所に「面子」に関わる考え方が出てきており、車も、カラーテレビも、家の購入も周りの人が買うから、自分も買いたい。という欲求はまさに「攀比」であると思いました。
 
また、都市の人が農村の暮らしをうらやましがり、週末に郊外へ出かけているのに、農村の人たちはどうしても都市へ出稼ぎにしたくて、都市へ来たら農村へ帰りたくない!と言っているのも印象的でした。
 
【評価・理解度】
 
記録文学としての価値があると思いました。数値的資料などはほとんどありませんでした。
中国人のそれぞれの日常を垣間見ることができる文献でした。

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