『一億総ガキ社会~成熟拒否という病~』片田珠美(精神科医)
発行:2010年7月
難易度:★★☆☆☆
ページ数:248ページ
発行:2010年7月
難易度:★★☆☆☆
ページ数:248ページ
【本のテーマ】
ひきこもり、モンスターペアレント、依存症、新型うつ、それらの現代における社会問題に共通する点として、現実と理想(自己愛的万能感)のギャップを受け入れられない事からくる「成熟拒否」である。という主張を軸に、それぞれの社会問題との関連を述べていた。
ひきこもり、モンスターペアレント、依存症、新型うつ、それらの現代における社会問題に共通する点として、現実と理想(自己愛的万能感)のギャップを受け入れられない事からくる「成熟拒否」である。という主張を軸に、それぞれの社会問題との関連を述べていた。
【キーワード】
万能的自己愛、成熟拒否、対象喪失、打たれ弱い、他責的、依存症、モンスターペアレンツ、
パーフェクトペアレント、パーフェクトチルドレン、カーリングペアレンツ、
【目次】
はじめに
第一章 「打たれ弱い」という病
第二章 一億総「他責的」社会
第三章 依存症――自己愛の底上げ
第四章 大人になるってどういうこと?――対象喪失とは何か
第五章 子どもを子どものままにしないために(処方箋)
【概要】
第一章では、ひきこもりに焦点を当て、引きこもりと成熟拒否について述べていた。
引きこもりは、幼いころの幼児的万能感を引きずったままで、万能的自己愛によって形成された理想の自分と現実の自分とのギャップに耐えきれないために発生している。と述べていた。
その原因の一つとして、フィンランドで提唱された「カーリングペアレンツ」(スポーツのカーリングのように、子どもに立ちはだかる障害を全部のけてしまう親のこと)について述べられていた。
第二章では、新型うつやモンスターペアレンツの特徴として見られる「他責的性格」と成熟拒否について述べていた。
これらの問題も、根底には理想と現実のギャップを受け入れることができないという成熟拒否が存在していると述べていた。新型うつは、従来のうつとは違い、落ち込む原因を自分ではなく他人に求める傾向がある。モンスターペアレンツについては、子供の教育の責任が地域から家庭にうつってきていることで、親が「パーフェクトペアレント」として「パーフェクトチルドレン」を育てようというプレッシャーが発生している現状や、自分の自己愛を子供に投影し、自分が叶えられなかったことを子供に叶えさせようとしている現状を指摘していた。
第三章では、薬物の依存を始めとする、依存症と成熟拒否について述べていた。
「依存症」のきっかけとは、理想と現実のギャップに耐えきれず、それを埋める手段として「何か」に依存する。と述べ、違法薬物から、合法的な精神安定剤やお酒など、そのような役割を求めて人々が行う「嗜癖」について述べていた。
第四章では、対象喪失、という言葉をより深く定義づけしていた。
対象喪失とは、「大切なものを失う」という意味であり、一番大きな対象喪失は、「自分自身の死」である。と述べ、末期患者が死を受け入れるプロセスについて、①否認②怒り③取り引き④抑うつ⑤受容、という5つの段階を踏むのが一般的だと述べていた。それは日常的レベルで考えても、「理想と現実のギャップにぶち当たる」という「対象喪失」(万能的自己愛を失うとき)同じように5つのプロセスを踏む。と述べ、①の段階を乗り越えられない人が第一章で述べたひきこもり、②の段階を乗り越えられない人が第二章の「他責的」な人④の段階の人が従来のうつになる人である。と述べていた。
第五章では、対象喪失を乗り越えるためにどうすればよいか、をのべていた。
著者自身、万能的自己愛がまだぬぐい切れていないと述べており、そんな中でも、提言として、若いうちから挫折を経験しておくことで、「自分の身の程を知っておく」ことが大切だと述べていた。
そして、「~すべき」「~するな」という単純な行動の助言では問題は解決できず、自分の対象喪失背景にどんな問題があるのかという「問題」を認識することが、解決のための一歩であると述べていた。
【感想】
少し前から、「自己愛」というものについて考えていたので、参考になりました。幼いころの万能的自己愛を引きずったまま、理想と現実のギャップに苦しんでいる。というのは、的確だと思いました。近年社会問題化している問題の根本にはこの「自己愛」との向き合い方がうまく出来ていないことからくるものなんだと、以前よりも確信的に思うようになりました。
便利さや豊かさの代償として、対象喪失と向き合う抵抗力が下がる。というのは、避けられないことなんだと改めて思いました。
みっともない自分も頑張って受け入れて、この現代を生き抜いていきたいです。
【個人的理解度】
80% フロイトの部分が少し分からないところがありました。
【個人的評価】
70点 いくつかの社会問題を結び付ける視点を得られましたが、同じことを章ごとに繰り返し言っていたところがあり、少し「くどく」感じました。そのせいでページ数も多くなっているんだと思います。
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