2014年12月8日月曜日

120/200 『女のいない男たち』村上春樹(作家)


読破っ!!
『女のいない男たち』村上春樹(作家)
発行:2014年4月 文芸春秋
難易度:★
感動度:★★
共感度:★★
個人的評価:★★
ページ数:285ページ




【本の紹介】(表紙帯より抜粋)
村上春樹、9年ぶりの短編小説世界。その物語はより深く、より鋭く、予測を超える。

【目次】
ドライブ・マイ・カー
イエスタデイ
独立器官
シェエラザード
木野
女のいない男たち

【感想】
初めて村上春樹さんの本を読みました。
噂で聞いていた感じだと、もっと堅苦しくて、文学的なイメージを想像していたけれども、
思ったよりも読みやすかったです。

どの短編小説にも男女の関係が出てきて、
でも綺麗な恋愛物語ではなく、もっと複雑で、裏や闇のある、
奥深い関係性を描いたものだと思いました。
物話の進め方も、回想形式であったり、物語の中でさらに誰かに語られるスタイルがとられていたりして、より本の中の世界に入っていきやすかったです。

セリフの言い回しであったり、登場する映画や音楽が「お洒落」で、
西洋の古い白黒映画とか、ジャズとかストリングスの音楽が似合う文学作品だと思いました。
今の時代設定ではない、かつての日本人が憧れた、
モダンな西洋文化みたいなものを感じさせてくれる作風でした。
外国語を日本語に翻訳したかのような文体がその構成要因の一つなのだと思います。

一番共感できた物語は「イエスタデイ」でした。
登場人物の年齢的に近く(時代設定は少し古かったけれど)
また、関西弁をマスターした関東人と、標準語を話す関西人という登場人物がよかったです。
過去の自分の色々なことが、思い出すと「恥ずかしい」と感じる、標準語を話す関西人、
そして、「自分が分裂している、違う自分を知りたい」と感じる、完璧な関西弁を話す関東人、
その、それぞれの心理がどちらも少しずつ理解できて、印象に残りました。

そして、一番分からなかったのが「木野」でした。
最終的にどうなったのかよく分からないし、謎が多い作品でした。
しかし、所々の情景が印象に残り、最後の方に抽象的に描かれていた、
「不安感」や「不安定感」のようなものが、
この短編全部に共通しているテーマなのかな。と感じました。
そして、その「不安感」「不安定感」の根本的な原因として、「女性」が登場している。
というのがテーマなのかな。と思いました。
そういう意味では、「イエスタデイ」のみ、そのテーマから少しずれた
異彩を放つ短編だと思います。

「好奇心と探究心と可能性」
「イエスタデイ」の中で出てきたこの言葉が印象的で、
短編小説の中に出てくる登場人物も、恋や性欲や理想的な自己の追求など、
何かを追い求めるエネルギーを心に秘めていて、
でも、それが自分の思うようにいかないことに対して苦しんだり、
悲しんだり、不安になったりしている。
というそんな心の動きが描かれていると感じました。

村上春樹さんは、短編集を書くときには一気に書く、と書かれていたので、
もしかしたら、それぞれの短編にもっと繋がりがあるのかもしれない。とも思います。

この本をきっかけに、他の作品も読んでみたいと思いました。

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