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2014年10月7日火曜日
118/200 『感動をつくれますか?』久石譲(作曲家)
『感動をつくれますか?』久石譲(作曲家)
発行:2006年8月 角川ONEテーマ21新書
難易度:★★☆☆☆
資料収集度:★★☆☆☆
理解度:★★★☆☆
個人的評価:★★★★☆
ページ数:190ページ
【本のテーマ】(裏表紙より抜粋)
本書のテーマ:創造力
時代のテーマを読むために必要な「感性の正体」を探る。
▶質より量で自分を広げよ
▶心のベース作りは、生活環境から
▶コップを見て花瓶と言えるか
▶音楽は「記憶」のスイッチ
▶いい音楽は譜面も美しい
【目次】
第一章 「感性」と向き合う
第二章 直観力を磨く
第三章 映像と音楽の共存
第四章 音楽の不思議
第五章 日本人とクリエイティビティ
第六章 時代の風を読む
【感想】
ジブリの音楽を手掛ける久石さんの著書を読みました。
まず第一章の冒頭から、
「ものを作りにはふたつの姿勢がある。一つは自分の思うままに自由につくる芸術的な創作。
そして、もう一つは、自分が社会の一部であるという意識を持ち、需要と供給を意識した商業ベースでの創作である。」という内容の文章があり、創作ということを仕事にする、
ということに対する、大前提であると考えさせられました。
他にも、
誰かを感動させるには、まず、自分が感動できるものを作ることであり、
「誰かを感動させる」ことを目的に作るのではなく、それはあくまで結果である。
創作の根源にあるのは、自分の経験の積み重ねである。
どれだけ創作に関わる理論を学んだとして、
作品の構造を詳しく分析することができても、
その先のゼロから一を生み出すクリエイティブなところに辿り着くことはできない。
ひらめきや着想のイメージとして、
コップを見て花瓶だと言える(コップであるということは承知しながら)
様々な可能性や違う角度から理解する方法を生み出す姿勢が大切だと述べていた。
第一印象は間違っていないことが多い。
久石さん曰く、サンドウィッチ理論
=「第一印象→案外こうなのか!→いや、やっぱりこうだった」ということが多く、
最初に受ける第一印象は間違っていないことが多い。
セレンディピティについて、「偶然の出会い」を大切にすることで、
思いがけない幸せを見つける能力(=セレンディピティ)を磨くことができる。
また、「音楽する」という言葉について、
日本のオーケストラを指導しに来た外国の指揮者が、
最初の演奏でそのクオリティの高さに驚いたが、
帰国する時には、「もう二度と来たくない」と言われてしまい、
その理由が、「もとからクオリティが高く、そこからの上達が見られない。」からだったという。
海外のオーケストラは、最初の時点で「個」の主張が強く、
始めはバラバラだが、練習を重ねるうちに、「その団体の音楽」を紡ぎ出していくこと(=音楽する)
によって、日本オーケストラの最終的なクオリティを超えるほどのレベルに達する。
その点に関して、日本は最初から「阿吽の呼吸」的な感覚を持っており、
集団としてのある一定のレベルにまでは到達出来るが、そこからさらに上達することが難しい。
その理由として、民族の単一性、多様性があり、血族結婚が多いバリ島のウブドのエピソード、
民俗の血縁が濃いため、音楽する際、リズムの息が合いやすい。という話を述べていた。
日本は、伝統を重んじ、伝統文化を大切にし、伝統楽器が昔のままで存在し、
かつて演奏されたであろう音楽がそのまま今でも聞ける。
その「保存能力」は素晴らしいが、しかし、それは世界的に見ると実は特殊なのではないか。
例えば中国は、文化を踏襲するということを嫌い、毎回なんらかの「創意工夫」を行い、
そのため、「もともとの形」がもはや分からなくなるほど、常に変化し続けている。
日本人は伝統にはあまり手を加えたがらない反面、
新しい文化を取り込み、自国の文化風に「アレンジ」する能力が高い。
天ぷら、牛肉、カレー、ラーメンしかり。どれも元は外国から入ってきた文化が、
日本流にアレンジされ、日本文化に定着したものである。
その反面、行き詰まると、それまでの文化を切り離し、蓋をして、「リセット」するという癖がある。
明治維新を皮切りに西洋文化が入ってきた時や、戦争に負け価値観を180度変えたことなどが
例として挙げられていた。低成長期に入り行き詰まり感が出てきた現在、
次はどのような「リセット」を行うのか、という懸念がある。
世界的に活躍する久石さんの作曲活動の裏側、
音楽を通して久石さんが考えた「創作」について、そして、その「創作」に対する、
国や民族による違いについて。
世界的に活躍する音楽家である久石さんだからこそ見える、
これまで考えたことのない視点からの日本文化論は、とても刺激的でした。
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