2014年9月30日火曜日

115/200 『ビジネスで活かす電通「鬼十則」仕事に誇りと自信を持つ』柴田昭彦(コンサルタント)


読破っ!!
『ビジネスで活かす電通「鬼十則」仕事に誇りと自信を持つ』
柴田昭彦(コンサルタント)
発行:2011年3月 朝日新書
難易度:★
資料収集度:★
理解度:★
個人的評価:★★
ページ数:207ペー

【本のテーマ】(表紙そでより抜粋)
未曾有の広告不況にも強さを見せる電通。第四代社長・吉田秀雄が半世紀以上前に創った
社訓「鬼十則」の教えは、今も古びない。
辣腕をふるった元電通マンが、自らの仕事に十則をどう実践してきたか。
あなたのビジネスに直結する「十則」活用術。

【目次】
鬼十則第一条 仕事は自ら「創る」べきで、与えられるべきでない。
鬼十則第二条 仕事とは、先手先手と「働き掛け」て行くことで、受身でやるものではない。
鬼十則第三条 「大きな仕事」と取り組め、小さな仕事はおのれを小さくする。
鬼十則第四条 「難しい仕事」を狙え、そしてこれを成し遂げるところに進歩がある。
鬼十則第五条 取り組んだら「放すな」、殺されても放すな、目的完遂までは・・・・・・。
鬼十則第六条 周囲を「引きずり回せ」、引きずるのと引きずられるのとでは、
          永い間に天地のひらきができる。
鬼十則第七条 「計画」を持て、長期の計画を持っていれば、
          忍耐と工夫と、そして正しい努力と希望が生まれる。
鬼十則第八条 「自信」を持て、自信がないから君の仕事には、
          迫力も粘りも、そして厚みすらながない。
鬼十則第九条 頭は常に「全回転」、八方に気を配って、一部の隙もあってはならぬ、
          サービスとはそのようなものだ。
鬼十則第十条 「摩擦を怖れるな」、摩擦は進歩の母、積極の肥料だ、でないと君は卑屈未練になる。

【感想】
熱かった!!電通は体育会系だとは聞いていたけれども、
この「鬼十則」はその内容も熱く、そして、
この著者の方が、それぞれの条を細かく自分なりに真摯に捉えようとしていている
その姿勢が熱かったです。
「熱い」、と言っても、「むさくるしい熱さ」、「勢い任せの熱さ」ではなく、
本や著名人の言葉を所々に引用しながらの、「知的な」熱さがあり、読んでいるだけで、
刺激ややる気をもらいました。

半世紀以上前に作られた、ということもあり、
鬼十則第五条の取り組んだら「放すな」、殺されても放すな、なんていうのは、
少し過激にも思われ、「昭和の香り」がするところもありますが、
その点を除けば、現代にも十分重宝される考え方であると思いました。

特に印象に残ったのは、第八条と第九条でした。
鬼十則第八条 「自信」を持て、自信がないから君の仕事には、
          迫力も粘りも、そして厚みすらながない。
「自信を持つ」ということの難しさ。他者からの評価によるものではなく、自分を自分で裁く。
その一方で、「傲慢」になってしまってもよくないので、「自信」と「謙虚さ」を共立させる。
その二つの存在は矛盾するものではない。ということが書かれていて。
それが自分の高校の時の担任が言っていたことともろ被りしていたので、驚きました。

鬼十則第九条 頭は常に「全回転」、八方に気を配って、一部の隙もあってはならぬ、
          サービスとはそのようなものだ。
第九条では、常に気を配る。ことの大切さを思い出させてくれます。
これは、サービス業だけに特化した話ではなく、日々の仕事の上でも、
小さな気遣いというのが積み重なって、お客様への「サービス」になると思うので、
妥協を許してしまわないようにしなければ。と気が引き締まりました。

また、著者が日本人の「空気」の感覚について、山本七平の「空気の研究」を引用しており、
自分の卒論研究の内容と被っていて驚きました。
著者も、日本人には「空気」による影響を受けやすいところがあると批判していました。

「自己啓発系本」としては、読みやすく、
引用も多く、説得力のある、エネルギッシュな本であると思いました。
また、「鬼十則」それ自身も、深みのある、捉え方によっては様々な解釈ができる
教訓であると思いました。
社会人経験をまた数年経てから読み直すと、意味が違ってより深く感じられるのではないかな。
と思いました。

2014年9月27日土曜日

読書マラソン100冊まとめ

2014年9月17日水曜日

114/200 『くまモンの秘密』熊本県庁チームくまモン(公務員)


読破っ!!
『くまモンの秘密』熊本県庁チームくまモン(公務員)
発行:2013年3月 幻冬舎新書
難易度:★
資料収集度:★
理解度:★
個人的評価:★★
ページ数:253ペー



【本のテーマ】(表紙裏より抜粋)
平成二十二年「くまもとサプライズ」キャラクターとして登場したくまモン。
商品売り上げは一年で二百九十三億円、熊本のブランド価値向上への貢献は計り知れない。
ゆるキャラ・くまモンを「売るキャラ」に育て上げたのは、PRもキャラクタービジネスも経験ゼロの、
しがない地方公務員集団・チームくまモン。
くまモン失踪事件などの物語戦略、利用料フリーで経済を活性化させる楽市楽座戦略等等、
公務員の常識を打ち破る自由な活動を展開し、自治体史上例のない成功を遂げた
奇跡のプロジェクトの全貌。

【目次】
第一部 くまモン関西戦略の秘密(熊本県庁チームくまモン関西部隊)
 第一章 熊本をPRしないPR戦略
 第二章 くまモンは日々進化する
 第三章 費用対効果は予算の八倍
 第四章 ゆるキャラから売るキャラへ
 第五章 ダメ出しにくじけずアイディア量産

第二部 くまモン地元戦略の秘密(熊本県庁チームくまモン熊本部隊)
 第六章 原点は保育園・幼稚園の子どもたち
 第七章 迷ったらGO!

第三部 くまモン・トップ戦略の秘密(熊本県知事・蒲島郁夫)

【感想】
 今やどの県へ行っても視界に入ってくるくまモン。
そのくまモンがどうやって今の人気や知名度を築いていったのか、その歴史が書かれていました。
熊本を日本に広める!という壮大なテーマについて書かれているのに、
文章はわりとゆるめの語り口調、ときには自分でツッコミを入れつつ、
そして、随所に「くまモン愛」がちりばめられた、まさに「ゆるく」て、読みやすい本でした。

全体を通しての感想として、
僕は、くまモン誕生の背景にあったストーリーこそが一番大きな「人気の秘密」なのだと思いました。
まず、九州新幹線が開通するプロジェクトが立ち上がり、
博多から鹿児島までが関西から新幹線で手軽に行けるようになる。
その通過地点に熊本県があった。
ここで、このチャンスをモノにしなければ、熊本県はただの「通過地点」になってしまう。
そんなピンチとチャンスが一気に来たような状況で、
「くまもとサプライズ」というテーマを掲げて生まれたのがくまモン。
2010年3月に誕生してから、2011年3月12日の九州新感性開通までの1年間で、
熊本県を日本(特に新幹線開通後の主力ターゲットと想定された関西)に広げる、
という大きな使命を抱えて活動をしていました。

九州新幹線の両端の駅である博多と鹿児島にもきっとゆるキャラがいて、
同じように九州新幹線開通に向けて、
PR活動をしていたのではないかな。と思います。
しかし、くまモンはとび抜けて有名になったのは、
「ピンチとチャンス」と言ったように、覚悟が違ったというのもあるけれども、
やはりそこには「戦略」の違いがあるのだと思いました。
本の中にも出てきていた、「熊本をPRしないPR戦略」というのは面白く、
他の企業や他の県の良さ(くまモンの場合:大阪)を紹介することで、話題性を作り、
お互いの知名度を高める、という「相乗効果」を狙った斬新な戦略が功を成したのだと思います。
「相乗効果」を狙うにあたって、くまモンは余計な「属性」が少ない、普遍的な外見をしていたので、
様々な企業や県とコラボが出来たのだとも書かれていました。
(「ご当地属性」などを盛り込み過ぎると、コラボしても違和感が生じやすい。)
そういう意味で、普遍的でキャッチ―なビジュアルをデザインした水野学さん、
そしてプロデューサーの小山薫堂さんの功績だと思います。

他にも、なるべくお金をかけないように、SNSを使った話題性にとんだPR活動や、
ある一定の条件を守ればマージンを受け取らないという「著作権フリー」、
そしてなにより、自らもPR活動に参加し、様々な企画にGOサインを出した熊本県知事、
様々な要素が重なって、くまモンが沢山の人から愛されるようになったのだと思いました。

著者がくまモン愛しすぎていて、いろんな夢や理想、アイディアを語っているのが、
面白かったです。けれども、熊本県庁チームくまモンの会議では、
そんな夢いっぱいの案も「いいんじゃない!?」と受け入れてもらえる場であった
というのも大きな要因だと思いました。

くまモンが広く知れ渡った今、チームくまモンは
「持続可能な仕組みづくり」という目標を含んだ「くまモンフェーズ2」
に突入している、と書かれており、くまモンの戦略はまだ続くのか!と思いました。
他にも、チームくまモンの同僚曰く、「くまモンと一緒に仕事をしてから意識が変わった」
公務員は、「こういう理由があるからできない。」ということが多かったけれども、
「くまモン」によって熊本の知名度を上げる、というゼロから一を作り出す仕事に関わるうちに、
「できないなら、どうすればできるようになるのか」と考えるようになり、
部署が移動になってからもその発想を続けることができている。と述べていて、
熊本を内側からも活性化する効果があったのだと言えます。
チームくまモンの人事異動が頻繁に行われた、と書かれていたのですが、
それもきっとその感覚を体感してもらったうえで、公務員業務をして欲しかったからではないかな?
という想像も広がりました。

「チームくまモン」こと、「くまもとブランド推進課」が、
雑誌『日経ビジネス』の「奇蹟を起こす すごい組織100」の一つに選ばれた、
というのも納得できるほど、クリエイティブで、アクティブな、公務員の方々の奮闘記でした。

2014年9月9日火曜日

113/200 『日本人はこれから何を買うのか?』三浦展(消費社会研究家)


読破っ!!
『日本人はこれから何を買うのか?「超おひとりさま社会」の消費と行動』 三浦展(消費社会研究家)
発行:20113年4月 光文社新書
難易度:★
資料収集度:★
理解度:★
個人的評価:★★
ページ数:203ペー


【本のテーマ】(表紙そでより抜粋)
2035年、「一人暮らし世帯」が1846万世帯となる。
逆に、かつて主流だった「夫婦と子供世帯」は1153万世帯に減る。
平均的だと思っていた日本の家族像がもはや過去のものになりつつあるのだ。
また、「一人暮らし」というと、未婚の若者といったイメージが強かったが、
今後20代、30代の一人暮らしは減り、代わりに高齢者のおひとりさまが急増する。
「超おひとりさま社会」になることを前提に、社会全体を見渡さなければならない。
個人化・孤立化が進む中、ライフスタイルはどう変わっていくのか。
モノを買わない時代、人々は何を求めているのか。キーワードは「シェア」と
「共費」。さまざまな地域や企業の取り組みを紹介しつつ、
日本社会のゆくえを予測する。

【目次】

第一章 老若男女すべて「おひとりさま」
第二章 おひとりさま消費の現状
第三章 おひとりさまは何が欲しいのか
第四章 コミュニティという商品を買う時代

【概要】
国立社会保障・人口問題研究所のデータを元に、今後高齢者の「おひとりさま」が増加し、
また「家族」という形態も変わってくる、ということを述べ、そこから予想される消費について述べていた。

近年の傾向として、消費の各項目ごとの昨年比の増加率データを元に、
シニア男性の「若者化」、シニア・ミドル女性の「アクティブ化」、ミドル男性の「おうち志向化」、
若年女性の「男性化」、若年男性の「主婦化」などについて述べ、
かつての年齢・性別による固定的な価値観や制約がより少なくなって来ていると述べていた。

おひとりさまの欲しいものとして、様々な具体例を挙げていた。
この本の中の「おひとりさま」の構成比として、高齢者が多い、という前提があった。
買い物難民(今は「買い物弱者」という言い方に変わったらしい)にならないためのサービス、
家事代行サービス、ルームシェアのサービス、リノベーション、
など、より生活に密着したサービスを求める傾向が以前に増して高まっている。

第四章では、「超おひとりさま社会」への対応として、
コンビニに地域のコミュニティ機能を持たせた「コムビニ」(community +convenience)という概念を
提唱していた。
ただ便利なだけではなく、そこに地域のコミュニティ機能を持たせ、
地域との繋がりを感じ、助け合う社会を作り出していくことが、
「おひとりさま」が孤立・孤独にならずに安心・安全に生きていくために必要である。

【感想】
将来の日本が心配になった!少子高齢化。そして、高齢者は「おひとりさま」になる。
そんな社会でどうやって「おひとりさま」を守っていくのか。
そんなテーマについて述べた本でした。

「コムビニ」という概念はとてもユニークで、未来的だと思いましたが、
やはり、三浦展さんの本は、以前も読んだ時にも思ったのですが、
若干、理想論である気がします。
コミュニティというのは、地域性だけで成り立たせるのはとても難しいと思います。
地域性とはすなわちその中に多様性が存在し、
子どももいれば、年寄りもいるし、いい人もいれば、犯罪者もいる。
目的の共有も共通点もなければ、地域性だけではコミュニティになじめない人もいる。
そんな人も含めて、一概に「こうすればこうなる。」とは言えないものだと思います。

けれども、今後の「超おひとり様社会」を考えると、
何かしらの地域によるサポートや繋がりの創造というものが
必要なのだろうな、とも、再認識させられました。
実際に今コンビニでは、高齢者の「おひとりさま」に向けた宅配サービスや、
移動販売を行っているし、コンビニが地域に貢献する役割を持ち始めています。
しかし、そこに「コミュニティ」や「人との繋がり」という機能を持たせる、
というところまでは、辿り着けていないように思います。
というのも、民間企業はお金を稼ぐことが目的だから、個々のサービスに限界があると思うので、
今後は官民一体となったサポートが必要となってくるのではないか、と考えました。

2014年9月3日水曜日

112/200 『趣味力』秋元康(プロデューサー)


読破!!
 『趣味力』秋元康(プロデューサー)
発行:2003年4月 生活人新書
難易度:★
感動度:★★
共感度:★★
個人的評価:★★
ページ数:200ペー

【本の紹介】(表紙そでより抜粋)
人生の後半で、ではなく、今、趣味を始めよう。一日十九時間、仕事に没頭する毎日を送ってきた秋元康が、四十代半ばになって趣味の陶芸に夢中になっている。今何故この年で趣味を始めたのか。同世代の読者に向けて、初めの一歩を強力に後押しする。人生の濃さを決める「趣味力」とは何か、著者は諄々と語り始めた。

【目次】
第一章 今日した仕事に「初めて」はあったか
第二章 男を強くするこだわりと偏り
第三章 僕は趣味のギャンブルから人生を学んだ
第四章 趣味探しとは自分の価値観探しである
第五章 趣味は人生だ


【要約】
一日は誰にも等しく24時間しかない。その時間をいかに濃密に過ごすか。その最大の鍵が「趣味力」である。年をとるに連れて「初めて」のことが少なってくる。そんな中でも、あえて「初めて」の中に積極的に飛び込んでゆき、そして、その「初めて」の中に達成したい「夢」を見ることができることが、人生を輝かせ、仕事や生活を豊かにする秘訣である。
 しかし、いざ「趣味を始める」となっても、世間の流行りや年相応な趣味に落ち着いても、長続きしないことが多い。食わず嫌いをせず、様々なことに挑戦し、その中で「これだ」と思うものに、とことんこだわる姿勢が大切である。例えるならば、いつも5分遅れで時を刻む腕時計と、ある時間をさしたまま止まっている腕時計。前者は永遠に正しい時間を示すことはないが、後者は一日に2回だけ正しい時間を示すことができる。そのように、自分なりの「こだわり」、や自分の色を持つことが、ある時、誰かからその存在を求められることにつながる。
 幸せとは「自己満足」の瞬間の連続である。人生には自分の思い通りに行かないことが多い
けれども、趣味の中では、その反動を補うことができる。
自分が満足できる瞬間を作り出す、という意味で、趣味は大きな意味を持っている。

【感想】
AKBのプロデューサー秋元さん。彼は人生を楽しんでいるなぁ。とつくづく思わせられる本でした。
人生が思うどおりにならない、そのストレスを補うための趣味、自己満足としての趣味。
自己満足、と自己完結はまた違っていて、自己満足を誰かと共有することができたなら。
それはとても幸せなことなのではないかと思いました。
誰にも認められなくても、こだわりをもった人たちが自分たちの色を感じられる瞬間。
その瞬間こそが、趣味の中でも最高の自己満足であり、幸せに直結するものだと思う。
もちろん、仕事や生活の中で認められることが幸せにつながるのも確かだと思うけれども、
現実はそんなに簡単にいかないから、
仕事や生活に支障を来さない限りで「趣味」でそのギャップを補うことは大切だと思う。

秋元さんが始めた陶芸も始めるまではそんなにはまると思っていなかった、と述べていた。
自分が何に出会うかなんて分からないから、
自分の未来が自分が思い描いていたものと違うことに面白みを感じられる人生観が
大切だ、というメッセージは、羽生棋士の「直感力」にも通じるところがありました。