『残業ゼロ」の仕事術』 吉越浩一郎(トリンプ元社長)
発行:2007年12月 日本能率協会マネジメントセンター
難易度:★★☆☆☆
資料収集度:★★☆☆☆
理解度:★★★★☆
個人的評価:★★★★☆
ページ数:205ページ
【本のテーマ】(表紙帯より抜粋)
「早朝会議」「完全ノー残業デー」「がんばるタイム」ユニークなしかけを次々繰り出し、
19期連続の増収増益を果たしたトリンプ元社長が明かす常識破りの働き方
「早朝会議」「完全ノー残業デー」「がんばるタイム」ユニークなしかけを次々繰り出し、
19期連続の増収増益を果たしたトリンプ元社長が明かす常識破りの働き方
【目次】
第一章 御社の残業がなくならない理由
第二章 問題はとにかく「分けて」考える
第三章 次に「会議」を変えていこう
第四章 「残業ゼロ」の達成まで
第五章 「速くて強い」チームの作り方
第六章 「仕事の常識」はこれだけ変わった
第七章 本当のワークライフバランス
【概要】
第一章 御社の残業がなくならない理由
日本では残業が無くならない。これまでの日本の成長と躍進を振り返っても、残業に起因するいわば「ルール違反」のもとでなされたことである。また人々の間でも「残業は悪い事である」という認識が少ない。そんな現状を改善するには、「デッドライン」を明確に定めることと、トップが強引にでも「ノー残業」をすすめることが重要である。
第二章 問題はとにかく「分けて」考える
業務上起こる問題に対しては、「緊急対策」と「再発防止」と「横展開」が基本である。その際には日本的「義理人情浪花節(GNN)」はあくまでロジックを支えるものとしてあるべきであって、GNNを重要視しすぎるのはよくない。問題はそのまますべてを把握するのではなく、「分けて」考えることが大切であり、分けてすぐに対策が必要なところからデッドラインを定めて手をつける。優先順位をいちいち考えるのは時間がかかるので、必要ない。キャパシティ=能力×時間×効率なので、時間を減らすことで効率を高めていくことができる。
第三章 次に「会議」を変えていこう
「早朝会議」を実施し、朝の時間を一時間ほど使って、40ほどの議題を片付けていた。この会議によって状況を共有し、解決すべき課題を明確化し、解決へのプロセスを共有化することができ、細分化された課題のデッドラインを定めることができ、その結果残業を減らすことに繋がった。
第四章 「残業ゼロ」の達成まで
早朝会議も残業ゼロも他の会社のシステムを参考にしたものであり、「TTP(徹底的にパクる)」姿勢が大切である。「ノー残業デー」を実施し始めた頃は、社内での反発が大きかった。「残業は正しい事である」という意識が強かったからである。しかし、諦めずに残業を取締り、どうしても残業しないといけない場合はなぜ残業しなければならなくなったのか、という「反省」を徹底させたり、更には罰金をとるようにしたり、徹底することにより、週一回だけだったのが週2日になり、最後には完全「ノー残業」を達成することができた。
著者が「ノー残業」を達成させたかった背景には、効率化を図ると同時に、仕事は人生の一部でしかなく、仕事後の夜の3時間を自分の人生のために投資してほしい。という思いがあったからである。
第五章 「速くて強い」チームの作り方
会社で行った様々な工夫と革新的な制度の取組について述べられていた。 リーダーは常に変化に向き合い変化を求め続け、会社にとって正しい事とは何かを考え続けることが必要である。リーダーシップを磨く前に、フォロワーシップを磨くことが大切である。フォロワーシップが磨けている人は、現場のことをよく理解しているため、リーダーシップも発揮しやすくなる。フォロワーシップとは、ただ従順になるのではなく、この指示にはどんな目的があるのか、なぜ今するのか、など、リーダーの気持ちを考えながら命令に従うことが大切である。
トップダウンの組織は早くて強いが、強いリーダーとワンマンは違う。ワンマンは下から集めた情報を独り占めしてしまうが、強いリーダーは情報をオープンにし、決定のプロセスに積極的に周りを関わらせていく。
第六章 「仕事の常識」はこれだけ変わった
日本人は出る杭は打たれるという発想が染みついており、野性味を失ってきてしまっている。
形式知と暗黙知の違いを理解し、暗黙知を先輩や周囲からTTP(徹底的にぱくる)により習得することが大切。仕事に対して自己実現や夢、または人生そのものと捉えることは良くない、逆に足枷になることもある。それよりも仕事はお金のためである、と割り切り、「何が会社にとって正しいか」という判断基準を持つことが大切である。
第七章 本当のワークライフバランス
ワークライフバランスとは、「仕事と人生のバランス」と捉えがちであるが、仕事とは人生の中の一部分にしかすぎないので、「仕事と仕事以外の生活のバランス」と捉える方が良い。定年退職後から余生(本生)が始まるので、それまでに夜の時間を使って、その人生のための準備をする必要がある。だから、残業はより好きない方が良い。
【感想】
「残業が悪である」という発想が意外でした。しかし、他の国で働いたことのある著者の体験談を読むと、確かに、日本の残業観は以上なのかもしれない。とも思いました。
著者が会社の社長として、「残業ゼロ」実現のために実施した制度と、それに至るまでの考え方は、合理的であり実践的であり、リーダー等関係なく、人生の教訓であると思いました。
物事を細かく細分化して把握し、それぞれにデッドラインを設けて確実に、効率よく処理していく。
そんな仕事のやり方が実現できれば、無駄が極力省かれるんだな。と理解しました。
そして、「残業ゼロ」にこだわる理由に、仕事は人生の一部でしかなく、退職後の人生をより豊かなものにしてほしい。という思いがある、という著者の人間性を尊敬しました。
また、形式知と暗黙知という表現もすごく深いと思いました。知識としてしっているだけではだめで、
暗黙知というものを現場から学び取って吸収していかないといけないと思いました。
まだ研修中ですが、これまでの自分の時間の使い方を見直し、夜の三時間を、仕事を含めた自分の人生のために使おうと思いました。